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連続バラバラ殺人の‟欠片”から完成したパズルが、ただ1つの真実を指し示す…!-『PUZZLE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』

『PUZZLE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』

内藤了/2020年/336ページ

年の瀬が迫り、慌ただしくなる東京駅。新人女性警察官の恵平は、置き引き犯からスーツケースを押収する。中には切断された男性の胸部がー翌日から、都内各所で遺体の一部が次々に発見される。冷凍状態の男性の胸部と足、白骨化した女性の手首、付着していた第三者の血痕…被害者は一体誰なのか?遺体発見のたびに複雑化する事件を、青年刑事・平野と恵平が追う!過去と現代の猟奇犯罪が重なり合う、シリーズ第3弾。

(「BOOK」データベースより)

 

 年末の東京駅。新人警察官の恵平は、自首してきた置き引き常習犯の老人からスーツケースを受け取る。だがその中から切断された男性の胸部が現れ、東京駅交番は大騒ぎに。胸部は冷凍されたのちに機械で切断されているようだった。そして都内各所で男性の足、そして頭部と遺体の一部が次々と発見される。さらには白骨化した女性の手首まで発見されたうえ、手首が包まれていたリュックには異なる型の大量の血液が付着していた。バラバラ殺人、白骨死体、謎の血痕。そして恵平が偶然に受けた、行方不明になった少女の捜索依頼。一連の事件がひとつに合わさったとき、予想外の真実が浮かび上がる…。

 

 このシリーズは犯人を当てるミステリというよりは、事件の調査が進み、全貌が明らかになっていく過程自体を重視して描いている印象。警官や刑事、鑑識といった警視庁の面々はもちろん、靴磨きのペイさん、ホームレスのメリーさん、「うら交番」の柏村巡査といった人々の協力を得ながら、恵平が真実に近づいていく様は相変わらず読みごたえがある。人情系の警察ドラマとスリリングな猟奇犯罪サスペンスの調和ぶりはさすがである。いくつかの謎は最後に明かされる「真犯人」の感情的な行動によるものだったりするのだが、真犯人の心情にかなり寄り添った展開なのでアンフェアさは感じない。冷酷無惨なバラバラ殺人、猟奇的な加害者と哀れな被害者。その‟おもて”と‟うら”が反転したとき、パズルのピースはかちりとはまる。良い構成だと思う。プロローグで明かされる柏村巡査の過去、エピローグで明かされる噂がそれぞれ不穏さを醸し出していてこれまた良い。

★★★★(4.0)

 

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