角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

★★★★

受け継がれる意志と断ち切られる呪い。最終巻にふさわしいグランドフィナーレ-『BURN 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『BURN 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(上)』 内藤了/2019年/336ページ 数々の殺人の果てにテロをたくらむ組織「CBET」が狙っているのは、センターにかくまわれている天才的プロファイラー・中島保の技術。それ以外にも、彼らの求めるものがセンターに揃って…

底辺主人公が陥る巧妙な罠。夢も希望も鎖で縛り付ける胸糞サスペンス-『汚れた檻』

『汚れた檻』 高田侑/2011年/331ページ 小さなプレス工場での単調な作業と上司の嫌がらせに鬱屈していた29歳の一郎は、偶然再会した友人・牛木の会社で、高級犬の販売を手伝うことに。だがやくざのような牛木の父、我が物顔で家にあがりこむ作業員たち―怪…

家庭の隙間に入り込み、崩壊に導く魔少年の正体は? 至高のホラーミステリ連作集-『瑕死物件 209号室のアオイ』

『瑕死物件 209号室のアオイ』 櫛木理宇/2018年/320ページ 誰もが羨む、川沿いの瀟洒なマンション。専業主婦の菜緒は、育児に無関心な夫と、手のかかる息子に疲弊する日々。しかし209号室に住む葵という少年が一家に「寄生」し、日常は歪み始める。キャリ…

常世をも凌駕するホラークリエイターの意地と矜持を見よ!-『奇奇奇譚編集部 幽霊取材は命がけ』

『奇奇奇譚編集部 幽霊取材は命がけ』 木犀あこ/2018年/228ページ 霊が見えるホラー作家の熊野惣介は、怪奇小説雑誌『奇奇奇譚』での連載を目指して、担当編集者の善知烏とネタ探しを続けていた。フィクションの存在のはずの怪人、さびれた大観音像の内部…

刑事と検死官、仕事に誇り持つ2人が夫婦として暮らした数カ月。必読のスピンオフ-『サークル 猟奇犯罪捜査官・厚田巌夫』

『サークル 猟奇犯罪捜査官・厚田巌夫』 内藤了/2018年/256ページ ある事件を経て新婚生活をスタートさせた厚田巌夫と石上妙子。警察官一家惨殺事件が発生、二人は駆け出し刑事と新鋭検死官というそれぞれの立場から事件に向き合うことになった。妙子のお…

毒親、マザコン、仮面夫婦…。後味最悪、安らぎ亡き家族の肖像を描く短編集-『踊る少女』

『踊る少女』 吉村達也/1999年/358ページ 妻は化け物かもしれない。おれは怖い、怖くて家ではもう眠れない!中年男が真夜中に目撃した妻の恐るべき姿!―『踊る少女』モナリザなんて大嫌い!どうしてあの絵を見せようとするの!レオナルド・ダ・ヴィンチの名画…

結婚式に招待した命の恩人は「無敵の人」と化していた…。最後までスリル満載の傑作サスペンス-『招待客』

『招待客』 新津きよみ/1999年/309ページ 高谷美由紀は、結婚を間近に控えた27歳。彼女には幼い頃、増水した川で溺れかかっていたところを通りすがりの男子高校生に助けられたという過去があった。その話を知った友人たちは、その「命の恩人」を結婚披露パ…

新人作家&ドS編集者の心霊取材。創作者の胸を打つ意外なほどの熱さに痺れる-『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』

『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』 木犀あこ/2017年/240ページ 霊の見える新人ホラー作家の熊野惣介は、怪奇小説雑誌『奇奇奇譚』の編集者・善知鳥とともに、新作のネタを探していた。心霊スポットを取材するなかで、姿はさまざまだが、同じ不…

現実を侵食する怪談が、読み手を醒めない悪夢に誘う。珠玉の短編集-『今昔奇怪録』

『今昔奇怪録』 朱雀門出/2009年/221ページ 町会館の清掃中に本棚で見つけた『今昔奇怪録』という2冊の本。地域の怪異を集めた本のようだが、暇を持て余した私は何気なくそれを手に取り読んでしまう。その帰り、妙につるんとした、顔の殆どが黒目になって…

霊を怒らせて心霊映像を撮れ! 実録バチあたりルポシリーズ最高傑作-『新耳袋殴り込み 第三夜』

『新耳袋殴り込み 第三夜』 ギンティ小林/2014年/333ページ 凄まじいパワーを持つ霊が出現する東京・大田区の「幽霊ゲームセンター」、関東最恐の心霊ゾーン「Y霊園」、“出る”ので有名な「Oホテル」で百物語会を開催、関西でもっともヤバい「大阪I山トンネ…

