角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

★★★

  読んで損なし、読書時間に見合っただけの満足感をもたらしてくれる良作。

「忘れたい痛み」と「忘れられた痛み」がすれ違うノスタルジックホラー-『記憶屋』

『記憶屋』 織守きょうや/2015年/304ページ 大学生の遼一は、想いを寄せる先輩・杏子の夜道恐怖症を一緒に治そうとしていた。だが杏子は、忘れたい記憶を消してくれるという都市伝説の怪人「記憶屋」を探しに行き、トラウマと共に遼一のことも忘れてしまう…

得体の知れない存在が潜む蔵で始まる‟ひとり百物語”。シリーズを補完するボーナストラック-『拝み屋怪談 幽魂の蔵』

『拝み屋怪談 幽魂の蔵』 郷内心瞳/2020年/288ページ 不穏な漆黒に支配された闇の中、私は心の中で孤独な怪談語りを始めたー。古い母屋を改築した歪な蔵に現れるという“得体の知れないお化け”。お祓いと原因究明を依頼された拝み屋である著者は、「蔵の怪…

恐ろしき妖術師に物悲しき奇術師、読者を惑わす作家という魔術師たちの饗宴-『魔術師 異形アンソロジー タロット・ボックスⅡ』

『魔術師 異形アンソロジー タロット・ボックスⅡ』 井上雅彦(編)/2001年/419ページ たった今、貴方は絵札を引き当てた。これは〈魔術師〉の絵札……。と、そう言って、「博士」は、長い指で、一枚を宙に翳す。アルカナ・ナンバー「Ⅰ」、これがすべての魔術の始ま…

予言者、洗脳者、念動力者襲来! 苦悩の旅はサイキックバトルと化す-『NIGHT HEAD/邂逅』

『NIGHT HEAD/邂逅』 飯田譲治/2000年/510ページ サイコキネシス能力を持つ兄・直人とリーディング能力を備えた弟・直也は、隔離されていた超能力研究所から外の世界へと脱出した。しかし、彼らは運命の歯車の中に放り出されてしまったのだ。平成のノスト…

脳をえぐり肉を削ぐ、猟奇食人鬼の正体を文化人類学でプロファイリング!-『多重人格殺人』

『多重人格殺人(サイコキラー)』 和田はつ子/1996年/237ページ 次々と発見される女性と幼女の死体。その頭からは、脳がえぐり出され、肉がそぎ取られていた。警視庁捜査一課の女刑事水野薫は、犯行の異常性から、民間の文化人類学者と組んで、犯人の心理分…

死から蘇った司祭はキリストの再来か。完全無欠な‟奇跡”の真実は…?-『バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ』

『バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ』 藤木稟/2011年/416ページ 奇跡調査官・平賀とロベルトのもとに、バルカン半島のルノア共和国から調査依頼が舞いこむ。聖人の生まれ変わりと噂される若き司祭・アントニウスが、多くの重病人を奇跡の力で治癒した…

級友たちの不審死は殺人鬼の呪い? トンデモすれすれの超展開ミステリ-『レスト・イン・ピース 6番目の殺人鬼』

『レスト・イン・ピース 6番目の殺人鬼』 雪富千晶紀/2018年/368ページ これは〈殺人館〉の呪いなのか? 予想を覆す衝撃のラストに瞠目せよ! 大学生の友哉は、中学の同窓会に参加することに。しかし集まったメンバー達は、一様に何かに怯えていた。そんな中…

恐怖新聞の予言に抗う男がたどり着く、絶望を超えた無限の絶望!-『予言 J-HORROR THEATER』

『予言 J-HORROR THEATER』 林巧(原作:つのだじろう『恐怖新聞』)/2004年/234ページ J HORROR は、ついにここまで到達した!娘の死を予言する新聞を目にした男。それが現実になった日から想像を超えた悪夢がはじまる。念写を行う霊能力者や特殊能力をもつ…

主人公たち強過ぎ、ミスしなさ過ぎのTASノベライズだがラストは「ホラー」してて好印象-『バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ SIDE B』

『バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ SIDE B』 牧野修/2008年/239ページ 製薬企業、アンブレラ社の陰謀により死人がゾンビ化する世界。ラクーン市(シティ)壊滅後、新たな陰謀が、アンブレラのロシア工場にて計画されていた。アンブレラ社の計画、事…

オートスクロールのガンシューティングをゲーム性も含めて完璧にノベライズ-『バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ SIDE A』

『バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ SIDE A』 牧野修/2007年/268ページ 黄道特急の中でゾンビと化した乗客に襲われるレベッカとビリー。洋館で命がけの戦いを下クリスとジル。それに続くラクーン市(シティ)の壊滅。これらの事件には、すべて巨大…

