角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

怪作

   いろいろと常軌を逸した異形の作品群。

超能力はおろか「黄泉の国」まで実在する世界観を、勢いだけで押し通した怪作刑事ドラマ-『ケイゾク/Beautiful Dreamer 完全版』

『ケイゾク/Beautiful Dreamer 完全版』 西荻弓絵(ノベライズ:橋爪敬子)/2002年/200ページ 迷宮入り事件ケイゾク調査の専門部署「警視庁捜査一課弐係」に、あの天才女性キャリア・柴田純が係長になって還ってきた!十五年前の海難事故の生存者たちが“厄神島…

“造られた神”を殺せるか? 虚と実を揺蕩う新世代実話怪談、ここに完結-『拝み屋怪談 壊れた母様の家〈陽〉』

『拝み屋怪談 壊れた母様の家〈陽〉』 郷内心瞳/2019年/304ページ 高鳥千草の元夫、謙二から娘に亡き妻が憑いたと相談を受けた拝み屋の著者は、さっそく原因の解明に動き出す。その過程で拝み屋の深町と桔梗、占い師の小夜歌、そして霊能師の美琴と浅から…

20年前の“いじめ”の恨みが爆発する復讐サスペンス…かと思いきや、予想外過ぎる真相に困惑-『卒業』

『卒業』 吉村達也/2002年/180ページ 高校卒業の日、積年の怨みを自殺という形であてつけようと、伊豆山中に死に場を求めた神保康明は、そこで奇妙な老人と少女に会う。「二十年後を待て」それが老人の放ったメッセージ。死を思いとどまった康明は、やがて…

怪事件の犯人は、正体不明の物の怪だった! …で終わる仰天ミステリ-『血ぬられた鏡像』

『赤かぶ検事奮戦記 血ぬられた鏡像』 和久峻三/1993年/177ページ 赤かぶ検事の相棒ともいうべき行天燎子警部補が、殺人事件の容疑者として取調べを受けた。彼女に瓜二つの制服姿の婦警が、若い女性を残虐に殺害したのだ。身に覚えのない彼女は赤かぶ検事…

傍若無人なボクサーがリング上で女体化、母乳噴出して引退する悲劇。なんだこれは!?-『ボクサー』

『ボクサー』 吉村達也/2010年/323ページ 男らしさが何よりの自慢だった自分の肉体が、徐々に女になっていく!ボクシング世界王者の芹沢哲が衝撃の事実に気づいたのは、タイトル防衛戦の最中だった。その奇病のために哲はボクサーの栄光と、人間としての尊…

血肉と腐臭にまみれた家族の団結。ラストのぐちゃぬる決戦の高揚感が凄い!-『血の配達屋さん』

『血の配達屋さん』 北見崇史/2022年/336ページ 家出した母を連れ戻すため、大学生の私は北国の港町・独鈷路戸にやって来た。赤錆に覆われ、動物の死骸が打ち捨てられた町は荒涼としている。あてもなく歩くうち、丘の上の廃墟で母と老人たちが凄まじい腐臭…

作者と読者と角川書店をも巻き込み降り注ぐ、心湿らす永遠の雨。思春期ミステリの大怪作-『X雨』

『X雨』 沙藤一樹/2000年/335ページ 一月のある快晴の朝、小学生の里緒の前に一人の少年が現れた。何故かレインコートを着ていた少年はフードをとり、潰れた右目をあらわらにすると、自分には見えるという、“X雨”のことを話しはじめた―。15年後、作家にな…

作中ギミック全てが不発、唐突に迎える納得いかないラスト。すがすがしいまでの失敗作-『そして、またひとり…』

『そして、またひとり…』 幸森軍也/1999年/253ページ 百瀬貴彦、百瀬の妻・朋美、薬袋和久、八木沢延明の4人は大学時代同じサークルに属していた。卒業後10年ぶりの再会を機に家族連れでキャンプへ出かけることになるが、なれない地理での検問による迂回や…

エグさとエモさが限界値、魔法少女もの最狂にして最高の変異亜種-『魔女の子供はやってこない』

『魔女の子供はやってこない』 矢部嵩/2013年/336ページ 小学生の夏子はある日「六〇六号室まで届けてください。お礼します。魔女」と書かれたへんてこなステッキを拾う。半信半疑で友達5人と部屋を訪ねるが、調子外れな魔女の暴走と勘違いで、あっさり2人…

角川ホラー文庫1、2を争う奇書。異常な文章で綴られる死体ゴロゴロの学生生活-『保健室登校』

『保健室登校』 矢部嵩/2009年/302ページ とある中学校に転入した少女。新しい級友たちは皆、間近に迫るクラス旅行に夢中で転入生には見向きもしない。女子グループが彼女も旅行に誘おうとすると、断固反対する者が現れて、クラスを二分する大議論に発展。…

グロテスクで懐かしい奇妙な町。SFとユーモアと怪獣に満ちた傑作-『人面町四丁目』

『人面町四丁目』 北野勇作/2004年/245ページ 大災害に被災し、行き場を失った男が遺体安置所で出会った不思議な女――。いっしょに来る? その言葉に導かれ、女の故郷人面町で、いつしかともに暮らし始めた男が出会うこの世のものとは思えぬ異形のものたち…