角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。読んだ上で、おすすめしたい作品は全力で推します。

シリーズ

恋のライバルがいいヤツ過ぎて困惑する主人公。ミステリとしても恋愛物としても安定の好シリーズ-『ホーンテッド・キャンパス 桜の宵の満開の下』

『ホーンテッド・キャンパス 桜の宵の満開の下』 櫛木理宇/2013年/344ページ 幽霊が視えてしまう体質の大学生、八神森司。その能力を生かし(?)、オカルト研究会で、美少女こよみに密かに片想い中。しかしオカ研には、恐怖の依頼が続々と、凍死寸前の男が訴…

連続少女殺人犯“芸術家”を追い詰める、検死官&法医昆虫学者!-『パンドラ 猟奇犯罪検死官・石上妙子』

『パンドラ 猟奇犯罪検死官石上妙子』 内藤了/2017年/336ページ 検死を行う法医学部の大学院生・石上妙子。自殺とされた少女の遺書の一部が不思議なところから発見された。妙子は違和感を持つなか、10代の少女の連続失踪事件のことを、新聞と週刊誌の記事…

芥川、鴎外、太宰、漱石…「現代ホラー」と呼んでいいのか悩む文豪揃いのアンソロジー-『森の聲』

『森の聲 現代ホラー傑作選第5集』 内田康夫(編)/1995年/290ページ 数々の名作を生んだ十一人の巨匠が、混迷の時代に神火を灯す森羅万象の世界。収録作品芥川龍之介「妖婆」石川淳「灰色のマント」泉鏡花「化鳥」折口信夫「神の嫁」川端康成「片腕」小泉八雲「青柳の…

最後の最後にして百物語らしくなった(?)大盤振る舞いの最終巻-『現代百物語 終焉』

『現代百物語 終焉』 岩井志麻子/2018年/224ページ すべてのものには終わりがくる。生命が終わり、死を迎えること―終焉。異世界の住人となった者たちに向かって飲み屋のママはこう語る。「あの世の人達って強い理由だけで出てこないし、正当な理由だけで動…

嘘つきエピソード大解放! 虚飾と欺瞞にまみれた不実な人々のオンパレード-『現代百物語 不実』

『現代百物語 不実』 岩井志麻子/2017年/224ページ 「自殺した彼女の人生を代わりに生きています」――滔々と壮絶な体験を語る作家志望の女。傷害事件にまで発展した気まぐれの作り話。芸人が体験した3つの謎と符合する実際の陰惨な話。息を吐くように嘘を…

陰で暗躍する獣と、陰でしか生きられないけだもの。これぞ乱歩中の乱歩!-『陰獣 江戸川ベストセレクション④』

『陰獣 江戸川ベストセレクション④』 江戸川乱歩/2008年/204ページ 探偵作家の寒川に、資産家夫人、静子が助けを求めてきた。捨てた男から脅迫状が届いたというが、差出人は人気探偵作家の大江春泥。静子の美しさと春泥への興味で、寒川は出来るだけの助力…

文庫版最終巻にして、メンバーの過去にまつわる話を集めた入門篇。続きはコミックスで-『黒鷺死体宅配便 5』

『黒鷺死体宅配便 5』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2009年/174ページ 死体専門のダウジング能力を持つ沼田真古人は、幼いころ、その技術を教えてもらった師匠と再会を果たす。しかしそれは悲しい別れの始まりだった――!? “お届け物は死体です”。死んだ…

エピソードのトンデモぶりが極まった傑作巻。あまり死体を宅配してない気もするが…-『黒鷺死体宅配便 4』

『黒鷺死体宅配便 4』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2009年/218ページ あいかわらず仕事に恵まれない「黒鷺死体宅配便」のメンバーたちは、村起こしを目的としたミステリーサークル作りのアルバイトをしていた。偶然にもこの村には、40年ほど前に墜落し…

そもそも死体から依頼を受けてもたいして金にならないのでは? と今さら気づく第3巻-『黒鷺死体宅配便 3』

『黒鷺死体宅配便 3』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2008年/188ページ 「頼む、カラダを戻してくれ」……死体からしか聞こえないはずの声が、死ぬ間際のホームレスから聞こえてきた。壊死した腎臓が病院で摘出され、ホームレスは息を引き取った。声はどう…

やっぱり「生きてる人間のほうが怖い」のか。原点に立ち返った粒揃いの1冊-『現代百物語 因果』

『現代百物語 因果』 岩井志麻子/2016年/209ページ ダイヤが原因で滅びてしまった一家。夫が妻に語ったある夏の出来事。後輩に対して威圧的な振舞いを続けた男の末路。混線した電話から小さく聞こえる誰かの会話。欲望に支配された人の心の闇は深い。その…