周囲も自分も‟リセット”して姿を消す連続殺人鬼を追うサスペンス-『デジタルリセット』

『デジタルリセット』 秋津朗/2021年/352ページ 第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈読者賞〉受賞作! 許すのは5回まで。次は即リセット――。理想の環境を求めるその男は、自らの基準にそぐわない人間や動物を殺しては、別の土地で新たな人生を始める「リセ…

ひたすら奇怪で淫猥、非常に人を選ぶホラー小説大賞受賞作-『余は如何にして服部ヒロシとなりしか』

『余は如何にして服部ヒロシとなりしか』 あせごのまん/2005年/196ページ クリクリとよく動く尻に目を射られ、そっと後をつけた女は、同級生服部ヒロシの姉、サトさんだった。ヒロシなら、すぐ帰ってくるよ―。風呂に入っていけと勧められた鍵和田の見たも…

いろいろアレだった原作映画を補完する、優秀なノベライズ。必読!-『バイオハザードⅢ』

『バイオハザードⅢ』 キース・R・A・デカンディード(著)、富永和子(訳)/2007年/382ページ T・ウイルスの感染により、世界はアンデッドで埋め尽くされた砂漠と化す。アリスはアンブレラ社に監視衛星で追跡・コントロールされていることを知り、仲間たちから離れ…

そびえたつ象徴、破滅の凶兆…アンソロジーの名手が編む13本の恐怖-『塔の物語 異形アンソロジー タロット・ボックスⅠ』

『塔の物語 異形アンソロジー タロット・ボックスⅠ』 井上雅彦(編)/2000年/305ページ 私は、今ここに、少年の日の密かなる愉しみを再現しようとしているのかもしれない。タロット・カードを創ろうというのである。テラー博士よろしく、オムニバスの物語を…

自ら呪われて強引に祓う「祟られ屋」がギリシャ神話由来の呪いと激突!-『祟られ屋・黒染十字 その呪い、引き受けます』

『祟られ屋・黒染十字 その呪い、引き受けます』 敷島シキ/2020年/288ページ お人よしカウンセラー・白崎の元に痩せ細った女性患者がやってきた。ところが助言に激昂した彼女は呪いの言葉を残し去る。夜、ふと目を覚ました白崎が見たのは、床を蛇のように…

霊感ゼロの紙芝居中年と、霊感教師の微妙で絶妙な関係性が良し-『なぞとき紙芝居 思い出の幽霊』

『なぞとき紙芝居 思い出の幽霊』 中村ふみ/2015年/240ページ 高校生の木崎奏が近ごろ親しくなった年上の友人・御劔耕助は、物語を考え、絵を描き、自分で上演する紙芝居屋だ。ただし観客のニーズに応じないバッドエンド仕様が祟って、まったく商売にはな…

ビンゴが揃えば列の全員が死ぬ! ビンゴとホラーの合わせ技、だいたい滑る説-『ビンゴ』

『ビンゴ』 吉村達也/2005年/562ページ 東北の小さな高校で一人の女子生徒が首を吊った。黒板には、誰が書いたか席割りと同じ5×5のビンゴの図。その中央が彼女の席だった。森に響き渡る「リーチ!」「ビンゴ!」の声。そして、恐怖が始まった。 (Amazon…

首切り道化師の伝説と、教会で起きる奇跡が超アクロバティックに結びつく!-『バチカン奇跡調査官 闇の黄金』

『バチカン奇跡調査官 闇の黄金』 藤木稟/2011年/320ページ イタリアの小村の教会から申告された『奇跡』の調査に赴いた美貌の天才科学者・平賀と、古文書・暗号解読のエキスパート、ロベルト。彼らがそこで遭遇したのは、教会に角笛が鳴り響き虹色の光に…

恨みと呪いがもたらす自縄自縛! 長編「紅グモ」に傑作「ダリの男」ほかを収録-『こわい本4 呪縛』

『こわい本4 呪縛』 楳図かずお/2021年/368ページ これは呪いか、愛か――あなたを捕らえて離さない楳図かずおの恐怖譚 人の身体に巣食う恐ろしい蜘蛛に捕らわれた、美しい姉妹が味わう恐怖を描く「紅グモ」。すべて競い合ってきた兄弟の憎悪の深さに震撼す…

そんなに謎解きも紙芝居もしていないのに、やたらと面白いのは作者の筆力ゆえか-『なぞとき紙芝居』

『なぞとき紙芝居』 中村ふみ/2015年/256ページ 高校生の木崎奏が出会ったのは、職業も風体もどこか浮世離れした御劔耕助という男。常に和服で丸眼鏡、紙芝居屋を自称し、喫茶店“ひがな”の地下室で昭和レトロな品々に囲まれて暮らす謎多き人物だ。観客のニ…

