角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

★★★★★

京言葉が紡ぎ出す、雅で醜怪な異界譚。後味の悪さが癖になる-『お見世出し』

『お見世出し』 森山東/2004年/200ページ お見世出しとは、京都の花街で修業を積んできた少女が舞妓としてデビューする晴れ舞台のこと。お見世出しの日を夢見て稽古に励む綾乃だったが、舞の稽古の時、師匠に「幸恵」という少女と問違われる。三十年前に死…

グロテスク幻想の極み、小説というジャンル自体の極北、加虐と被虐の乱れ打ち-『壊れた少女を拾ったので』

『壊れた少女を拾ったので』 遠藤徹/2007年/240ページ ほおら、みいつけた―。きしんだ声に引かれていくと、死にかけたペットの山の中、わたくしは少女と出会いました。その娘はきれいだったので、もっともっと美しくするために、わたくしは血と粘液にまみ…

許容範囲ギリギリをせめぎ合う、筒井ホラーの真髄が詰め込まれた納得のセレクト-『鍵』

『鍵』 筒井康隆/1994年/269ページ 放置された机から見つかった古い鍵束。鍵に秘められた不思議な力に導かれ、甦る寒い思い出…。日常からにじみ出す幻想と恐怖を独自の感性と手法で綴る著者初のホラー短編集。 (Amazon解説文より) 著者初のホラー短編集に…

うなぎが人を喰らいつくす? ホラーとミステリの完全融合、作者の捌きっぷりに見惚れる逸品-『うなぎ鬼』

『うなぎ鬼』 高田侑/2010年/328ページ 借金で首が回らなくなった勝は、強面を見込まれ、取り立て会社に身請けされる。社長の千脇は「殺しだけはさせない」と断言するが、どこか得体が知れない。ある日、勝は社長から黒牟という寂れた街の鰻の養殖場まで、…

相変わらずの良セレクション。ホラーアンソロジーのスタンダードとしてもお勧め-『恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション』

『恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション』 朝宮運河(編)/2021年/286ページ ショッキングな幕切れで知られる竹本健治の「恐怖」を筆頭に、ノスタルジックな毒を味わえる宇佐美まことの図書館奇譚「夏休みのケイカク」、現代人の罪と罰を描いた恒川光太郎…

人は選ぶが、得難い読書体験をもたらす奇妙な一冊。異常主人公に感情移入できるか?-『チューイングボーン』

『チューイングボーン』 大山尚利/2005年/324ページ “ロマンスカーの展望車から三度、外の風景を撮ってください―”原戸登は大学の同窓生・嶋田里美から奇妙なビデオ撮影を依頼された。だが、登は一度ならず二度までも、人身事故の瞬間を撮影してしまう。そ…

ベストセレクションの名にふさわしい珠玉のセレクト。拾い物が必ず見つかる-『再生 角川ホラー文庫ベストセレクション』

『再生 角川ホラー文庫ベストセレクション』 朝宮運河・編/2021年/336ページ 1993年4月の創刊以来、わが国のホラー・エンターテインメントとともに歩んできた無二の文庫レーベル、角川ホラー文庫。その膨大な遺産の中から、時代を超えて読み継がれる名作を…

ホラーだからこそ成立する異形のミステリ。世の不条理を暴く黒い短編集‐『鼻』

『鼻』 曽根圭介/2007年/288ページ 人間たちは、テングとブタに二分されている。鼻を持つテングはブタに迫害され、殺され続けている。外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法とされるブタへの転換手術を決意する。一方、自己臭症に悩む刑事の「俺」…