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刑事と検死官、仕事に誇り持つ2人が夫婦として暮らした数カ月。必読のスピンオフ-『サークル 猟奇犯罪捜査官・厚田巌夫』

『サークル 猟奇犯罪捜査官・厚田巌夫』

内藤了/2018年/256ページ

ある事件を経て新婚生活をスタートさせた厚田巌夫と石上妙子。警察官一家惨殺事件が発生、二人は駆け出し刑事と新鋭検死官というそれぞれの立場から事件に向き合うことになった。妙子のお腹が大きくなり産休も間近、二人が本当の夫婦になろうとしていた矢先の出来事。そして凶器の情報を捜査中の厚田のもとに妙子が病院にいるという連絡が入り…。「猟奇犯罪捜査班」の人気登場人物、結婚当時の過去を描いたスピンオフ作品!

(「BOOK」データベースより)

 

 シリーズのバイプレイヤー・ガンさんこと厚田巌夫、死神女史こと石上妙子の夫婦時代に起きた事件を描くスピンオフ。プロローグの時点でこの2人に架せられたものの大きさにビビってしまうほどだし、読者はこの2人の結婚生活が破局することを知っているので不穏極まりない。
 警察官一家猟奇殺人事件が発生し、厚田刑事は凶器の線から同僚刑事と捜査を進めることに。妊娠9か月の身でもなお検死官として現場に立つ妻を気遣う厚田だが、2人の運命を大きく変える出来事が起きてしまう。

 一般的な結婚生活とは縁遠い2人だが、仕事に誇りを持ちつつお互いを信頼し合う様子は見ていてすがすがしく、リスペクトに値する関係性だ。本書は『パンドラ 猟奇犯罪検死官・石上妙子』等のシリーズ作とのつながりが非常に密接なうえ、劇中で描かれる“魔法円殺人事件”は迷宮入りになってしまい、真相が描かれるのは『COPY 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』になるので、この1冊だけでは消化不良な印象を受けるかもしれない。心理描写・情景描写に優れ、シリーズ未体験の読者にも読みやすいと思われる作品なので、ちょっと惜しい気もする。シリーズファン向けのスピンオフとしてはこれ以上のものは無いだろう。

★★★★(4.0)

 

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