角川ホラー文庫全部読む

ホラー小説のレビューブログ。全部読めるといいですね

★★

  それなりに楽しめたが、個人的な好みとは微妙に外れていた作品。

やや入手難だった『怪』を再編集。おみっちゃんの顔怖すぎない?-『ゾク こわい本5 怪1』

『ゾク こわい本5 怪1』 楳図かずお/2025年/336ページ ほほほ。わたしは きれいなのがきらいなのさ。お前にこぶをうつしてやる いとこのアグリの家に世話になるため引っ越してきた優子。アグリには顔にこぶがあり、何かにつけて優子にいじわるをするのだっ…

見た者を狂気に陥らせる闇の芸術に、繊細すぎる青年画家はどう挑む!?-『赤い球体 美術調律者・影』

『赤い球体 美術調律者・影』 倉阪鬼一郎/2012年/331ページ 巷で“赤い球体”を見た人々が自我を失い、凶事を起こす事態が発生。それは人気アイドルグループM13の新曲に使われた、ある呪われた芸術作品が原因だった。天才的な美術感覚を持つ青年画家・影…

嫁ぎ先は理想のしあわせ家族! かと思いきや、わずか20ページで不穏な雰囲気に…-『ファミリー』

『ファミリー』 森村誠一/1993年/264ページ 最愛の恋人を不慮の交通事故で亡くした傷心の弓子は、数か月後、上司の薦めで見合いをし、結婚した。優しい夫と、理想的とも思える仲の良い家族関係。彼女はとても幸せだった。だが、しばらくすると、少しずつ微…

快楽殺人鬼vs性犯罪者vsパラノイア、三つどもえの札幌グルメ大決戦-『パラノイア』

『パラノイア』 和田はつ子/2004年/215ページ 春休みの中学校の教室で血まみれの男女の教師の死体が発見された。現場に残されていたのは、血で描かれた星型の印と、瞳を血で塗られたステゴサウルスの画だった。その後、被害者のふたりはインターネットを使…

変質者、凶悪犯罪者の独白を聞き続けた刑事が一線を越えるまでの連作集-『死体でも愛してる』

『死体でも愛してる』 大石圭/2020年/288ページ 台所に立っていると落ち着く。料理をすると心が凪いでいく。だからわたしは、最愛の夫が死んだ今日も包丁を握る。「彼の肉」で美味しい料理を作るために。日増しに美しくなる娘に劣情を抱く父親、コンビニ店…

三代目・明智小五郎(と小林老人)が数々のアダルティな事件に挑む。人命失われ過ぎで名探偵感が…-『乱歩R』

『乱歩R』 江戸川乱歩(原作)、保志一蔵(ノベライズ)/2004年/350ページ 日本ミステリー界に金字塔を打ち立てた江戸川乱歩の世界が現代によみがえる!名探偵の才能を受け継いだ三代目・明智小五郎が、幼なじみの堀越刑事や初代明智小五郎の助手・小林少年だ…

映画版の監督・鶴田法男自身を語り手に据え、モキュメンタリー感を増した大胆ノベライズ-『POV~呪われたフィルム~ 赤いコートの女』

『POV~呪われたフィルム~ 赤いコートの女』 鶴田法男、酒巻浩史/2012年/248ページ ある番組に送り主不明の動画が送られてきたことをきっかけに、2人の若手人気女優のまわりで次々怪現象が起きる。そして番組ディレクターが謎の失踪。のこされた映像に映…

人が住む場所には霊も棲む。‟見える人”視点の怪談エッセイ-『たてもの怪談』

『たてもの怪談』 加門七海/2024年/272ページ 元祖たてもの怪談。加門七海の場所にまつわる最恐怪談実話。 「建物」にまつわる怪しい話が満載の怪談実話集。自身の引っ越しにまつわる不思議な話やオカルト的蘊蓄満載の「引越物語」、自宅での恐怖体験、訪…

必ず4度ダマされる、なんて言われたら過剰に身構えてしまうじゃないですか-『四段式狂気』

『四段式狂気』 二宮敦人/2014年/256ページ 女子高生のマユリはストーカーに悩み、親友に相談する。マユリを守るためにリョウタは身辺警護を始めるが、2人の行動はなぜか噛み合わない。やがてマユリは犯人に辿り着き、衝撃の真実が明らかになる。しかし、…

魔女関係なさすぎるよ! どうなってんの!?-『魔女調伏師は闇に笑う 禁忌の魔術』

『魔女調伏師は闇に笑う 禁忌の魔術』 篠原美季/2016年/272ページ 金髪碧眼の美青年・理人は、現代にも存在する「魔女」の悪事を取り締まる魔女調伏師だ。行方不明の前任者の足取りをつかんだ理人は、旧友で臨床心理士の玲李を誘い、長崎の離れ島へ調査に…