死体を甦らせてまた殺す葬儀屋VS死体宅配便。死者蘇生能力がニッチな商売に!?-『黒鷺死体宅配便 2』

『黒鷺死体宅配便 2』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2008年/218ページ 死体の声を聞き、その依頼に応じて報酬を得る黒鷺死体宅配便。手違いから死刑囚の死体を手に入れた唐津。その死体の望みは、殺してしまった一家の、生き残った子供に会って謝ること…

死体にまつわるスペシャリスト達が、死体の最期の望みを叶えます。内容はともかくなぜホラー文庫?-『黒鷺死体宅配便 1』

『黒鷺死体宅配便 1』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2006年/253ページ 死体の声を聞くイタコ、死体を探すダウジング、死体修復のエンバーミング、情報収集のハッキング、宇宙人と交信するチャネリング。それぞれ特技をもった仏教大学の学生5人が作った…

怪談同士の有機的な絡み合いが読み応えを増す、実話怪談集として究極に近い1冊-『拝み屋怪談 禁忌を書く』

『拝み屋怪談 禁忌を書く』 郷内心瞳/2016年/293ページ 最期まで優しい母として逝った依頼主、忌まわしき白無垢姿の花嫁、昵懇の間柄だったひと、心に怪物を抱えた女――。四人の女性の存在と彼女たちとの顛末を中心に、現役の拝み屋が体験・見聞した最新怪…

幽霊なみに話が通じない、理解不能・コミュニケーション不能な人間の恐ろしさ!-『現代百物語 妄執』

『現代百物語 妄執』 岩井志麻子/2015年/224ページ 刑務所で病に伏せる罪人に高額な医療費を送りつける逆・死神。古書店で入手した一般人の日記帳に綴られた壮絶な書き込み。ファンから著者に贈られた鍵と簡素な地図。女性ライターの股間に憑いたインチキ…

明智小五郎入門編。一時の享楽と長年の怨讐、正反対の性質を持つ2つの怪事件-『屋根裏の散歩者 江戸川乱歩ベストセレクション③』

『屋根裏の散歩者 江戸川乱歩ベストセレクション③』 江戸川乱歩/2008年/241ページ 世の中の全てに興味を失った男・郷田三郎は、探偵・明智小五郎と知り合ったことで「犯罪」への多大な興味を持つ。彼が見つけた密かな楽しみは、下宿の屋根裏を歩き回り、他…

無数の実話怪談で綴られる作者の半生。拝み屋を志すきっかけに度肝を抜かれる-『拝み屋怪談 逆さ稲荷』

『拝み屋怪談 逆さ稲荷』 郷内心瞳/2015年/272ページ 如何にして著者は拝み屋と成り得たのか―。入院中に探検した夜の病院で遭遇した“ノブコちゃん”。曾祖母が仏壇を拝まない理由。著者の家族が次々に出くわす白い着物の女の正体とは。霊を霊と認識していな…

犯人は噛ませ犬感が強いが、新展開のプロローグとしては上々-『BACK 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子』

『BACK 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子』 内藤了/2016年/288ページ 12月25日未明、都心の病院で大量殺人が発生との報が入った。死傷者多数で院内は停電。現場に急行した比奈子らは生々しい殺戮現場に息を呑む。そこは特殊な受刑者を入院させるための特別病棟が…

彼岸此岸をたゆたう何者かの声。シリーズの中では比較的刺激強めの1冊-『現代百物語 彼岸』

『現代百物語 彼岸』 岩井志麻子/2014年/224ページ 庭にある鳥の巣箱に棲みついた邪悪な目。絶対に語ってはいけない話。聞いてはいけない話。書いてもいけない話。こちらが生きていることに気付かない、死者。霊を届ける女、受け取る男。「真っ黄色のワン…

ミステリの重鎮が集うアンソロジー。恐怖度薄めでも掘り出しもの多数-『悪夢十夜』

『悪夢十夜 現代ホラー傑作選第4集』 夏樹静子(編)/1993年/322ページ 闇夜をますます深くする十の悪夢。古今の名作の中から選びぬかれた、逸品揃いの恐怖小説集。 収録作品 赤川次郎「私だけの境界線」 江戸川乱歩「恐ろしき錯誤」 木々高太郎「文学少女」 小池…

進化した人類(寄生獣+スパイダーマン)の異形アクションバトル、完結-『心臓狩り ③異形の領域』

『心臓狩り ③異形の領域』 梅原克文/2011年/281ページ 雅之と同じく、移植によって“シャーマン”となった秀人は、人間の心臓からその記憶や特技を吸収するという禁忌の行為を繰り返す存在―“羅刹”と化し、さらなる力を得ようと、同じ一族の舞や玲子に襲いか…

