角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。読んだ上で、おすすめしたい作品は全力で推します。

★★★★★

  ホラーファンにはぜひ一度手に取ってもらいたい、文句無しの傑作。

ネットロアと化した伝説的怪談を含む、予測不能の恐怖に満ちた15編-『牛の首』

『厳選恐怖小説集 牛の首』 小松左京/2022年/416ページ 「あんな恐ろしい話はきいたことがない」と皆が口々に言いながらも、誰も肝心の内容を教えてくれない怪談「牛の首」。一体何がそんなに恐ろしいのかと躍起になって尋ね回った私は、話の出所である作…

夢の未来で描かれる絶望の家族模様。人の業と想いは永遠に変わることなく…-『ファミリーランド』

『ファミリーランド』 澤村伊智/2022年/320ページ ホラー小説大賞&日本推理作家協会賞受賞作家が、令和元年にお届けする最も恐いSF小説集。スマートデバイスで嫁を監視する姑、高級ブランド化する金髪碧眼のデザイナーズチャイルドと育児ハザード、次世代…

元ネタへの深い理解度に感謝感心。あまりに理想的なトリビュート作品集-『犯罪乱歩幻想』

『犯罪乱歩幻想』 三津田信三/2021年/336ページ “退屈病”に冒された青年が、引っ越し先の部屋で感じた異変の数々(「屋根裏の同居者」)。ある日突然届いたのは、猟奇を楽しむ、特別な倶楽部の招待状だった(「赤過ぎる部屋」)。G坂に住むミステリ作家志望の“…

戦死者の生への執着が、家族を、現実を喰らい尽くす。エゴと怨情の食物連鎖!-『火喰鳥を、喰う』

『火喰鳥を、喰う』 原浩/2022年/352ページ 信州で暮らす久喜雄司に起きた二つの出来事。ひとつは久喜家代々の墓石が、何者かによって破壊されたこと。もうひとつは、死者の日記が届いたことだった。久喜家に届けられた日記は、太平洋戦争末期に戦死した雄…

人々の恐怖を取り除き、救済もたらす穢れた天使。オカルトでバイオな超エンタメ-『天使の囀り』

『天使の囀り』 貴志裕介/2000年/526ページ 北島早苗は、ホスピスで終末期医療に携わる精神科医。恋人で作家の高梨は、病的な死恐怖症だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられ…

旧き恐怖の存在と、無限の恐怖に囚われた男。角川ホラー文庫を代表する神話級名著-『玩具修理者』

『玩具修理者』 小林泰三/1999年/224ページ 玩具修理者は何でも直してくれる。独楽でも、凧でも、ラジコンカーでも…死んだ猫だって。壊れたものを一旦すべてバラバラにして、一瞬の掛け声とともに。ある日、私は弟を過って死なせてしまう。親に知られぬう…

平穏なき魂vs霊媒師、満足死の自由がある町…。静謐さがリアリティを生む傑作2編-『白い部屋で月の歌を』

『白い部屋で月の歌を』 朱川湊人/2003年/304ページ ジュンは霊能力者シシィのもとで除霊のアシスタントをしている。仕事は霊魂を体内に受け入れること。彼にとっては霊たちが自分の内側の白い部屋に入ってくるように見えているのだ。ある日、殺傷沙汰のシ…

血肉と腐臭にまみれた家族の団結。ラストのぐちゃぬる決戦の高揚感が凄い!-『血の配達屋さん』

『血の配達屋さん』 北見崇史/2022年/336ページ 家出した母を連れ戻すため、大学生の私は北国の港町・独鈷路戸にやって来た。赤錆に覆われ、動物の死骸が打ち捨てられた町は荒涼としている。あてもなく歩くうち、丘の上の廃墟で母と老人たちが凄まじい腐臭…

作者と読者と角川書店をも巻き込み降り注ぐ、心湿らす永遠の雨。思春期ミステリの大怪作-『X雨』

『X雨』 沙藤一樹/2000年/335ページ 一月のある快晴の朝、小学生の里緒の前に一人の少年が現れた。何故かレインコートを着ていた少年はフードをとり、潰れた右目をあらわらにすると、自分には見えるという、“X雨”のことを話しはじめた―。15年後、作家にな…

SF界の重鎮はホラーにおいてもレジェンド級。外れの無い15編-『霧が晴れた時』

『霧が晴れた時』 小松左京/1993年/432ページ 太平洋戦争末期、阪神間大空襲で焼け出された少年が、世話になったお屋敷で見た恐怖の真相とは…。名作中の名作「くだんのはは」をはじめ、日本恐怖小説界に今なお絶大なる影響を与えつづけているホラー短編の…

角川ホラー文庫1、2を争う奇書。異常な文章で綴られる死体ゴロゴロの学生生活-『保健室登校』

『保健室登校』 矢部嵩/2009年/302ページ とある中学校に転入した少女。新しい級友たちは皆、間近に迫るクラス旅行に夢中で転入生には見向きもしない。女子グループが彼女も旅行に誘おうとすると、断固反対する者が現れて、クラスを二分する大議論に発展。…

