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受け継がれる意志と断ち切られる呪い。最終巻にふさわしいグランドフィナーレ-『BURN 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『BURN 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(上)』

内藤了/2019年/336ページ

数々の殺人の果てにテロをたくらむ組織「CBET」が狙っているのは、センターにかくまわれている天才的プロファイラー・中島保の技術。それ以外にも、彼らの求めるものがセンターに揃っている状況が発生していることに気付く猟奇犯罪捜査班。スヴェートのトップ・ミシェルの情報を探るなか、比奈子は培養された都夜の脳とあらためて対峙するためにセンターを訪れ…。大人気警察小説シリーズ第10弾、ついにクライマックス。

(「BOOK」データベースより)

 

『BURN 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(下)』

内藤了/2019年/240ページ

国際テロ組織「CBET」の目論見を阻止するために大きな覚悟を決めた猟奇犯罪捜査班の面々。彼らのアジトと思われる廃墟を突き止め現場へ向かおうとしたそのとき、捜査班をサポートしてきた田中管理官の車が路上で燃えているという情報が入った。そして廃墟でも火事が発生、現場では凄惨な殺人の痕跡が発見される。廃墟をあとにした比奈子は組織のトップ・ミシェルに拉致されて…。大人気警察小説シリーズ、ついに本編完結!

(「BOOK」データベースより)

 

 「藤堂比奈子」シリーズの本編最終巻(スピンオフはこの後も出ている)。今回の真犯人、そして『ZERO』から続く一連の事件の黒幕、それがバイオテロ組織CBET(スヴェート)のリーダー、ミシェルである。殺人犯の脳をコピーして無敵の戦士を作りだし、クローン人間を用いて永遠の生命を得る…SF小説の悪の組織じみた荒唐無稽な計画を実現するために、ミシェルとCBETは「最凶殺人鬼の脳」「脳のスイッチをONにする者・中島保」「ミシェルのクローン・児玉永遠」のすべてが揃う日本精神・神経医療研究センターを狙う。そして、この三者すべてに関わるキーパーソン、藤堂比奈子の身柄をも…。

 なんか話のスケールがデカくなり過ぎてるな~と前々巻くらいまでは思っていたのだが、この最終巻ではいい意味で「ラスボスの卑小さ」が描かれ人間味とリアリティが出てきた。猟奇犯罪捜査班の面々も、これまで「個性がないことが個性」だった清水刑事に見せ場が用意されていたり、ダメダメ後輩だった御子柴が普通に活躍したりと、その他の準レギュラーも含めて全員に漏れなくスポットが当たっており、最終巻にふさわしいシリーズ読者大満足の内容となっている。完全無欠のハッピーエンドとは言い難いが、希望の光もまた眩しい。人は死ぬ。必ず死ぬ。だが受け継がれゆく意志は消えない。もう何も言うことは無い。角川ホラー文庫の長期連載シリーズの中でも外れのない手堅さであった。

★★★★☆(4.5)

 

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