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設定を一新したリブート版『呪怨』。一新しなくてよかった-『呪怨 終わりの始まり』

『呪怨 終わりの始まり』

大石圭/2014年/316ページ

臨時教員ながら学級担任として自分のクラスを受け持つことになった生野結衣。夢を叶え、喜びを噛みしめる結衣だが、クラスには不登校を続ける生徒―佐伯俊雄がいた。電話でも連絡がつかず、不吉な予感を覚えた結衣は俊雄の家に向かう。それが、彼女が体験する絶望的な恐怖の幕開けだとも知らずに…。「呪われた家」の恐怖を凄絶に描き、日本中に旋風を巻き起こした「呪怨」シリーズ最新作、最恐のノベライズ版!

(「BOOK」データベースより)

 

 設定を一新して作られたリブート版『呪怨』のノベライズ。『呪怨 白い老女』『呪怨 黒い少女』もそうだが、清水崇はまったく関わっていない。

 伽椰子、俊雄の佐伯一家が住む家には、19年前に山賀俊雄という少年が親に惨殺されるという事件が起きていた。つまり本作では、伽椰子たちも実は呪われた家の被害者でもあった…という設定である。俊雄の担任の女性教諭とその恋人が家に来て怖い目にあってサア大変という現代の話と、10年前に面白半分で家に入った女子高生たちが全滅する話の2つが並行して語られる。ぶっちゃけ10年前のエピソードはまったく要らないし、そんだけ人が死んでる家なら取り壊せよとしか思えない。諸悪の根源は「俊雄」のほう、という解釈は新しいが、まあそれだけである。登場人物が全員死ぬと分かっているので、逆に緊迫感が無いと言うか…。新しいガジェットとして「うずまき状の落書き」と「妙な歌」が登場しているが、ノベライズではこの2つはあまり活かせていない。

 過去のシリーズを知っている人間にはまったくもって物足りない内容で、「終わりの始まり」という副題もシリーズ自体へのネガティブな言葉に見えてしまう。あとがきの、著者の大石圭による伽椰子へのラブレターがいちばん面白かった部分かもしれない。

★★☆(2.5)

 

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