金髪碧眼の魔女退治専門家が、一介の刑事にネチネチ厭味を言い放つオカルトミステリ-『魔女調伏師は闇に笑う』

『魔女調伏師(ヘクセンバナー)は闇に笑う』 篠原美季/2016年/258ページ ニコラス・理人・リューディガーは金髪碧眼の美青年。見た目は異国の王子様だが、中身は傲岸不遜な“魔女の専門家”だ。旧友の臨床心理士・都月玲李を訪ねたリヒトは、レイがある殺人事…

不幸体質の少年が過ごす、オカルトで甘酸っぱい夏休み。王道展開と癖のあるキャラが魅力-『山内くんの呪禁の夏。』

『山内くんの呪禁の夏。』 二宮酒匂/2016年/232ページ 小学六年生の山内くんは生まれもっての災難体質。昔そんな彼にお守りをくれたのは、口から火を吹く不思議な子・紺だった。「おまえに見せてやるよ。あっち側の世界を。隠り世を」紺と再会した山内くん…

小説版は貞子が飛び出さないぶん、せめて物語としての深みが欲しかった-『貞子 3D ――復活』

『貞子 3D ――復活』 藤ダリオ(著)、鈴木光司(原作)、藤岡美暢・英勉(原案)/2012年/229ページ 茜が教える女子高では、見ると死ぬという「呪いの動画」の噂が広がっていた。遺体に手の形の痣が残された不審死が続くなか、ついに茜の生徒も不可解な死を遂げる…

轢かれた元カレを無視してデートに向かう、酷い主人公が酷い目にあう酷い話-『今日の別れに』

『今日の別れに』 赤川次郎/2003年/255ページ 押しに弱く、彼氏の坂西と別れられず困っていた歩美。今日こそはと坂西に会いに行く途中で、憧れの先輩・南田からデートの誘いの電話が入った。有頂天になった歩美がその勢いで坂西を強く拒むと、傷ついた坂西…

微妙な回をノベライズされても微妙な小説にしかならないという自明の理-『世にも奇妙な物語 小説の特別編 赤』

『世にも奇妙な物語 小説の特別編 赤(グール)』 武井彩、旺季志ずか、相沢友子/2003年/245ページ 「こんなはずじゃなかったのに…」子供の世話に明け暮れる日常の中、人生の選択を後悔する主婦・明子。ある時、パソコンの画面上に見つけた見慣れぬアイコン…

2001年に書かれた暴走するAI小説。もっと景気よく暴走してくれ!-『あなたの待つ場所』

『あなたの待つ場所』 幸森軍也/2001年/361ページ 永田培朗は大学時代の友人・柳原、桐島と設立したソフトハウス「プロメテウス」でプログラマをしていた。企業相手のメンテナンスを日常業務としていたが、最大の目標は、自己適応能力と自己複製能力を兼ね…

珍作「夜汽車の男」が光るが、4編中3編がコメディなのはバランス的にちょっと…-『世にも奇妙な物語 小説の特別編 遺留品』

『世にも奇妙な物語 小説の特別編 遺留品』 勝栄、中村樹基、橋部敦子、山内健司/2002年/254ページ さえないサラリーマン・井上が、社用で訪れたのは、町全体でお笑いをする奇妙な町だった「おかしなまち」。不慮の事故で右腕を失った天才ピアニスト。復活…

歴史上のお偉いさんより市井のシリアルキラーのほうが興味沸くよねという話-『美しき惨殺者たち』

『美しき惨殺者たち』 桐生操/1999年/258ページ 人は時として途轍も無く残酷になれる。それは、どんな時代でも変わらない。血を求め、肉を刻み、魂を欲しがった“惨殺者”たち。大量虐殺、猟奇殺人、人肉嗜食など欲望のおもむくままに残忍な行為を犯す。神を…

アイデア自体は悪くないが、もっと面白くなりそうな「もったいなさ」が…-『世にも奇妙な物語 小説の特別編 悲鳴』

『世にも奇妙な物語 小説の特別編 悲鳴』 旺季志ずか、中村樹基、落合正幸/2002年/282ページ 素敵な恋に憧れる理沙が迷い込んだドラマのような世界とは…!?「ドラマティックシンドローム」。犯罪被害者の遺族が加害者に仇討ちをするTV番組、仇討ちショ…

ドラマ版では気にならないツッコミどころが目立ってしまうノベライズ-『世にも奇妙な物語 小説の特別編 再生』

『世にも奇妙な物語 小説の特別編 再生』 大野敏哉、高山直也、中村樹基、鈴木勝秀、落合正幸/2001年/282ページ 「友達登録」携帯電話に届いた不思議なメールに従い友達登録をした小百合。友達が沢山できはじめたのだが…。「株式男」一攫千金を夢見て株に…