愛が生む病、恋が育む未来。全編傑作揃いのオススメ巻-『ホーンテッド・キャンパス 恋する終末論者』

『ホーンテッド・キャンパス 恋する終末論者』 櫛木理宇/2014年/346ページ 大学祭間近の雪越大学。霊感系大学生の森司は、美少女こよみに焦れったい片想い中。しかしある日、飲み会で、高校の同級生、果那と再会する。ストーカーを撃退したいという彼女の…

恋する少女の執念+殺された女性の怨念が新婚生活に向けて狂気のエスカレート!-『婚約者』

『婚約者』 新津きよみ/1997年/535ページ 雪子の憧れの人は、八歳年上で大学生の従兄・賢一。大人になったら賢一と結婚したいと真剣に願っていた雪子だが、賢一は彼女の気持ちに気づかず、同い年の女性・由貴と親しくなっていく。このままでは由貴に賢一を…

ホテルで続発する怪異は、天才女優が遺した戯曲の再現か…? 一気読み必至の傑作-『遺品』

『遺品』 若竹七海/1999年/368ページ 失業中の学芸員のわたしに、金沢のホテルの仕事が舞い込んだ。伝説的女優にして作家の曾根繭子が最後の時を過ごし、自殺した場所。彼女のパトロンだったホテルの創業者は、繭子にまつわる膨大なコレクションを遺してい…

愛に狂わされつつも、純愛を貫き通した人々が辿る奇妙な運命-『愛の怪談』

『愛の怪談 現代ホラー傑作選第7集』 高橋克彦(編)/1999年/273ページ 歪んだ愛がこの世に産み落とした恐怖――。怪奇と幻想に潜む人間の“愛”に光を当てた異色のホラー傑作選。三橋一夫「駒形通り」香山滋「木乃伊の恋」城昌幸「道化役」梶尾真治「玲子の箱宇宙」澁澤…

無自覚な悪意の厭らしさを突き付ける漆黒短編集。これは怖い-『夢に抱かれて見る闇は』

『夢に抱かれて見る闇は』 岡部えつ/2018年/272ページ 男を初めて部屋に上げるときは、かなりの勇気がいる。もしこの男に、見えてしまったら。もうすぐ40歳の真千子の部屋には、かつての恋人の骸骨が立っている。暗闇の中、知り合ったばかりの男の愛撫に感…

怪奇や恐怖ではなく“奇妙”な味の短編を揃えた名アンソロジー。文豪たちの意外な作品も-『奇妙な味の菜館』

『奇妙な味の菜館 現代ホラー傑作選第6集』 阿刀田高(編)/1996年/395ページ こってりとした奇妙な味わい。逸品揃いの恐怖のメニューを、とくとご賞味あれ。収録作品志賀直哉「剃刀」芥川龍之介「さまよえる猶太人」横溝正史「あかずの間」結城昌治「惨事」中島敦「…

幽霊との結婚披露宴で行われる、最後にして最大の詐欺の行く末は?-『幽霊詐欺師ミチヲ3 時計仕掛けのファンタスマゴリア』

『幽霊詐欺師ミチヲ3 時計仕掛けのファンタスマゴリア』 黒史郎/2012年/346ページ サカキとのゲームに大勝利を収めてしまったミチヲの背中に、めでたく戻ってきたマミコ。その愛情アピールは激しさを増し、今や披露宴を夢見る乙女となっていた。そんな中、…

あまりに鮮烈なラストと、乱歩得意の一人二役トリックを堪能できる2編を収録-『パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション⑥』

『パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション⑥』 江戸川乱歩/2009年/219ページ 売れないもの書きの廣介は、極貧生活ながら、独特の理想郷を夢想し続けていた。彼はある日、学生時代の同窓生で自分と容姿が酷似していた大富豪・菰田が病死したことを知り…

あくまで実在の忍術を駆使する忍び達vs反則能力持ち妖怪軍団の死闘-『忍びの森』

『忍びの森』 武内涼/2011年/486ページ 時は戦国。織田の軍に妻子を殺された若き上忍・影正は、信長への復讐を誓い紀州をめざす。付き従うは右腕の朽麿呂、くノ一の詩音ら、一騎当千の七人。だが山中の荒れ寺に辿りついた彼らを異変が襲う。寺の空間が不自…

海辺の別荘で合宿、ヒロインの実家でご挨拶、そして群れ成す怪異。イベント満載のひと夏-『ホーンテッド・キャンパス 死者の花嫁』

『ホーンテッド・キャンパス 死者の花嫁』 櫛木理宇/2013年/352ページ 大学生が一番ときめく季節、夏。雪越大学オカルト研究会では、夏合宿をすることに!幽霊が視える草食男子大学生・森司も、片想いの美少女こよみとのお泊まりを夢見て、試験勉強に励む日…

