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直球の警察ドラマに「この世のものならざる交番」というアクセントが映える-『MASK 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』

『MASK 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』

内藤了/2019年/320ページ

東京駅のコインロッカーで、箱詰めになった少年の遺体が発見される。遺体は全裸で、不気味な面を着けていた――東京駅おもて交番で研修中の堀北恵平は、女性っぽくない名前を気にする新人警察官。先輩刑事に協力して事件を捜査することになった彼女は、古びた交番に迷い込み、過去のある猟奇殺人について聞く。その顛末を知った恵平は、犯人のおぞましい目的に気づく! 「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズ著者による新ヒロインの警察小説、開幕!

(Amazon解説文より)

 

 東京駅おもて交番で研修中の新人警官、堀北恵平(ほりきたけっぺい)。女性にしてはちょっと変わった名前と、狭い空間フェチというやや特殊な趣味を持つ恵平だが、まっすぐな正義感と他人に親身になって寄り添える人情の持ち主である。そんな彼女が先輩にして、同じく名前にコンプレックスを持つ平野腎臓刑事とともに東京駅とその近辺で起きる事件を解決していくシリーズである。

 コインロッカーの中から発見された、箱詰めにされた少年の死体。顔には不気味な面が付けられ、身体には精油が塗り込まれていた。しかも防犯カメラには、大きな箱を運び込むような怪しい人物は映っていなかった。いったい誰が何のために、どうやって遺体をコインロッカーに運び込んだのか? 少年が付けられていたマスクが、伎楽で使われる「異形」という面であることを知った恵平と平野だが、それ以上の捜査は遅々として進まない。そんな折、「東京駅うら交番」の柏村巡査が彼らにあるアドバイスを与える…。

 

 不可解で猟奇的な犯罪に対し、数少ない手がかりから犯人像を追い詰めていく直球の警察ドラマを堪能できる。同僚を含む東京駅で働く人々、犠牲になった少年の友人、市井の民間人やホームレスに至るまで、あらゆる人々との「縁」を頼りに少しずつ真相に近づいていく展開が巧みで非常に読ませる。キャラクターも活き活きとしているし、この世に存在しない「うら交番」というちょっとしたオカルト要素も無理なくハマっており、新シリーズの1作目としては完璧である。良い。

★★★★(4.0)

 

www.amazon.co.jp