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ツボを押さえた展開ながら、キャラ造形は昭和な猟奇犯罪モノ-『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book1≪変身≫』

『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book1≪変身≫』

阿泉来堂/2023年/275ページ

第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞読者賞受賞作家の新境地!

札幌市近郊の町、荏原市で発生した女子大生殺人事件。遺体の首と両手は切断されて持ち去られ、現場にはフランツ・カフカの『変身』の一節が残されていた。その猟奇的な手口は5年前に発生した『グレゴール・キラー事件』に酷似しており、ほどなくして更なる被害者も現れる。グレゴール・キラーに相棒を殺された過去を持つ刑事、加地谷と新米刑事の浅羽は、事件の捜査を進めるうち、被害者の霊を目撃したという青年に遭遇する。最初は半信半疑な刑事たちだったが、青年の証言により新たな犠牲者が出たことを知り、逃走した犯人を追う。連続殺人鬼グレゴール・キラーは何故、現場に『変身』の一節を残すのか。被害者の共通点は何なのか。それらの謎を解き明かし、猟奇殺人犯へと迫る加地谷と浅羽が目にする事件の真相とは……。そして、謎の古書が導く物語は、さらなる事件とともに下巻へと続く。猟奇事件×スーパーナチュラルミステリー第一弾!

(Amazon解説文より)

 

 上記のあらすじには登場していないが、実質的な主人公は霊が見える能力を持つ青年・戸倉孝一である。連続殺人鬼グレゴール・キラーの被害者の霊を視た戸倉は死体の第一発見者となってしまい、グレゴール・キラーを追う刑事コンビ、加地屋と浅羽と知り合う。当然ながらは警察に霊の存在は認められなかったが、戸倉は再び殺人鬼の被害者の霊と遭遇してしまい、再び2人の元へ…というお話。

 フランツ・カフカの『変身』の一節を死体に残す殺人鬼、そこそこに猟奇的なシーンの数々、適度に挟まれるサプライズ展開など、ツボを押さえた展開で無難に楽しめるのだが、シリーズ1作目ゆえかガタガタな部分も目立つ。特に「初対面の相手を口説きにかかるナンパな若手刑事」「目先の犯人逮捕のことしか考えていない無能な警察上部」「はぐれものの主人公コンビをフォローする有能な美人刑事」「デリカシー皆無のチンピラ大学生」等、リアリティの無さ過ぎる登場人物たちの造形はいただけない。『ドーベルマン刑事』みたいな昭和の刑事マンガから何も進歩していない。中盤の依子に関するネタバレも、ラストに持ってきた方がよかったのではないかと思う。『変身』への言及もまったく足りていないし、真犯人の動機もサッパリ響いてこず、魅力がない。キャラクターについては次巻以降でもっと掘り下げてほしいところだが…。

★★★(3.0)

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