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血肉と腐臭にまみれた家族の団結。ラストのぐちゃぬる決戦の高揚感が凄い!-『血の配達屋さん』

『血の配達屋さん』

北見崇史/2022年/336ページ

家出した母を連れ戻すため、大学生の私は北国の港町・独鈷路戸にやって来た。赤錆に覆われ、動物の死骸が打ち捨てられた町は荒涼としている。あてもなく歩くうち、丘の上の廃墟で母と老人たちが凄まじい腐臭の中、奇妙な儀式を行っているのを目撃する。それがすべての始まりだった――。真の“恐怖”をあなたは体感する。阿鼻叫喚、怒涛の展開に絶句するノンストップ・ホラー! 第39回横溝正史ミステリ&ホラー大賞優秀賞受賞作。

(Amazon紹介文より)

 

 家を出た母を追って主人公が訪れたのは、寂れた冬の港町・独鈷路戸(とっころと)。街並みは廃墟じみており、住民は野蛮と言っていいレベルで排他的な老人たちばかり。繰り返し語られるのは「錆」と「腐臭」という死を連想させるイメージだ。死と隣り合わせにある生命力の象徴、すなわち「血」のイメージもまた色濃く、動く腸のようなグロテスクな怪物がその辺をウロウロしていたりする。生と死、無機と有機が絶妙に絡み合った、非常に気色悪くて魅力的な舞台である。そんなところに今時の大学生である主人公が迷い込むんだから、もうロクなことにならないんですよ。母と老人たちの奇妙な集会、大量の猫の死骸、主人公を訪ねてきて行方不明になる恋人、そして父と妹までも…。

 根底にあるのは「おなじみのアレ」なのだが、途中でそれと気づいても陳腐さは感じられない。それだけ舞台設定の気持ち悪良さが完璧なのだ。家族が大集合してからのラスト40ページのぐちゃぐちゃの激闘・死闘も、「まだやるの!?」と驚愕しつつテンションぶち上げてくれるサービス過剰ぶり。掛け値なしの傑作であり、この作者が紡ぎ出すぬちゃぬちゃのどろどろをもっと読みたいという気にさせられる。

★★★★★(5.0)

 

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