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別れた恋人の日記には、死後もなお恨み言が書き綴られていた。正統派のオカルトミステリ-『かげろう日記』

『かげろう日記』

吉村達也/2003年/207ページ

人は、いったい何のために日記を書くのだろうか?大学時代の恋人・内藤茜を捨てた町田輝樹のもとに、差出人不明のノートが郵送されてきた。表紙には茜の筆跡で『かげろう日記』。だが茜は、輝樹にふられた十ヵ月後に、不幸な事件で死んでいる。日記は生前の彼女が、やがてくる悲劇的運命も知らず、忘れられぬ輝樹への思いを綿々と書き綴ったものだった。それを読みはじめた輝樹は、日記が死の日に近づくにつれ、茜の存在を体感する恐怖に襲われていく。

(「BOOK」データベースより)

 

 学生時代からの恋人だった茜を捨て、就職先の後輩である仁美と付き合い始めた輝樹。茜は暴漢に殺されてしまうが、茜の存在が重荷になっていた輝樹はどこかホッとした思いだった。だが半年後、差出人不明の郵便で「かげろう日記」と題された大学ノートが輝樹の元へ届く。それは生前の茜が書き残した日記だった。
 いったい、誰が何のためにこんなものを送って来たのか? 訝しみながら日記を読む輝樹の目に飛び込んできたのは、延々と書かれた彼への恨み言。戦慄する輝樹だが、読み進めるうちに恐ろしい事実が発覚する。茜が殺された6月16日の日記には「私は殺されました」との記述。そして、その後もさらに日記は書き続けられていたのだ…。 

 この「かげろう日記」を送ってきたのは誰なのか? 茜の死後の日記を書いているのは誰なのか? という謎がキモとなるオカルトミステリである。伏線もしっかり張りつつ、ミスリードになりそうな箇所はあえて潰していくフェアなスタイルなので、真相を推理しながら読み進めてみてはいかがだろうか。

★★★(3.0)

 

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