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被害者を手厚く葬る「エンゼルケア殺人事件」。矛盾する犯人像をベテラン刑事の勘が暴く!-『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book2≪怪物≫』

『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book2≪怪物≫』

阿泉来堂/2023年/237ページ

『ナキメサマ』『贋物霊媒師』の著者の新境地。古書を巡る猟奇犯罪を追う!

先のグレゴール・キラー事件から二か月。その功績を認められ、刑事課強行犯係特別事案対策班(通称 『別班』)に配属された加地谷と浅羽が新たに捜査に当たるのは、帰宅途中に殺害された女性の遺体が、まるできれいに清められたかのように安置された『エンゼルケア殺人事件』。再び道警本部捜査支援分析室の天海伶佳らとともに捜査を進めるうちに浮かび上がってきたのは、十五年前に発生した少女殺人事件と、死亡した少女の遺族である一人の青年の存在。そして、数年おきに発生している女性の不審死事案だった。伶佳の同僚であり心理分析官の御陵伽耶乃は、プロファイリングによってその青年、青柳史也こそが殺人犯であると睨む。しかし加地谷は、青柳史也がプロファイリング通りの凶悪な連続殺人犯だとはどうしても思えなかった。次第に明らかになってくる兄妹の秘密。そして、メアリー・シェリー作の『フランケンシュタイン』に心を囚われる史也と、彼を慕う一人の少女。少女の身に危険が迫るとき、二人の刑事はその手に銃を握り……。上巻に続き、奇妙な古書に導かれた殺人犯を二人の刑事が追う。猟奇事件×スーパーナチュラルミステリーの後編!

(Amazon解説文より)

 

 前作『バベルの古書 ≪変身≫』の直接的な続編で、今回は『フランケンシュタイン』がモチーフとなっている。両親を亡くし、親戚の家に引き取られた茜という少女が、兄に向けて書いた手紙。被害者の遺体が美しく安置された「エンゼルケア殺人事件」を追う、加地谷と浅羽の刑事コンビ。この2つの物語が並行して語られ、そしてクライマックスに向けて収束していく手際は見事。なぜ犯人は遺体を手厚く葬ったのか? なぜ殺人を繰り返すのか? …という事件の大きな鍵となる謎が解決したあとも、エピローグ等で新たな謎が語られており、続きが気になる構成だ。

 ただ、テンプレが過ぎるキャラクター造形については前巻の時点で難儀なものを感じていたのだが、残念ながらこの巻ではそれが悪化している。主人公として内面描写が多めな加地谷はともかく、新キャラのボクっ子プロファイラーなどは酷いとしか言えず、殺人現場で刑事たちが漫才を繰り広げる場面ははっきり言って読むに堪えない。どうもこの作者は会話文になると筆が滑りまくっている印象がある。これがアニメかゲームならあまり気にならないのだろうが、「古書」をテーマにしたミステリにふさわしいかと言われるとはなはだ疑問。

★★★(3.0)

 

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