角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。読んだ上で、おすすめしたい作品は全力で推します。

★★★

  読んで損なし、読書時間に見合っただけの満足感をもたらしてくれる良作。

村に恵みもたらす因習のおぞましき真相。田舎ホラー・土着ミステリの金字塔-『悪魔の収穫祭』

『悪魔の収穫祭(上)』 トマス・トライオン/1993年/308ページ ネッドは家族とともにコーンウォール・クームの村に移り住んだ。陽光と土の香り、昔ながらの方法でトウモロコシを育てる農民たち。そこはまさにネッドの考える理想郷だった。ただ1つ気になる…

映画のスリリングさを再現しつつちょっと違った展開も楽しめる、理想的なノベライズ-『バイオハザード』

『バイオハザード』 牧野修(箸)、ポール・W・S・アンダーソン(脚本)/2002年/275ページ 巨大企業アンブレラ・コーポレーションが地中深くに作り上げた秘密の研究所“蜂の巣”で、開発中のウイルスが漏洩する事件が発生。鳴り響く非常警報、遮断される通路…

嘘をつかずにはいられない、業の深い人が続々登場!稀代のホラ吹き博覧会-『現代百物語 嘘実』

『現代百物語 嘘実(きょじつ)』 岩井志麻子/2010年/209ページ さらりと驚くような都市伝説を語る女。芸能界との繋がりを自慢する主婦。人を殺しかけた体験を語る男。雑誌に殺人事件をタレこむ女。凄絶な不良少女と友達だと吹聴するお嬢様。過去をなかった…

新居のお悩み解決が、日本軍と聖遺物を巻き込む壮大な風水バトルに発展!-『ワタシnoイエ』

『シム・フースイ Version1.0 ワタシnoイエ 』 荒俣宏/1993年/465ページ 新しい家にカビが異常に繁殖する。妻がノイローゼになり困り果てた小林正彦は、半信半疑で風水師・黒田龍人の事務所の扉を叩いた。風水師は土地や建物を看て吉凶を判断し、適切な処…

冒涜的死体損壊オブジェを作成する「ZERO」の正体は…次巻へ続く!-『ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』 内藤了/2016年/249ページ 新人刑事・藤堂比奈子が里帰り中の長野で幼児の部分遺体が発見される。都内でも同様の事件が起き、関連を調べる比奈子ら「猟奇犯罪捜査班」。複数の幼児の遺体がバラバラにされ、動物の死骸…

ストーカーがあまりに異常すぎて、怖がるより先に笑ってしまう暴走スリラー-『初恋』

『初恋』 吉村達也/1993年/279ページ 浮気相手の女性につきまとわれたら、『危険な情事』の代償とあきらめもするが、三宅の場合は違っていた。職場結婚をし、平凡なサラリーマン生活を送っていた三宅の前に、ある日突然、中学校時代の同級生だった女性が現…

安定の面白さだが、目玉である“黒いバス”はもはや実話怪談ではないのでは?-『怪談狩り 黒いバス』

『怪談狩り 黒いバス』 中山市郎/2021年/272ページ ある日突如現れる、黒いバスのような乗り物は、生者と死者の恨みを乗せて走る――今なお継続する怪異に震えが止まらない「黒いバス」他。本書収録作をまとめて読むことで恐怖が増す、本当に怖い怪談実話集…

これぞ典型的モダンホラー。夫をサタニストに乗っ取られた妻の絶望的な戦い-『悪魔のワルツ』

『悪魔のワルツ』 フレッド・M・スチュワート/1993年/337ページ 世界的な名ピアニスト、ダンカン・エリー。彼の弾くリストの名曲「悪魔のワルツ」は聴く者をとらえて離さなかった。ダンカンは偶然知り合ったマイルズを自分の息子のように溺愛し、彼に莫大…

家そのもの、または家族(家に棲む者)が怪異の元凶だったら…? グロ風味強めのパルプ短編集-『家に棲むもの』

『家に棲むもの』 小林泰三/2003年/251ページ ボロボロで継ぎ接ぎで作られた古い家。姑との同居のため、一家三人はこの古い家に引っ越してきた。みんなで四人のはずなのに、もう一人いる感じがする。見知らぬお婆さんの影がよぎる。あらぬ方向から物音が聞…

村上龍のカラーがよく出たセレクト。ホラーの印象薄めな作家陣だがクオリティは高い-『魔法の水』

『魔法の水 現代ホラー傑作選第2集』 村上龍(編)/1993年/250ページ 現在を呼吸する九人の作家によって切り拓かれる、魅力的で怖ろしい九つの物語。 収録作品 村上春樹「鏡」 山田詠美「桔梗」 連城三紀彦「ひと夏の肌」 椎名誠「箱の中」 原田宗典「飢え…

