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宿敵のアジトへと向かう探偵一行! 最終決戦にふさわしいアクション活劇-『死相学探偵 最後の事件』

『死相学探偵 最後の事件』

三津田信三/2021年/432ページ

黒術師の居所を突き止めるべく奔走する黒捜課のメンバーと俊一郎たちは、候補地の1つである孤島に渡った。見晴らし台を備える元別荘で待ち受けていたのは、どこか言動が奇妙なスタッフと、人数分に満たない食料だった。黒術師の罠を警戒し、緊張する一行を嘲笑うかのように、不可解な連続殺人事件が起き始める。犯人は誰か、その目的は?そして、姿を見せない黒術師の正体とは?最後にして究極の闘いが、幕を開ける!

(「BOOK」データベースより)

 

 宿敵・黒術師からの不敵な招待状が俊一郎とその仲間たちに届けられた。死相学探偵・弦矢俊一郎。その祖母にして最強の拝み屋・愛染様こと弦矢愛。祖父で通好みの怪奇小説家・弦矢駿作。俊一郎の腐れ縁の相棒にして黒捜課の曲矢刑事。黒捜課を立ち上げた新垣警部。黒捜課所属で過去に黒術師関連の事件にも関わった唯木と城崎。以上の7人が、黒術師が待つという孤島のホテルを訪れる。ホテルのスタッフは支配人の枝村、雑用係の熊井、料理人の呂見山、配膳係の樹海、メイドのマユミ、清掃係の津久井の6人。スタッフはみな黒術師のことは知らないと言うが、その立ち振る舞いはどこか奇妙だった…。

 万全の心構えでアジトへと潜入した俊一郎たちだったが、黒術師の呪術は容赦なく彼らを襲う。仲間からも犠牲者が出、ホテルのスタッフたちも餌食となる。黒術師はこの島のどこに潜んでいるのか。それとも、すでにこのホテルの中に居るとでもいうのだろうか…?

 

 冒頭では『作者不詳 ミステリ作家の読む本』の素人探偵・飛鳥信一郎、『七人の鬼ごっこ』のホラーミステリ作家・速水晃一、『シェルター 終末の殺人』の星影企画といった、作者の多作品のキャラクターが集合、俊一郎とともに推理を繰り広げるというなかなか豪華かつ胸熱な展開。黒術師の島に向かう7人もシリーズの過去作で活躍してきたメンバーだけに、死地へと赴くさまを見るのは読者としてもなかなか心苦しかったりする。

 今回はオカルトアドベンチャーとでも称すべき内容で、普通のミステリであればかなり反則気味のギミックが続出する。とは言え、死視という主人公最大の能力に挑戦をたたきつけるかのような矛盾した展開、過去のシリーズ作品で起きた事件をなぞらえるような謎解きの数々は最終巻の雰囲気たっぷりだ。少々「決着をつけること」に終始し過ぎている印象もあり、謎解き要素がまあまあ理不尽なこと、黒術師の正体や目的がわりと予想の範囲内だったことなどは気になってしまう。まあでも、終章のあとのごく短い文章による、希望ある締めかたは見事。「最後の事件」としてふさわしい内容の大活劇であった。

★★★☆(3.5)

 

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