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連続少女殺人犯“芸術家”を追い詰める、検死官&法医昆虫学者!-『パンドラ 猟奇犯罪検死官・石上妙子』

『パンドラ 猟奇犯罪検死官石上妙子』

内藤了/2017年/336ページ

検死を行う法医学部の大学院生・石上妙子。自殺とされた少女の遺書の一部が不思議なところから発見された。妙子は違和感を持つなか、10代の少女の連続失踪事件のことを、新聞と週刊誌の記事で知る。刑事1年目の厚田厳夫と話した妙子は、英国から招聘された法医昆虫学者であるサー・ジョージの力も借り、事件の謎に迫ろうとするが…。「猟奇犯罪捜査班」の死神女史こと石上妙子検死官の過去を描いたスピンオフ作品が登場!

(「BOOK」データベースより)

 

 シリーズのレギュラーである死神女史こと石上妙子の過去を描いたスピンオフ。おやっさんキャラの厚田巌夫刑事、そして変態虫マニア法医昆虫学者のジョージと出会うきっかけになった、とある連続少女殺人事件についての物語である。というかジョージと石上女史、前の巻で思っていた以上に濃い関係であったことは明かされていたが、ここまでの因縁があったとは。細かい部分は違えど、この2人の比奈子と野比先生との関係性と共通するものがある。今後のシリーズでその辺の対比もされるのだろうか。

 ストーリー自体はこの巻だけで完結しており、シリーズ他作品の知識はまったく不要ながら、前巻までを知っていればさらに楽しめるという理想的なスピンオフ。連続少女失踪事件の謎が妙子の観察眼、シデムシの食性を明かすジョージの研究などから少しずつ明らかになり、追い詰められた真犯人“芸術家”は、自身の予定通りに妙子と対峙する…。グロテスク描写を挟みつつ、入念な調査によって真相が解明されていく流れは安定の面白さ。とは言え、本書のクライマックスは「芸術家」との決着後のエピソードにある。パンドラの甕に残されたそれが、本当に希望だったのかはまだわからないのだけれど。

★★★(4.0)

 

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