民間伝承メインゆえほのぼのさすら漂うが、後半につれ恐怖度がヒートアップ-『怪談狩り あの子はだあれ?』

『怪談狩り あの子はだあれ?』 中山市郎/2019年/272ページ 生駒山の池で家族が遭遇した怪異が、時を超えて繰り返される「拉致された?」、高層マンションの窓に張り付き、ニタッと笑っては落ちていく男が不気味な「二十二階の男」、祖父母の家で少女が出会…

やや古典的な怪談が目立つアンソロジー。遠野(とおの)物語のダジャレ…ってコト!?-『十の物語』

『十(とお)の物語 現代ホラー傑作選第3集』 高橋克彦(編)/1993年/281ページ 現代怪奇小説の第一人者が、独自の恐怖観を持って選び出した本当に怖い話。 収録作品 山田風太郎「人間華」 山村正夫「魔性の猫」 三橋一夫「角姫」 夢野久作「卵」 岡本綺堂「…

未練残す死者のメッセージ、意外と温かく恨み節は少なめ、かと思いきや…-『怪談狩り 黄泉からのメッセージ』

『怪談狩り 黄泉からのメッセージ』 中山市朗/2018年/256ページ あの世からのメッセージは、さまざまな形でこの世に出現し、私たちに語りかけてくる――。親族に不幸があるたびに夢枕に現れる生首、幼い子どもをひき逃げした犯人を探し求める刑事が見つけた…

たった一人の老人の「おそれ」が、町を静かに蝕んでいく。シリーズを綺麗に〆る伝奇ホラー-『おそれ』

『おそれ』 倉阪鬼一郎/2011年/423ページ 万全のセキュリティと美しい景観を備えた四季風ニュータウン。女性チェロ奏者キム・イェニョンはリサイタル中、頭部のないヘビのイメージに襲われ、この町に隠された秘密を直感する。ニュータウンを開発した企業グ…

コメカミ部分をずきずきと苛む、解釈不能の実話怪談集。ラスト1作は反則では!?-『顳顬草紙 歪み』

『顳顬草紙 歪み』 平山夢明/2015年/240ページ ある時、夜中に高野は、半睡半覚で気がつくと腕が伸びていた。腕は壁を抜けて自宅の外まで達し、なにかを掴んだ「腕の魂」。勉強に集中できなくなる度に決まって現れる、自分の姿によく似た幻影「ベンキョー…

実話怪談の新境地? 霊なのかどうかもよくわからない、解釈不能の理不尽な恐怖譚-『顳顬草紙 串刺し』

『顳顬草紙 串刺し』 平山夢明/2014年/304ページ 濃霧の湖の中、兄妹が乗るボートに近づく水音と、湖面から這い上がろうとする手「霧嫌い」。事故で視力を失った鍼灸師が見た、人形の影。その後部屋に立ち篭める異臭の正体とは「蛍火」。八百屋の軒先につ…

老い、復讐、アイデンティティ喪失…日常に寄り添う恐怖を奇想と共に描く-『黄昏の悪夢』

『黄昏の悪夢 自選恐怖小説集』 清水義範/1993年/271ページ なにげない日常生活の中で知らぬまに忍び寄る黒い影。それは〈恐怖〉というものにかわり、人々の心に巣喰っていく…。人生の終着駅にみた恐怖を描く表題作のほか、七編。著者自ら、選びぬいた最高…

人の身体を操る、謎の存在が起こす猟奇殺人。悪霊か催眠術か宇宙生物か、その正体は…-『傀儡の糸』

『傀儡の糸』 亜木冬彦/1993年/226ページ 深夜のオフィス街で、突如発生した連続猟奇殺人事件。内臓を全て引き出された死体は、どれも無残を極めていた。そして奇妙なことに、どの死体も指の一本が現場に見あたらない。一体誰が、何の目的で…。気鋭の新人…

日本を憎悪する外国人労働者を、八百万の神の力でバッタバッタとなぎ倒す。シリーズ随一の問題作-『さかさ』

『さかさ』 倉阪鬼一郎/2010年/335ページ 世にはびこる悪しきものを封印するため全国を歩いていた聖域修復師の八神宇鏡は、不穏な兆しを感じて江の島にやってきた。時を同じくして、都内各地のコインロッカーや鉄橋の下で頭部がさかさになった人形が発見さ…

女性を地下室で拉致・監禁・凌辱するコレクターの日常。ああっ…-『飼育する男』

『飼育する男』 大石圭/2006年/320ページ 昔、昔…。春のある午後、少年は森の中で、日にさらされて色褪せた雑誌が落ちているのを見つけた。何げなくページを開いた瞬間、若い女性の全裸写真が視界に飛び込んで来て、思わず息を飲んだ。少年はまだ7歳か8歳…

