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悪行妖怪vs本所七不思議。過去からの成長も著しい第3巻-『華舞鬼町おばけ写真館 送り提灯とほっこり人形焼』

『華舞鬼町おばけ写真館 送り提灯とほっこり人形焼』

蒼月海里/2018年/208ページ

異形が跋扈する不思議な街、華舞鬼町。町の総元締め狭間堂はお盆の最終日、水路でやる灯籠流しの準備を進めていた。常世を目指す魂たちの道案内になれば、という気遣いだった。しかし、光に弱いアヤカシ達は、死者の魂を食らうのに邪魔な火を消そうとしていた。「では、灯りを増やそう」狭間堂は「本所七不思議」の一つ『送り提灯』の助けを借りるため那由多と、錦糸町の法恩寺に向かうが。大人気シリーズ第3弾!

(「BOOK」データベースより)

 

 第一話「那由多と利根川の友だち」では皿が干からびてしまった河童の弥々子のために護国寺近辺を流れる暗渠・水窪川を、第二話「那由多と狭間堂の師」では海座頭の朱詩とともにお台場のケガレを払うべく「砲台」の付喪神を探すことに。ほぼ妖怪版「ブラタモリ」。である。前シリーズのキャラもちょくちょく登場するが、知らなくても問題なく読めるレベル。第三話「那由多と送り火」ではお盆に常世へと渡る死者たちを喰らいつくそうという、珍しくガチの悪行を企むアヤカシたちが登場。火に弱い彼らに対抗するため、送り提灯の力を借りるべく那由多と狭間堂が奮闘する。

 狭間堂を知る人々の再登場に加え、そもそも彼がなぜ華舞鬼町で元締めをしているのかを改めて語る巻になっている。成長した前作主人公が今作主人公を引っ張る役割として登場、という王道パターンで良い。それにしても、前シリーズ『おばけ駄菓子屋』を読んでいて物語的に不自然に感じた箇所(アヤカシと一緒にいる時以外の主人公のプライベートが謎過ぎる、主人公に目的と呼べるものが長らく存在しない)が今作ではかなり早い段階で解決されており、作者の成長ぶりにも感心する。

★★★(3.0)

 

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