妄執が生んだ忌まわしき花嫁。実話怪談というジャンルを一段上のステージに引き上げた傑作-『拝み屋怪談 花嫁の家』

『拝み屋怪談 花嫁の家』 郷内心瞳/2022年/384ページ 「嫁いだ花嫁が3年以内にかならず死ぬ」――。 忌まわしき伝承のある東北の旧家・海上家では、過去十数代にわたり花嫁が皆若くして死に絶えていた。この家に嫁いだ女性から相談を受けた拝み屋・郷内は、…

手首の腱で斬りあう能力者バトルはどうにも地味だが、奇抜な設定は読みごたえあり-『心臓狩り ②シャーマンの一族』

『心臓狩り ②シャーマンの一族』 梅原克文/2011年/289ページ 心臓移植により、臓器提供者の記憶だけでなく、手首の長掌筋腱が体外に飛び出し、“触手”や“刀”に変化する謎の力まで受け継いでしまった雅之。事態の真相を知るべくドナーの正体を探った雅之は、…

飲んで騒いで恋をして、その傍らで霊を視て。ある意味理想の大学生活-『ホーンテッド・キャンパス 幽霊たちとチョコレート』

『ホーンテッド・キャンパス 幽霊たちとチョコレート』 櫛木理宇/2013年/310ページ 幽霊が「視えてしまう」草食系大学生の八神森司。怖がりな彼がオカルト研究会に属しているのは、ひとえに片想いの美少女こよみのため。霊にとりつかれやすい彼女を見守る…

ド安定の怪奇ゴシップエッセイ。知ったのを後悔する厭な芸能界話も…-『現代百物語 殺意』

『現代百物語 殺意』 岩井志麻子/2013年/224ページ 不思議な偶然が繰り返される女。いつの間にか入れ替わってしまった噂話。淫猥な生霊。延々と食べ続ける女。歪んだ正義感に駆られた人々の暴走。風に乗って窓から入ってくる「死んじゃえば?」というささや…

心臓移植手術を受けたら、手首から触手が飛び出る特異体質に!? 変化球のヒーロー誕生譚-『心臓狩り ①移植された悪夢』

『心臓狩り ①移植された悪夢』 梅原克文/2011年/295ページ 難病を発症し心臓移植を受けることになった堤雅之。手術は無事成功するが、すぐに雅之は奇怪な現象に悩まされ始める。嗜好の急激な変化、左足を引きずる癖、手首の異常な痒み、そして何者かに殺さ…

怪談には物理攻撃で立ち向かえ! 悪ふざけにとどまらない、怪談への理解と愛ある逸品-『怪談撲滅委員会 死人に口無し』

『怪談撲滅委員会 死人に口無し』 黒史郎/2015年/274ページ 深夜の学校で行われる葬式。“参列者”の中に迷い込んだ生徒が行列の末に棺を覗くと、そこには友達の遺体が。数日後、葬式は現実になるという―。「怪談撲滅委員会」に加入した澪と雲英が次に撲滅を…

映画にもない描写や脚本家自らの解説など、資料としては貴重な一冊-『映画版脚本集 リング リング2』

『映画版脚本集 リング リング2』 原作:鈴木光司、脚本:高橋洋/1999年/301ページ ちまたに頻発する原因不明の突然死。呪いが込められたビデオテープの存在は都市の人々の間に急速に広まって…。映画「リング」とその最悪の続編として、さらなる恐怖をフィ…

『今昔物語』のエピソードが、現代の猟奇事件・未解決事件に生まれ変わる-『業苦 忌まわ昔(弐)』

『業苦 忌まわ昔(弐)』 岩井志麻子/2020年/208ページ 志を立て腹に宿った釈迦如来。親子の情が通じない無情なあの世。色男を焦がれ死にさせた冷酷な美女。妻に追い立てられて老いた姨母を山に捨てた夫―。これは昔か現代か。それは夢か現か幻か。過去を語る…

異常世界で異常人物が異常言動を繰り広げ、怪談どころじゃなくなってるホラーコメディ-『怪談撲滅委員会 幽霊の正体見たり枯尾花』

『怪談撲滅委員会 幽霊の正体見たり枯尾花』 黒史郎/2014年/342ページ 超ド級の怖がり・大神澪は、事情により七不思議ならぬ“二十一の怪談”がある白首第四高校に入学してしまった。友達も作らず怪談を避ける日々を過ごしていたが、突然、破天荒な不良・雲…

日本ホラー界の歴史を塗り替え、いまだ増殖し続けるシリーズの原点。すべては貞子の遺志のままに-『リング』

『リング』 鈴木光司/1993年/331ページ 同日の同時刻に苦悶と驚愕の表情を残して死亡した四人の少年少女。雑誌記者の浅川は姪の死に不審を抱き調査を始めた。―そしていま、浅川は一本のビデオテープを手にしている。少年たちは、これを見た一週間後に死亡…