角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

トレンディでナウいアベックが怪奇事件を雰囲気で解決!-『怪奇博物館』

『怪奇博物館』 赤川次郎/1997年/365ページ 「狼男、ね…」私は、首を振った「変身したんですって?」「それは知らないけど…」と哲平は肩をすくめて、ベッドサイドテーブルの上のタバコに手を伸した。「ベッドの中じゃ喫わないって約束よ」「あ、ごめん―つい…

毒親、マザコン、仮面夫婦…。後味最悪、安らぎ亡き家族の肖像を描く短編集-『踊る少女』

『踊る少女』 吉村達也/1999年/358ページ 妻は化け物かもしれない。おれは怖い、怖くて家ではもう眠れない!中年男が真夜中に目撃した妻の恐るべき姿!―『踊る少女』モナリザなんて大嫌い!どうしてあの絵を見せようとするの!レオナルド・ダ・ヴィンチの名画…

別離、邂逅、決戦、和解…最終巻っぽい展開盛りだくさんのイベント巻-『華舞鬼町おばけ写真館 夜の語り部とふっくらカルメ焼き』

『華舞鬼町おばけ写真館 夜の語り部とふっくらカルメ焼き』 蒼月海里/2019年/208ページ 「虚路は、人から忘れられそうになったら姿を現す」なぜなら忘れられるとその概念が消えてしまうから、と狭間堂から説明を受ける那由多。一方、浮世と華舞鬼町では拍…

結婚式に招待した命の恩人は「無敵の人」と化していた…。最後までスリル満載の傑作サスペンス-『招待客』

『招待客』 新津きよみ/1999年/309ページ 高谷美由紀は、結婚を間近に控えた27歳。彼女には幼い頃、増水した川で溺れかかっていたところを通りすがりの男子高校生に助けられたという過去があった。その話を知った友人たちは、その「命の恩人」を結婚披露パ…

新人作家&ドS編集者の心霊取材。創作者の胸を打つ意外なほどの熱さに痺れる-『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』

『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』 木犀あこ/2017年/240ページ 霊の見える新人ホラー作家の熊野惣介は、怪奇小説雑誌『奇奇奇譚』の編集者・善知鳥とともに、新作のネタを探していた。心霊スポットを取材するなかで、姿はさまざまだが、同じ不…

シリーズ初? のガチホラー展開。生み出された怪談が人を襲う!-『華舞鬼町おばけ写真館 灯り無し蕎麦とさくさく最中』

『華舞鬼町おばけ写真館 灯り無し蕎麦とさくさく最中』 蒼月海里/2018年/208ページ 「地下鉄の終電で降りた駅の、改札を抜けた先にある蕎麦屋は江戸の怪談『本所七不思議』の“灯り無し蕎麦”だった」不気味な動画を偶然見てしまった那由多は狭間堂に報告す…

芸能界の闇を暴くのは、神の光と母の愛。なんだそりゃ???-『タスケテ…』

『タスケテ…』 島村洋子/2002年/189ページ 人気アイドル、橘リリカのスタンドイン(替え玉)として暮らす藤村しのぶ。彼女もまた、芸能界の頂点に立つことを夢見た少女だった。そんなしのぶの過去を知らないリリカは、無邪気に彼女の心を逆撫でしていく…。嫉…

不可解と理不尽に満ちた過去最恐レベルの怪スポット“首吊り廃墟”を追え!-『新耳袋殴り込み 最恐伝説』

『新耳袋殴り込み 最恐伝説』 ギンティ小林/2015年/208ページ 心霊スポット取材チーム・殴り込みGメンが帰って来た! 大阪・通天閣のほど近くにある「首吊り廃墟」にギンティ小林と殴り込みGメンが、全3回の突撃取材を敢行する! 取材の度に起きる怪奇…

悪行妖怪vs本所七不思議。過去からの成長も著しい第3巻-『華舞鬼町おばけ写真館 送り提灯とほっこり人形焼』

『華舞鬼町おばけ写真館 送り提灯とほっこり人形焼』 蒼月海里/2018年/208ページ 異形が跋扈する不思議な街、華舞鬼町。町の総元締め狭間堂はお盆の最終日、水路でやる灯籠流しの準備を進めていた。常世を目指す魂たちの道案内になれば、という気遣いだっ…

実話怪談のスタイルをいち早く成立させたホラーエッセイ。豪華漫画家ゲスト陣も!-『ゆうれい談』

『ゆうれい談』 山岸涼子/2023年/240ページ 全部、本当にあった怖くて摩訶不思議な話。 漫画家にとって最大の敵は睡魔。山岸プロでの眠気ざましの話題は“ゆうれい談”。萩尾望都、大島弓子など著名漫画家たちの不思議体験談を始め、アシスタントさんが経験…