キワモノ揃いの超能力捜査班の活躍を上回る、スーパー総理大臣無双!-『ミステリオ 警視庁超常犯罪捜査班 File#1』

『ミステリオ 警視庁超常犯罪捜査班 File#1』 吉村達也/2011年/304ページ 厳戒態勢の首相官邸で、史上初の殺人事件が発生した。被害者はなんと官房長官!犯行予告をしたのは、眼球を失った女性が死体で見つかる連続猟奇事件の犯人。なぜ双方の事件がつなが…

ノスタルジックでしっかり怖い、霊感少年と兄たちのショートショート連作-『響野怪談』

『響野(ひびきの)怪談』 織守きょうや/2019年/256ページ 響野家の末っ子・春希は怖がりなのに霊感が強く、ヒトではないものたちを呼び寄せてしまう。留守番中を狙ったようにかかってくる電話。何度捨てても家の前に現れるスニーカー。山小屋で出会った少女…

クセ強刑事ドラマを小ネタも含めて忠実にノベライズ-『ケイゾク/シーズン壱 完全版』

『ケイゾク/シーズン壱 完全版』 西荻弓絵(ノベライズ:市川亮、橋爪敬子)/2000年/518ページ 迷宮入り事件ケイゾク調査を専門に扱う「捜査一課弐係」。そんな弐係に東大卒の女性キャリア新人・柴田純が研修で配属された。IQ199という天才捜査官柴田(ファッ…

これぞ怪盗。名探偵・明智小五郎の二大ライバル怪人をカップリング-『黒蜥蜴と怪人二十面相』

『黒蜥蜴と怪人二十面相』 江戸川乱歩/2003年/ページ 乱歩の名作が、斬新かつダイナミックな切り口で現代に甦る! 乱歩世界を代表する二大アンチ・ヒーロー明智小五郎の好敵手が活躍する長編を一冊にカップリング! 人間の妄想が、いちばん怖い。 いまよみ…

日常も人の心も忘れ去る。脱出不可能、悪夢の無限ソロキャンプ!-『歪つ火』

『歪つ火』 三浦晴海/2024年/336ページ キャンプ場から出られなくなる未知の恐怖。戦慄のキャンプホラー! 辛い日常から逃れようと、私は一人でキャンプにやってきた。テントを張り、のんびりご飯を作る。夜はキャンプファイヤーを囲みながら、今日知り合…

人肉を喰い荒らす鳥人間! 佐渡に蘇る‟お鳥様”が恐怖と奇跡を呼ぶ-『鳥追い』

『鳥追い』 和田はつ子/2000年/284ページ 食い破られた喉、貪られた臓器、啜られた脳。女子高生の児島虹香はラブホテルで無残な死体となって発見された。しかも死体に残された体液は、未知の生物の物だった。『多重人格殺人』以来の文化人類学者・日下部遼…

前作とは趣向を変えたオカルトミステリ…と思いきや、終盤の展開が予想外過ぎる-『アンデッド 憑霊教室』

『アンデッド 憑霊教室』 福澤徹三/2009年/229ページ 不知火高校のいじめグループ連続殺人事件から3カ月。優等生の美少年・勇貴は、いじめパトロールを始めるが、伊美山では不可解な自殺が続いていた。そんな中、神山美咲のクラスメイトの恵が自殺してしま…

いじめられっ子に殺人鬼が取り憑き拷問復讐。不良グループがケバブと化す!-『アンデッド』

『アンデッド』 福澤徹三/2008年/222ページ おまえの怨みを晴らしてやろう。かわりにおまえのからだを貸せ。それは、不死者からの恐怖の呼び声だった―。不知火高校で起こる凄惨な連続殺人事件。被害者は全員、同じ不良グループに属しており、殺される前に…

猛吹雪に覆われ孤立する高層ビル! 殺人鬼から逃れる唯一の脱出路とは?-『マンハッタン魔の北壁』

『マンハッタン魔の北壁』 ディーン・R・クーンツ/1993年/365ページ 女の喉から血がほとばしる。ナイフがむきだしの乳房の間に突き刺さる――グレアム・ハリスは鮮明にその映像を見た。かつては世界的な登山家だったグレアムは、転落事故のショックで透視力…

あまりに大味なうえ赤ずきん関係ない呪い話だが、意地の悪いエピローグは最高-『赤ずきん』

『赤ずきん』 吉村達也/2010年/352ページ 女子大生の夕紀は、ある日突然頭の中に響く声を聞いた。それはひとりの女の子の家庭教師をしろという命令。訪れた一軒家には常軌を逸した姿の赤ずきんが待っていた!そして夕紀に襲いかかる数々の幻影。だが、それ…