角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。

★★★★

  他の作品とは一味違う、類稀なる恐怖をもたらしてくれる秀作。

人の心を縛る呪いは怨霊よりも恐ろしい。「再読率100%」は伊達じゃない-『予言の島』

『予言の島』 澤村伊智/2021年/352ページ 初読はミステリ、二度目はホラー。この島の謎に、あなたもきっと囚われる。 瀬戸内海の霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が最後の予言を残した場所。二十年後《霊魂六つが冥府へ堕つる》という―…

伝説のオカルト廃墟スポット「山の牧場」後日談を含む、建物にまつわる実話怪談-『怪談狩り 禍々しい家』

『怪談狩り 禍々しい家』 中山市朗/2017年/256ページ 怪奇蒐集家・中山市朗が狩り集めた戦慄の建物怪談。人の気配がない角部屋から聞こえる妙に大きな生活音、引っ越し先で見つけた不気味なビデオテープ、誰もいない子ども部屋で突然鳴りだすおもちゃの音…

B級展開の端々からほとばしる凄み。異形への偏愛に満ちたパルプな短編集-『跫音』

『自選恐怖小説集 跫音』 山田風太郎/1995年/348ページ 推理・活劇・官能そして、恐怖……。現代エンターテインメント小説に多大な影響を与えた著者の自選恐怖小説集。運命共同体に身を委ねた人間の心理を描く『三十人の三時間』をはじめ、愛する男性の不可…

過去への想い、過去からの想いに縄縛される恐怖。傑作揃いの稀有なオリジナルアンソロジー-『かなわぬ想い―惨劇で祝う五つの記念日』

『かなわぬ想い―惨劇で祝う五つの記念日』 今邑彩、小池真理子、篠田節子、服部まゆみ、坂東眞砂子/1994年/292ページ 今邑 彩・小池真理子・篠田節子・服部まゆみ・坂東眞砂子あの日を境に、私の運命の歯車は、ずるずると狂い始めてしまった…!! 記念日をテ…

明らかに人が殺されている親戚の家で暮らす、シュールで悪夢な夏休み-『紗央里ちゃんの家』

『紗央里ちゃんの家』 矢部嵩/2008年/176ページ 叔母からの突然の電話で、祖母が風邪をこじらせて死んだと聞かされた。小学5年生の僕と父親を家に招き入れた叔母の腕は真っ赤に染まり、祖母のことも、急にいなくなったという従姉の紗央里ちゃんのことも、…

食用豚、ゾンビになりたい小学生、妹に自死された兄…。圧倒的なまでに深い孤独を描き切る短編集-『トンコ』

『トンコ』 雀野日名子/2008年/253ページ 高速道路で運搬トラックが横転し、一匹の豚、トンコが脱走した。先に運び出された兄弟たちの匂いに導かれてさまようが、なぜか会うことはできない。彼らとの楽しい思い出を胸に、トンコはさまよい続ける…。日本ホ…

怖ければ怪奇現象でなくてもOK、 ひたすら厭な話だけを集めた実話集-『忌談』

『忌談』 福澤徹三/2013年/192ページ 上の階に住む同僚の部屋からもれてくる奇妙な物音を聞いたソープ嬢(「水音」)。とんでもなく怖い映像を見てしまったビデオ店店員(「裏ビデオ」)。会う度に顔の変わるキャバクラ嬢(「変貌」)。必ず“出る”から絶対プレイ…

読み手の嗜虐欲と被虐欲を煽りまくる、他人にまったく勧められない甘美で凶悪な短編集-『姉飼』

『姉飼』 遠藤徹/2006年/172ページ さぞ、いい声で鳴くんだろうねぇ、君の姉は――。蚊吸豚による、村の繁栄を祝う脂祭りの夜。小学生の僕は縁日で、からだを串刺しにされ、伸び放題の髪と爪を振り回しながら凶暴にうめき叫ぶ「姉」を見る。どうにかして、「…