昼間は女医、夜はSM嬢。不条理にもがく女の生きざまを描いた官能サスペンス-『甘い鞭』

『甘い鞭』 大石圭/2009年/448ページ 高校1年生の時に隣家に棲む男に拉致監禁された奈緒子。1か月にわたって弄ばれ続けた彼女は、男を殺害し辛うじて地獄から生還した。凄絶なトラウマを抱えたまま成長し、現在は不妊治療専門の医師として活躍する奈緒子だ…

東京の名所を巡り、レトロな風景に想いを馳せるほのぼのアヤカシ奇譚-『華舞鬼町おばけ写真館 路面電車ともちもち塩大福』

『華舞鬼町おばけ写真館 路面電車ともちもち塩大福』 蒼月海里/2017年/208ページ 大学生の那由多は、祖父の形見のカメラに導かれるように、人外が跋扈する別世界『華舞鬼町』に迷い込み、狭間堂と名乗る青年と出会う。祖父のカメラには不思議な力があった…

現実を侵食する怪談が、読み手を醒めない悪夢に誘う。珠玉の短編集-『今昔奇怪録』

『今昔奇怪録』 朱雀門出/2009年/221ページ 町会館の清掃中に本棚で見つけた『今昔奇怪録』という2冊の本。地域の怪異を集めた本のようだが、暇を持て余した私は何気なくそれを手に取り読んでしまう。その帰り、妙につるんとした、顔の殆どが黒目になって…

霊を怒らせて心霊映像を撮れ! 実録バチあたりルポシリーズ最高傑作-『新耳袋殴り込み 第三夜』

『新耳袋殴り込み 第三夜』 ギンティ小林/2014年/333ページ 凄まじいパワーを持つ霊が出現する東京・大田区の「幽霊ゲームセンター」、関東最恐の心霊ゾーン「Y霊園」、“出る”ので有名な「Oホテル」で百物語会を開催、関西でもっともヤバい「大阪I山トンネ…

過去を撮影するカメラで、東京に残る「人の想い」を写す。レトロで優しいアヤカシ譚-『華舞鬼町おばけ写真館 祖父のカメラとほかほかおにぎり』

『華舞鬼町おばけ写真館 祖父のカメラとほかほかおにぎり』 蒼月海里/2017年/240ページ 人見知りの激しい久遠寺那由多は大学をサボったある日、祖父の形見のインスタントカメラを、なんとカワウソに盗まれてしまう。仰天しつつビルの隙間へと追いかけるが…

探偵小説&冒険小説に乱歩流の耽美で猟奇な味付けがハマる傑作-『孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション⑦』

『孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション⑦』 江戸川乱歩/2009年/336ページ 初代は3歳で親に捨てられた。お守り代わりの古い系図帳だけが初代の身元の手がかりだ。そんな初代にひかれ蓑浦は婚約を決意するが、蓑浦の先輩で同性愛者の諸戸が初代に突然求婚…

愛が生む病、恋が育む未来。全編傑作揃いのオススメ巻-『ホーンテッド・キャンパス 恋する終末論者』

『ホーンテッド・キャンパス 恋する終末論者』 櫛木理宇/2014年/346ページ 大学祭間近の雪越大学。霊感系大学生の森司は、美少女こよみに焦れったい片想い中。しかしある日、飲み会で、高校の同級生、果那と再会する。ストーカーを撃退したいという彼女の…

歪んだ渇望が友情を裂く。一気読みの果てに待つのは唯一無二のほろ苦い幕切れ-『女友達』

『女友達』 新津きよみ/1996年/440ページ 29歳独身、一人暮らしで特定の恋人は無し。満たされぬ毎日を送っていた千鶴は、ふとしたきっかけから隣人・亮子と知り合った。同い年だが自分より容姿も収入も劣っている亮子との友情に、屈折した安らぎを見出す千…

語り手をも飲み込む“百物語”の怪異。劇中の怪談も愉しいホラーアンソロジー-『闇夜に怪を語れば』

『闇夜に怪を語れば 百物語ホラー傑作選』 東雅夫(編)/2005年/340ページ 月のない晩、一堂に会した人々が百筋の灯心に火をともし、怪異を語り合っては、一話ごとに灯心を一筋ずつ消してゆく。やがて百話満了した真闇のただなかで、必ずや怪しい出来事が起…

超カルトモキュメンタリーのノベライズ。補完として悪くないがラストは未視聴者置いてけぼり-『ノロイ 小林雅文の取材ノート』

『ノロイ 小林雅文の取材ノート』 林巧/2005年/211ページ 怪奇現象研究家の小林雅文が失踪した。彼はある村に伝わる、相手を呪い殺す儀式を追っていた。その呪いは現代にも息づいているという。本書は残された彼の取材ノートを元に書き起こした真実の恐怖…

