『バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達』
藤木稟/2015年/400ページ
熊本・天草において、真夏日に大雪が観測され、天空に忽然と巨大な十字架が浮かび上がった。時期を同じくして近隣の海で遭難した海洋冒険家は、こう語ったというー「美しい黒髪の天使に救われた」。平賀とロベルトは奇跡調査を開始するが、隠れキリシタンの信仰が色濃く残る天草の地には、さらに謎めいた怪異と暗号が伝えられていた。「さんしゃる二、こんたろす五」の文が示す天草四郎伝説の真実とは!?大人気シリーズ第9弾。
(「BOOK」データベースより)
若き海洋冒険家・ロビンソンは、ヨットでの航海中に台風に遭遇し、日本近海で遭難する。朦朧とした意識の中、彼は海上に浮かび上がるキリストの姿を見る。キリストに導かれるように無人島へと辿り着いたロビンソンは、長い黒髪の天使が救いの手を差し伸べるのを目の当たりにした…。その二日後、彼が漂着した無人島では、夏にもかかわらず雪が降り、巨大な十字架が空に浮かぶ“奇跡”が起きたと報告される。
日本の天草に派遣された平賀とロベルトは、地元イエズス会の神父たちの協力を得て、奇跡の調査を開始する。奇跡の現場である神島に残された、複数人分の足跡。天草に伝わるカリスマ的人物・天草四郎の逸話。滞在中のロビンソンが見たという、手だけの妖怪“油すまし”。隠れキリシタンの財宝の在り処を示すと伝えられる「さんしゃる二、こんたろす五」という謎めいた暗号。独自のキリスト教文化が根づいたこの地で、数々の興味深い事象に遭遇するふたり。そして平賀とロベルトの前に、芙頭四郎と名乗る少年が現れ、「神島には二度と近づくな」「油すましの噂を立てるな」と警告する。奇しくも天草四郎と同じ名を持つ彼は、この地に隠された“何か”を知っているようだった…。
シリーズでは初めてとなる、日本を舞台とした一作。日本では広く知られている天草四郎だが、彼は洗礼を受けておらず、正式にはキリスト教徒と認められていないため、海外での知名度はほとんどないらしい。キリスト教が迫害されたこの地で、信心深い神父たちは何を思い、何を見極めようとするのか。日本ならではの神事や妖怪譚、さらには凄惨な殺人事件まで絡み合う複雑なプロットはいつも通りだが、舞台が読者にとって身近であるぶん、他のシリーズ作よりスムーズに読み進めることができた。
いつもの黒幕然とした連中が不在のためか、今回の奇跡認定は比較的ポジティブな結末を迎える。「原罪無き使徒達」というサブタイトルが見事に腑に落ちる幕引きも印象的だ。敬虔な神父でありながら、あまりに柔軟な考えの持ち主である主人公コンビが心配になってしまうほど。それにしても今巻の表紙、いろんな意匠の散りばめられかたがスゲエ良いですね。
★★★★(4.0)

