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『ジョジョ』ばりにハイテンションな混成種のセリフのみが頭に残る珍作-『混成種 -HYBRID-』

『混成種 -HYBRID-』

カシュウ・タツミ/1994年/293ページ

それは、天才が生み出した一つの発明から始まった…。学界から異端視されている黒田博士の発明「金属植物」は、画期的であるにもかかわらず、学界やマスコミから全く相手にされなかった。―なんとかして世の人々に認めさせたい。黒田は、金属植物「チップ」を代用神経として使うことを思いつき研究を重ねた。実験が進むにつれ、黒田は妄想と狂気のはざまに入り込み、ひとつの想いに捕らわれていった。そして…。衝撃的なテーマで新たな恐怖を描いた異色のホラー。第1回日本ホラー小説賞佳作作品。

(「BOOK」データベースより)

 

 天才科学者の黒田は、自らが生み出した金属植物を代用神経として使う実験を行っていた。親友の医師・林が運転する車に搭乗中、事故に遭い半身不随になってしまった黒田だが、自らの身体を実験台として金属植物を脊髄に埋め込む。わずか一カ月後、完全に回復した黒田はノーベル賞ものだと喜んでいたが、大方の予想通り意思を持ち始めた金属植物に身体を乗っ取られて大変なことになるのであった。

 天才科学者が天才的な発明をするという安易な導入、主要登場人物が黒田と林、黒田の妹・那由多の3人のみというコンパクトさも気になるが、中盤から意志を持ち始めた金属植物のセリフがいくらなんでもテンション高すぎて苦笑してしまう。「悪いが今度は本気でやらせてもらうぞォォ!!」「だがなァァッ、これで勝ったと思うなよォォォッ!!」「さあ、逃げろ逃げろ逃げろォォォォッッ!! 鬼が貴様を捕まえてしまうぞゥゥゥゥッ!!」「軽い、軽いぞ! 身体が軽いィィィィッ!!」「無駄だ無駄だ無駄だァァァァッ!!」。これではまるで『ジョジョの奇妙な冒険』である。三部終盤のディオ。エピローグの趣味の悪さは嫌いではないが、そこ以外に評価すべき部分は無い。

★★(2.0)

 

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