統一感は無いもののクオリティは一定以上。短編欲は満たしてくれる一冊-『見知らぬ私』

『見知らぬ私』 綾辻行人、鎌田敏夫、鷺沢萠、篠田節子、清水義範、高橋克彦、松本侑子、森真沙子/1994年/230ページ 私は誰? まだ知らぬ私の扉が、ゆっくりと開かれていく…。人間にとってもっとも不思議な自分自身。その胸の奥底を揺さぶり、うち震わす、…

山の牧場、犬鳴峠、三本足のサリーちゃん…最恐都市伝説に体当たり取材!-『新耳袋殴り込み 第二夜』

『新耳袋殴り込み 第二夜』 ギンティ小林/2013年/341ページ 傑作実話怪談集『新耳袋』で語られた怪異の現場で霊を挑発、本当に“出る”か試してみようという恐るべき突撃ルポの第2弾。今回訪れるのは、火だるまになって殺された人の霊で有名な九州最恐スポッ…

呼べば死ぬ都市伝説「マチコさん」、ひとりでに歩く人形…。怪談の真相を霊能鑑識で暴け-『ゴースタイズ・ゲート 「世界ノ壊シ方」事件』

『ゴースタイズ・ゲート 「世界ノ壊シ方」事件』 中井拓志/2012年/312ページ 霊能少女・芙癸の脳機能データを鑑識に導入して捜査を行う、警察庁科警研心理三室。今回、心理三室の研究員・夕季が乗り出したのは、女子中学生が鏡を叩き割り、全身切り刻まれた…

目撃者を死に誘う霊、左腕が起こす殺人…。怪事件を霊能力と脳科学で解明!-『ゴースタイズ・ゲート 「イナイイナイの左腕」事件』

『ゴースタイズ・ゲート 「イナイイナイの左腕」事件』 中井拓志/2011年/318ページ 警察庁科警研心理三室。ここの目的は、霊能力者とその脳機能パターンを鑑識に導入すること。現場に煙たがられながらも今回、心理三室が投入されたのは、素手で頚部を抉ると…

日常に怪異を引き寄せてしまった女たち。オチは弱めだがそれなりに読ませる-『ジェラシー 恐怖を喚ぶ六人の女』

『ジェラシー 恐怖を喚ぶ六人の女』 鎌田敏夫/1994年/243ページ 友達との待ち合わせ、奈美はひとりバアで待っていた。他の客が皆、私を見ている。初めて入ったバアなのに…。孤独や不安が波に襲いかかる。恋人の心変わりに激した女の仕組んだ罠とは? 女心…

さりげない日常に恐怖をもたらす女たち。やや玉石混淆な短編集-『ルージュ 恐怖を運ぶ六人の女』

『ルージュ 恐怖を運ぶ六人の女』 鎌田敏夫/1993年/247ページ 季節はずれの別荘で、ひとり男を待つ女。何者かが彼女に忍び寄る。孤独、不安、男への疑い、人生への後悔。彼女を追いつめ、つき動かしたものは何か?拭い去る事のできない凌辱の記憶。抑えきれ…

恋する少女の執念+殺された女性の怨念が新婚生活に向けて狂気のエスカレート!-『婚約者』

『婚約者』 新津きよみ/1997年/535ページ 雪子の憧れの人は、八歳年上で大学生の従兄・賢一。大人になったら賢一と結婚したいと真剣に願っていた雪子だが、賢一は彼女の気持ちに気づかず、同い年の女性・由貴と親しくなっていく。このままでは由貴に賢一を…

序盤からモダンホラー展開フルスロットル。未解決部分をきっちり消化した理想的な続編-『魔女たちの長い眠り』

『魔女たちの長い眠り』 赤川次郎/1997年/293ページ 人間って、本当に馬鹿だわ。見当外れのことでわざわざ、私たちを駆り立てて…。人間が私たちに勝てるわけがないのに―。夜が降りてきた。暗がりが町を大きな翼で包みこむ。静かで平和に見える町の背後で起…

著者のホラー作品の中では随一の完成度。閉鎖的な町で起きる連続殺人の意外過ぎる真相-『魔女たちのたそがれ』

『魔女たちのたそがれ』 赤川次郎/1997年/305ページ 津田は小さな雑貨の卸売会社に勤める28歳の独身男性。今日は、15人の社員のうち5人が休みで、目のまわるような忙しさだ。奇妙な電話は、そのさなかに掛かってきた。「助けて…殺される」あの声は、幼なじ…

実話怪談の舞台となった最恐スポットを実録取材。おじさん達の悲鳴が闇夜に響く!-『新耳袋殴り込み 第一夜』

『新耳袋殴り込み 第一夜』 ギンティ小林/2013年/275ページ 実話怪談集の傑作『新耳袋』。そこで語られている話は真実なのか?謎の巨大施設がある「山の牧場」、自殺した女性の霊が出没する「幽霊マンション」、煙のように人が消える「天狗神社」など、絶対…