『八獄の界 死相学探偵6』
三津田信三/2016年/368ページ
黒術師を崇拝する者たちがいる。黒い欲望を持った人々を犯罪へいざなう、恐るべき呪術の使い手・“黒術師”。黒捜課の曲矢刑事から、黒術師が崇拝者を集めたバスツアーを主催すると聞かされた俊一郎は、潜入捜査を手伝うことに。危険を承知で潜入した俊一郎だったが、バスツアーの参加者全員に、くっきりと死相が視えていてー。俊一郎たち参加者を次々と襲う、怪事件の真相は!?「死相学探偵」シリーズ、絶体絶命の第6弾!!
(「BOOK」データベースより)
黒術師主催の崇拝者向けバスツアーなるふざけた企画が開催されることを知った黒捜課は、死相学探偵こと弦矢俊一郎に潜入捜査を依頼。俊一郎と事情を知らないであろう運転手を除けば参加者は8人しかいなかったが、黒術師から参加者全員に「この中にいるスパイを突き止めれば、どんな願いでも叶える」というメールが送られてくる。疑心暗鬼に陥る参加者たちだったが、とりあえずは全員で呼び名を決めることに。まとめ役めいた“委員長”、モデルさながらの派手めの女性“蝶々”、巨漢の“ビッグ”、中学生男子の“小林君”、理系のメガネ男“ドクター”、怪談好きの女子高生“猫娘”、いかにもなオタク青年“アキバ”、全身黒づくめのサングラス男“ブラック”。当の俊一郎は“学者”だ。
黒術師側から配られた「八獄の界」の呪符。奇妙な昼食会。不穏な雰囲気をはらみつつもバスは目的地に近づいていく。が、七人峠―‟死地人峠”という不吉な名前で呼ばれる場所を通行中、運転手の居眠り運転によりバスは大事故を起こしてしまう。目を覚ました参加者たちは、事故で犠牲になったひとりを置いて徒歩で目的地に向かうことにするが、自分たち以外の人間も、動物も、命あるものの姿がいっさい見えないことに気づく。周囲から迫りくる白い霧。ひとり、またひとりと増えていく犠牲者。これは死地人峠に棲むという妖怪‟馬骨婆”の仕業なのか…!?
いつものミステリ展開とはやや雰囲気が異なり、クローズド・サークルものにパニックホラーものをプラスしたかのような展開になっている。容疑者かつ犠牲者になるバスツアー客たちのキャラの立ち方と怪しさがちょうどよく、謎解き要素は薄めなものの映画『ミスト』さながらの霧と怪物の組み合わせなど見どころはたっぷり。あまりにも掟破り過ぎる「真犯人」も印象深い。一気読み必至の快作だ。
★★★★(4.0)