実話怪談が散りばめられたホラーミステリ連作。表紙にたがわぬ怖さだが、主人公コンビに時にはほっこり-『首ざぶとん』

『首ざぶとん』 朱雀門出/2010年/277ページ 華道教室に通うまりかの先生・嵯峨御流正教授である龍彦の趣味は、なんと怪談蒐集。最初は引き気味のまりかだったが、龍彦の優しげな雰囲気に惹かれ、怪談蒐集の手伝いをすることとなる。ある日まりかは、「おざ…

ひたひたと忍び寄る水怪の群れ。姿を見せない怪異がいちばん怖い-『仄暗い水の底から』

『仄暗い水の底から』 鈴木光司/2001年/242ページ 巨大都市の欲望を呑みつくす圧倒的な〈水たまり〉東京湾。ゴミ、汚物、夢、憎悪……あらゆる残骸が堆積する湾岸の〈埋立地〉。この不安定な領域に浮かんでは消えていく不可思議な出来事。実は皆が知っている…

ある時は家族の闇をえげつなく暴き、ある時はなんちゃって怪談で脱力させる。実話怪談集の忌み子シリーズ-『無惨百物語 みちづれ』

『無惨百物語 みちづれ』 黒木あるじ/2016年/273ページ “怪異”は、私たちの日常のかたわらに潜んでいる。携帯電話に登録されていた見知らぬ連絡先。不審死が連続するアパートの一室。浴槽の下に落ちていた古びた人形。神社に奉納されていた黒い絵馬。遊園…

絶望的な結末が救いに見えるほどに、悲惨極まりないトラウマ作品-『灰になる少年 ~ジョージ秋山恐怖劇場~』

『灰になる少年 ~ジョージ秋山恐怖劇場~』 ジョージ秋山/1997年/393ページ 「おまえが幸せに暮らせるのも、今のうちだぜ」――。潮少年は見知らぬ男に囁かれた言葉が耳から離れない。お手伝いさんの首なし殺人事件が恐怖へのプロローグなのか!? 潮少年に迫…

今さら感が無くも無いが、色褪せぬ名作ぞろい。人間椅子のオチは何度読んでもヒドい-『人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション①』

『人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション①』 江戸川乱歩/2008年/213ページ 貧しい椅子職人は、世にも醜い容貌のせいで、常に孤独だった。惨めな日々の中で思いつめた男は、納品前の大きな肘掛椅子の中に身を潜める。その椅子は、若く美しい夫人の住む立派…

忌まわしい過去が現在を苛む。急転直下の落ちが決まる、キレのいい短編ぞろい-『怪談歳時記 12か月の悪夢』

『怪談歳時記 12か月の悪夢』 福澤徹三/2011年/224ページ 初詣の夜に妻を見失った男。帰ってきた妻は、以前とはなにかがちがっていた。老人の語りが戦慄を呼ぶ「鬼がくる家」。女子大生の“あたし”は真夏の山中で、われにかえった。見知らぬ車に見おぼえの…

冒頭数作はとっつきにくいものの、 テーマの進化を年代順に追う構成が珠玉のアンソロジー-『フランケンシュタインの子供』

『フランケンシュタインの子供』 風間賢二・編/1995年/370ページ 名作「フランケンシュタイン」の後、人造人間をモチーフとした様々な形の小説が誕生した。死者を蘇らせること、人間を創造することにとり憑かれてしまった者の苦悩と狂気に満ちた運命の数々…

読み手をも惑わす混沌の迷宮。逃げ場など最初から無かった-『牛家』

『牛家』 岩城裕明/2014年/197ページ ゴミ屋敷にはなんでもあるんだよ。ゴミ屋敷なめんな―特殊清掃員の俺は、ある一軒家の清掃をすることに、期間は2日。しかし、ゴミで溢れる屋内では、いてはならないモノが出現したり、掃除したはずが一晩で元に戻ってい…