執拗なまでに活き活きと描かれる、アンモラルでリアルな小学生の日常。考え得る中で最悪のラスト!-『夏の滴』

『夏の滴』 桐生祐狩/2003年/389ページ 僕は藤山真介。徳田と河合、そして転校していった友達は、本が好きという共通項で寄り集まった仲だったのだ―。町おこしイベントの失敗がもとで転校を余儀なくされる同級生、横行するいじめ、クラス中が熱狂しだした…

グロテスクで懐かしい奇妙な町。SFとユーモアと怪獣に満ちた傑作-『人面町四丁目』

『人面町四丁目』 北野勇作/2004年/245ページ 大災害に被災し、行き場を失った男が遺体安置所で出会った不思議な女――。いっしょに来る? その言葉に導かれ、女の故郷人面町で、いつしかともに暮らし始めた男が出会うこの世のものとは思えぬ異形のものたち…

京言葉が紡ぎ出す、雅で醜怪な異界譚。後味の悪さが癖になる-『お見世出し』

『お見世出し』 森山東/2004年/200ページ お見世出しとは、京都の花街で修業を積んできた少女が舞妓としてデビューする晴れ舞台のこと。お見世出しの日を夢見て稽古に励む綾乃だったが、舞の稽古の時、師匠に「幸恵」という少女と問違われる。三十年前に死…

グロテスク幻想の極み、小説というジャンル自体の極北、加虐と被虐の乱れ打ち-『壊れた少女を拾ったので』

『壊れた少女を拾ったので』 遠藤徹/2007年/240ページ ほおら、みいつけた―。きしんだ声に引かれていくと、死にかけたペットの山の中、わたくしは少女と出会いました。その娘はきれいだったので、もっともっと美しくするために、わたくしは血と粘液にまみ…

許容範囲ギリギリをせめぎ合う、筒井ホラーの真髄が詰め込まれた納得のセレクト-『鍵』

『鍵』 筒井康隆/1994年/269ページ 放置された机から見つかった古い鍵束。鍵に秘められた不思議な力に導かれ、甦る寒い思い出…。日常からにじみ出す幻想と恐怖を独自の感性と手法で綴る著者初のホラー短編集。 (Amazon解説文より) 著者初のホラー短編集に…

うなぎが人を喰らいつくす? ホラーとミステリの完全なる融合、作者の捌きっぷりに見惚れる逸品-『うなぎ鬼』

『うなぎ鬼』 高田侑/2010年/328ページ 借金で首が回らなくなった勝は、強面を見込まれ、取り立て会社に身請けされる。社長の千脇は「殺しだけはさせない」と断言するが、どこか得体が知れない。ある日、勝は社長から黒牟という寂れた街の鰻の養殖場まで、…

相変わらずの良セレクション。ホラーアンソロジーのスタンダードとしてもお勧め-『恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション』

『恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション』 朝宮運河・編/2021年/286ページ ショッキングな幕切れで知られる竹本健治の「恐怖」を筆頭に、ノスタルジックな毒を味わえる宇佐美まことの図書館奇譚「夏休みのケイカク」、現代人の罪と罰を描いた恒川光太郎…

人は選ぶが、得難い読書体験をもたらしてくれる怪作。異常主人公に感情移入できるか?-『チューイングボーン』

『チューイングボーン』 大山尚利/2005年/324ページ “ロマンスカーの展望車から三度、外の風景を撮ってください―”原戸登は大学の同窓生・嶋田里美から奇妙なビデオ撮影を依頼された。だが、登は一度ならず二度までも、人身事故の瞬間を撮影してしまう。そ…

ベストセレクションの名にふさわしい珠玉のセレクト。拾い物が必ず見つかる-『再生 角川ホラー文庫ベストセレクション』

『再生 角川ホラー文庫ベストセレクション』 朝宮運河・編/2021年/336ページ 1993年4月の創刊以来、わが国のホラー・エンターテインメントとともに歩んできた無二の文庫レーベル、角川ホラー文庫。その膨大な遺産の中から、時代を超えて読み継がれる名作を…

ヤクザvs○○○、高齢者vs若年者、ゾンビvs一般人…勝者無き抗争を描く最悪の近未来-『熱帯夜』

『熱帯夜』 曽根圭介/2010年/272ページ 猛署日が続く8月の夜、ボクたちは凶悪なヤクザ2人に監禁されている。友人の藤堂は、妻の美鈴とボクを人質にして金策に走った。2時間後のタイムリミットまでに藤堂は戻ってくるのか?ボクは愛する美鈴を守れるのか!?ス…

ホラーだからこそ成立する異形のミステリ。世の不条理を暴く黒い短編集‐『鼻』

『鼻』 曽根圭介/2007年/288ページ 人間たちは、テングとブタに二分されている。鼻を持つテングはブタに迫害され、殺され続けている。外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法とされるブタへの転換手術を決意する。一方、自己臭症に悩む刑事の「俺」…