最初の一編だけでじゅうぶんな玉石混淆オムニバス-『世にも奇妙な物語 小説の特別編』

『世にも奇妙な物語 小説の特別編』 鈴木勝秀、落合正幸、君塚良一、中村樹基、星護、相沢友子/2000年/318ページ 旅客機が雪山に墜落。生き残った美砂たち五人が山小屋で体験した恐怖の一夜とは…(雪山)。ある日、討ち入りを迷う大石内蔵助の足元に落ちて…

特攻カラスが人体を貫く! 予想は裏切らず期待は裏切る凡作-『死の鳥』

『死の鳥』 白土勉/2013年/326ページ 気鋭の動物行動学者でカラスを専門とする美紀のもとを、捜査一課の刑事・松岡が訪れる。住宅内で夫婦が白骨死体で発見された事件で、生き残った娘が「カラスに喰い殺された」と証言したらしい。あり得ないと否定する美…

思ってたのと違う! サスペンス展開重視の地味過ぎる超能力モノ-『扉のない部屋』

『扉のない部屋』 スティーヴン・ギャラガー/1994年/364ページ スイスの製薬研究所が極秘に開発した新薬“EPL”。イギリス人の青年ジムは、ある事故をきっかけに実験段階のEPLを注射されてしまった。その日からジムの身体と精神に恐ろしい異変が起こる。決し…

顔見せと設定紹介で終わってしまう第1巻。本領発揮は次巻で…-『モノノケ杜の百鬼夜行』

『モノノケ杜の百鬼夜行』 蒼月海里/2020年/208ページ 東京都台東区御森。またの名をモノノケ杜と呼び、御神木に巫女が嫁入りしたという伝説があった。その末裔の百目木一華は常世の者と心を交わし妖怪と暮らす少年。同じクラスに転校してきた藤谷潤は森に…

霧に覆われた事件の真相がテンポよく明らかになっていくSFアクション-『キリノセカイ Ⅱ.報復のサガ』

『キリノセカイ Ⅱ.報復のサガ』 湖山真(原作:平沼正樹)/2013年/347ページ 仙堂とミアは鏡子の壊れたオルゴールから小さなリングを発見する。それには重大な情報が秘められており、ふたりはさらに霧の世界の真相に巻き込まれていく。一方、東京の霧の底…

オーディオドラマのノベライズ。原作を聴けばいいような気がしないでもない-『キリノセカイ Ⅰ.キオクの鍵』

『キリノセカイ Ⅰ.キオクの鍵』 湖山真(原作:平沼正樹)/2013年/275ページ 突然、東京は原因不明の濃霧に覆われた。人々が視界を奪われたまま8年が過ぎたある冬の夜、タクシー運転手の仙堂は何者かに追われる少女ミアと出会う。仙堂は元刑事の勘に従っ…

霊能者様のおかげで娘が助かりました! というだけの話をどう楽しめというのか-『霊能者』

『霊能者』 髙橋三千綱/1993年/373ページ 心理学者の川島はロサンゼルスの霊能者から五歳の娘亜里の危険を予感させる不吉な霊視を受けた―。その直後、亜里の突然の失踪を知った川島は急遽帰国し、その行方を追うが…。闇の世界に引き込まれた少女救出のため…

ミッドサマーに起きた猟奇殺人事件と、女子高に潜むカルトの恐るべき真相-『聖女の肉』

『聖女の肉』 和田はつ子/2007年/215ページ ミドサマー・イヴに起きた第一の殺人。首を切断され、逆さに吊された少女の胃の中から中世ヨーロッパの祭典でよく飲まれた祝杯ラムズ・ウールの原料が発見された。第二の殺人では、死体の前に聖スウィズンを奉る…

B級、そしてエロチック。荒唐無稽なパルプホラーが集う驚異の部屋-『デス・ルーム』

『デス・ルーム』 行川渉(著)、デニス・バルトーク(原案)/2009年/184ページ 封印され、行方知れずとなった伝説の恐怖映画『ヒステリア』…。撮影された、通称「DEAD HOUSE」と呼ばれるセットは、まだウルトラ・スタジオのどこかに実在しているとい…

100リツイートされないと脳味噌が融ける! 相変わらずの近距離パワー型ナスティホラー-『#拡散忌望』

『#拡散忌望』 最東対地/2017年/320ページ ある高校の生徒達の噂。“ドロリンチョ@MW779”このアカウントからのツイートには要注意。晒された人は、頭の中身がどろどろに溶けて噴き出すんだって―。その噂は本当だった!晒された者はメッセージを拡散せよ。失…