不穏な理由でお蔵入りになった番組を追うフェイクドキュメンタリー。テレビ版の補完としても秀逸-『放送禁止』

『放送禁止』 長江俊和/2016年/200ページ 事実を積み重ねることが、必ずしも真実に結びつくとは限らない。何らかの理由で放送を見送られ、テープ倉庫の片隅に眠り続ける“お蔵入り”テープ。そこには、永遠に伝えることのできない、もう一つの“真実”が隠され…

怪談を語る者としての矜持が垣間見える、エッセイとしても上質な1冊-『船玉さま 怪談を書く怪談』

『船玉さま 怪談を書く怪談』 加門七海/2022年/288ページ 海が怖い。海は死に近いからーー。山では、「この先に行ったら、私は死ぬ」というような直感で足がすくんだこともある。海は、実際恐ろしい目にあったことがないのだけれど、怖い。ある日、友人が…

自殺志願者を救うネットのカリスマの正体を暴け! 安定のシリーズ第3作-『AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』 内藤了/2015年/383ページ 都内の霊園で、腐乱自殺死体が爆発するという事件が起こる。ネットにアップされていた死体の動画には、なぜか「周期ゼミ」というタイトルが付けられていた。それを皮切りに続々と発生する異常…

ファンタジーに近いほのぼの怪奇譚だが、時おり仄暗いものを覗かせる。「戦慄の湯けむり旅情」って何だよ!-『厄落とし』

『厄落とし』 瀬川ことび/2000年/179ページ その夜、年明けの挨拶回りにつきあわされ、くたびれ果てて帰宅した恭子を待っていたのは、高校時代のクラスメイト、恵からの電話だった。「お正月早々に墓掘りすることになったんよ」―。表題作「厄落とし」をは…

平均点の高い実話怪談集だが、コンセプト的に恐怖度は薄れがちか-『全国怪談 オトリヨセ 恐怖大物産展』

『全国怪談 オトリヨセ 恐怖大物産展』 黒木あるじ/2015年/240ページ 怪談とは、その土地が持つ記憶の断片なのかもしれない―。北海道のトンネル内で友人が叫んだ言葉の意味。福井県沿岸に浮かぶ島の神社へ不埒な目的で立ち入ったカップルの末路。滋賀県の…

各都道府県のご当地怪談、47編お取り寄せ。怖さとご当地性は玉石混交ながら充実の1冊-『全国怪談 オトリヨセ』

『全国怪談 オトリヨセ』 黒木あるじ/2014年/219ページ 北は北海道から、南は沖縄まで。日本全国の都道府県から蒐集した47のご当地怪談実話を収録。岩手の民宿、宮城の港町、群馬の史跡、山梨の樹海、愛知の橋、福井の沖合、滋賀の湖、京都のトンネル、鳥…

食べ物の恨みは恐ろしいというアレ。軽めながらもスパイスの利いた“食”にまつわるホラー8品-『意地悪な食卓』

『意地悪な食卓』 新津きよみ/2013年/240ページ 老人福祉施設のデイサービスセンターに勤める純子は偶然、一生忘れようとしても忘れられない女性の担当になった。かつて、純子が小学生の頃、食べきれない給食を無理やり食べさせようとした女の―(『給食』)…

ひだりをタブー視する町の血塗られた歴史。町がクソ過ぎるせいで大惨事に思わず喝采!-『ひだり』

『ひだり』 倉阪鬼一郎/2009年/313ページ 比陀理神社では、巫女のアルバイトをしていた短大生が怪死し、ジョギング中の男が突然死する事件が相次いだ。この神社には、「鳥居は必ず右足からまたぐべし」という掟があったのだ。比陀理中学に転校してきた言美…

ガスマスク姿の硫酸かけかけマン登場! 勢い任せの都市伝説ホラー-『えじきしょんを呼んではいけない』

『えじきしょんを呼んではいけない』 最東対地/2018年/288ページ 「アレを最初に呼ぼうと言い出したのは―」バイト仲間とある島に旅行に行った住谷秋乃は、フリーライターの京本陽介に旅先での恐怖体験を語り始めた。“えじきしょん”―島の住人がそう呼ぶ、人…

死者との交霊という正統派テーマ。読ませる力作だが恐怖・絶望感は薄め‐『ゴーストシステム』/『禁忌装置』

『ゴーストシステム』 長江俊和/2002年/349ページ クラスでいじめられていた女子高校生・津田楓に、毎日繰り返し、アドレスを変えても送られてくる携帯電話のメール。そのメールとは受け取った人が自殺していくという噂のメールだった。そして同級生の希美…