読者を昏い欲望で満腹にする、食人鬼の平穏でグルメな日常-『湘南人肉医』

『湘南人肉医』 大石圭/2003年/302ページ 湘南で整形外科医として働く小鳥田優児は、神の手と噂されるほどの名医だった。数々の難手術を成功させ、多くの女性を見違えるほどの美人に変貌させていた。しかし、彼は小さな頃から人肉に対して憧れを持っていた…

青春トレンディ小説の名手が送る、不穏が過ぎる陰キャミステリ-『屑籠一杯の剃刀』

『屑籠一杯の剃刀』 原田宗典/1999年/193ページ ……「恐怖」に至る一歩手前で感じられる「奇妙」という感覚を描いてみたかった。日常と非日常、あるいは現実と非現実との境界線上に、きわどく存在する奇妙な世界。それを物語ることはぼくにとって、習作の頃…

叙述テクニックとブラックユーモアで読ませる、技アリな短編集。性格悪くて最高!-『三丁目の地獄工場』

『三丁目の地獄工場』 岩城裕明/2016年/245ページ 「代わりましょうか?」仕事に疲れ果てていた私は、居酒屋で謎の男に声をかけられ、ヤケクソで「代われるもんならね」と応えてしまう。気がつくと本当に男と入れ替わり、毎朝“地獄”に出勤するはめに―「地獄…

国内・海外の主要作家&重要作品を網羅。読み応え抜群の必携書!-『ホラー・ガイドブック』

『ホラー・ガイドブック』 尾ノ上浩司・編/2003年/432ページ 『リング』『パラサイト・イヴ』といったベストセラーから国内外のマニアックな逸品まで完全網羅!瀬名秀明氏へのインタビュー、菊地秀行氏、井上雅彦氏、飯野文彦氏による“ホラー作家座談会”も…

知る人ぞ知る異色作家のオリジナル短編集。雑に世界が破滅するノーフューチャーな1冊-『夢魔の通り道』

『夢魔の通り道』 村田基/1997年/382ページ 「夢」と「現実」の隙間から這い出してくる虫。あらゆる生物が生きたまま腐敗する世界。たった一日で悟りを得られる宗教の流行。植物と交わる女。子供を教育することが許されない未来、突如おのれの寿命を悟って…

蠱惑の幻想作家が紡ぎ出す、耽美と恐怖の世界に酔う。匠の短編集-『夜叉の舌』

『夜叉の舌』 赤江瀑/1996年/323ページ 近江の町はずれで、黙々と刀剣の鞘づくりに打ち込む若き見習い職人・平河友威と、彼を見守り、その運命を導びき続ける一匹の赤い蜘蛛。両者の間に秘められた、妖しく摩訶不思議な出逢いとは。(表題作)夢幻、霊魂、死…

ミミズに「ありがとう」のメッセージ! 駄洒落とグロに満ちたタチの悪い短編集-『ミミズからの伝言』

『ミミズからの伝言』 田中啓文/2010年/293ページ 夫が健康食品用にミミズの養殖を始めたために、“ミミズっち”と揶揄され会社も解雇された倫子。その秘密をばらしたのは同僚の清美だった。ある日、清美に倫子からの携帯メールが届く。“近況報告でーす”とい…

歪みに歪んだ家族像の怖さ。いい意味で「スッキリしないもやもや感」の連続-『角の生えた帽子』

『角の生えた帽子』 宇佐美まこと/2020年/320ページ 何度も同じような悪夢を見る。それはさまざまな女をいたぶり殺すことでエクスタシーを覚えるという夢だ。ある日、その夢と同じ殺人事件が起こっていると知る。犯人として報じられたのは、自分と同じ顔を…

濃密な心理描写が怪異以上に怖い。怪奇に取り込まれた人々の放つ妖しい輝き-『るんびにの子供』

『るんびにの子供』 宇佐美まこと/2020年/256ページ 近づくのを禁止された池で、4人の園児たちは水から上がってくる少女を茫然と見つめていた。後にその女の子を園でも見かけるようになり…(「るんびにの子供」)。ヒモ生活を追い出され悪事の果て古家に辿り…