角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

角川ホラー文庫リスト(1993/04~2023/10)

随時更新中。抜け・ミス等あればご指摘ください。レビューを書いた作品はタイトル部分にリンクを貼っています。刊行月ごと、著者・編者名五十音順(海外作品は別枠)で掲載。新装版・復刻版はタイトル・内容等、大幅に変更があった場合のみ別途掲載していま…

最凶怪談「八甲田山」にまつわるエピソードは興味深いが全体的にはややパンチ不足-『怪談狩り 葬儀猫』

『怪談狩り 葬儀猫』 中山市朗/2023年/256ページ 怪異蒐集家が厳選して語り継ぐ、本当に怖い怪談実話集。 コロナ禍の町で、異様な格好の男を目撃した主婦の体験が不思議な「面布」。引っ越したばかりの地で、近所で立て続けに起きた不幸と、その共通点に震…

家庭の隙間に入り込み、崩壊に導く魔少年の正体は? 至高のホラーミステリ連作集-『瑕死物件 209号室のアオイ』

『瑕死物件 209号室のアオイ』 櫛木理宇/2018年/320ページ 誰もが羨む、川沿いの瀟洒なマンション。専業主婦の菜緒は、育児に無関心な夫と、手のかかる息子に疲弊する日々。しかし209号室に住む葵という少年が一家に「寄生」し、日常は歪み始める。キャリ…

魔性の瞳が秘められた憎悪を暴く。全体的な説得力不足が惜しい一作-『私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。』

『私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。』 日向奈くらら/2017年/320ページ 二年C組の問題の多さには、呆れますね―教頭の言葉が突き刺さる。また私のクラスの生徒が行方不明になった。これでもう4人だ。私はその失踪にあの子が関係しているのではな…

袋とじで原作と異なる結末が明らかになる! 映画を観た方が早い気もするが…-『映画版 黒い家』

『映画版 黒い家』 原作:貴志祐介 脚本:大森寿美男/1999年/173ページ 生命保険制度と現代日本の抱える根源的な病理に迫った傑作サイコ・サスペンス『黒い家』を「39刑法第三十九条」でも森田芳光監督とコンビを組んだ気鋭の脚本家・大森寿美男がシナリオ…

暴力と社会病理―“誰が読んでも、いつの時代でも怖いもの”を真正面から描いた不朽の名作-『黒い家』

『黒い家』 貴志祐介/1998年/392ページ 若槻慎二は、生命保険会社の京都支社で保険金の支払い査定に忙殺されていた。ある日、顧客の家に呼び出され、期せずして子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。ほどなく死亡保険金が請求されるが、顧客の不審…

幼い息子を亡くした一家が、幽霊トンネルで遭遇する悪夢。絶望・希望が混在するラストが秀逸-『ダムド・ファイル 「あのトンネル」』

『ダムド・ファイル 「あのトンネル」』 原案:井川耕一郎、万田邦敏 著:斉木晴子/2004年/216ページ その日、カーナビが示したのは、愛知県北東部の山中にある「伊勢神トンネル」。だが、実際に目の前に現れたのは「伊世賀美」と書かれた古びたトンネルだっ…

グロテスク特化と思いきや、幽霊・ロボット・宇宙人・妖怪も入り乱れる百花繚乱のフリークショー!-『臓物大展覧会』

『臓物大展覧会』 小林泰三/2009年/384ページ 彷徨い人が、うらぶれた町で見つけた「臓物大展覧会」という看板。興味本位で中に入ると、そこには数百もある肉らしき塊が…。彷徨い人が関係者らしき人物に訊いてみると、展示されている臓物は一つ一つ己の物…

過剰なまでのサービス精神に溢れた、格調高くもB級な異形長編-『くらら 怪物船團』

『くらら 怪物船團』 井上雅彦/1998年/328ページ 原因不明の事故で沈没したクルーザーには、恋人が乗っていた。未確認の情報を元に、結城が駆けつけた港町には、異様な現象が起こりつつあった。曲馬団の箱、獣の檻、朽ち果てた道化人形…。奇妙な漂着物を拾…

遊び半分のお見合いに鉄槌を! 黒幕の理解しがたい行動に困惑させられる珍作-『お見合い』

『お見合い』 吉村達也/2001年/262ページ 大好きな史也と結婚する前に、一度だけ「お見合い」というものをしてみたい。満たされた恋で幸せな毎日を送る滝真由子にとって、それは余裕の気持ちが産み出したほんの遊び心。恋人の史也も、笑って賛成してくれた…

常世をも凌駕するホラークリエイターの意地と矜持を見よ!-『奇奇奇譚編集部 幽霊取材は命がけ』

『奇奇奇譚編集部 幽霊取材は命がけ』 木犀あこ/2018年/228ページ 霊が見えるホラー作家の熊野惣介は、怪奇小説雑誌『奇奇奇譚』での連載を目指して、担当編集者の善知烏とネタ探しを続けていた。フィクションの存在のはずの怪人、さびれた大観音像の内部…

『リング』の続編という高いハードルを越え、シリーズを神話と化した医学SF-『らせん』

『らせん』 鈴木光司/2000年/432ページ 幼い息子を海で亡くした監察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山竜司の解剖を担当した。冠動脈から正体不明の肉腫が発見され、遺体からはみ出た新聞紙に書かれた数字は、ある言葉を暗示していた。…「リング」とは?…