“ひとぶた”の身体を持つ少女、吸血鬼退治に没頭する少年、読者を芸術へと導く本…。揺らぎが狂気を生む3つの中短編-『人獣細工』

『人獣細工(にんじゅうざいく)』 小林泰三/1999年(復刊:2023年)/256ページ パッチワークガール。そう。私は継ぎはぎ娘。 先天性の病気が理由で、生後まもなくからブタの臓器を全身に移植され続けてきた少女・夕霞。専門医であった父の死をきっかけに、彼女…

“犬”を縛り付ける虐待の連鎖。キャラノベルに見せかけて相当にトリッキーなミステリ-『虜囚の犬 元家裁調査官・白石洛』

『虜囚の犬 元家裁調査官・白石洛』 櫛木理宇/2023年/400ページ 残酷でおぞましい事件に隠された真実とは。衝撃的結末に、撃ちぬかれる。 穏やかな日常を送る、元家裁調査官の白石洛(しらいし らく)は、友人で刑事の和井田(わいだ)から、ある事件の相談を…

恋のライバルがいいヤツ過ぎて困惑する主人公。ミステリとしても恋愛物としても安定の好シリーズ-『ホーンテッド・キャンパス 桜の宵の満開の下』

『ホーンテッド・キャンパス 桜の宵の満開の下』 櫛木理宇/2013年/344ページ 幽霊が視えてしまう体質の大学生、八神森司。その能力を生かし(?)、オカルト研究会で、美少女こよみに密かに片想い中。しかしオカ研には、恐怖の依頼が続々と、凍死寸前の男が訴…

連続少女殺人犯“芸術家”を追い詰める、検死官&法医昆虫学者!-『パンドラ 猟奇犯罪検死官・石上妙子』

『パンドラ 猟奇犯罪検死官石上妙子』 内藤了/2017年/336ページ 検死を行う法医学部の大学院生・石上妙子。自殺とされた少女の遺書の一部が不思議なところから発見された。妙子は違和感を持つなか、10代の少女の連続失踪事件のことを、新聞と週刊誌の記事…

SF、伝奇、サスペンス、時代物、中国史…幅広いスタイルで恐怖を描く佳品ぞろい-『したたるものにつけられて』

『したたるものにつけられて 自選恐怖小説集』 小林恭二/2001年/237ページ ふとした出会いから日常が歪み、狂いゆく過程を静かに追う表題作「したたるものにつけられて」。ほか、伝説の女形・沢村田之助の鬼気迫る恋物語「田之助の恋」、世界の終末を描くS…

謎が謎を呼ぶ寒村の因習。土着的なテーマを意外性たっぷりのミステリとして捌く好短編集-『私の骨』

『私の骨』 高橋克彦/1997年/287ページ 実家の床下から偶然見つかった古びた壷。中には朽ち果てた人骨が詰まっていた。そして、その壷には何故か私の生年月日が記されていた。それでは…自分は、いったい誰なんだ。三十数年前の自身の揺るがざる死亡証拠を…

怪談同士の有機的な絡み合いが読み応えを増す、実話怪談集として究極に近い1冊-『拝み屋怪談 禁忌を書く』

『拝み屋怪談 禁忌を書く』 郷内心瞳/2016年/293ページ 最期まで優しい母として逝った依頼主、忌まわしき白無垢姿の花嫁、昵懇の間柄だったひと、心に怪物を抱えた女――。四人の女性の存在と彼女たちとの顛末を中心に、現役の拝み屋が体験・見聞した最新怪…

無数の実話怪談で綴られる作者の半生。拝み屋を志すきっかけに度肝を抜かれる-『拝み屋怪談 逆さ稲荷』

『拝み屋怪談 逆さ稲荷』 郷内心瞳/2015年/272ページ 如何にして著者は拝み屋と成り得たのか―。入院中に探検した夜の病院で遭遇した“ノブコちゃん”。曾祖母が仏壇を拝まない理由。著者の家族が次々に出くわす白い着物の女の正体とは。霊を霊と認識していな…

特殊能力を持った犯罪者たちが目ん玉ギラギラ出走です! 大荒れレースの結末は…-『人間競馬 悪魔のギャンブル』

『人間競馬 悪魔のギャンブル』 山田正紀/2010年/254ページ 新宿副都心。ビルとビルの隙間にわずかな時間立ち現れる古い城郭。空の高みで人間競馬に興じるガーゴイルたち。下界では、三人の男と一人の女がパドックを周回する競走馬さながらに互いを尾行し…

“ホラーコメディ”ではなくあくまで“コメディホラー”。幅広い芸風に唸るデビュー作-『お葬式』

『お葬式』 瀬川ことび/1999年/197ページ 授業中に突然鳴り出したポケベルの電子音。あわてて見た液晶画面に表示されたメッセージは『チチキトク』。病院で、豪華なカタログをかかえてやってきた葬儀社を丁重に追い返して母は言った。「うちには先祖伝来の…