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執念深きヘビのうらみ! ヘビ少女にヘビおばさんが美少女の首筋を這いまわる!-『こわい本1 蛇』

『こわい本1 蛇』

楳図かずお/2021年/320ページ

幸せに暮らしていた沼田家の姉妹を、突然の悲劇が襲った。姉が、手足が動かなくなる原因不明の病に倒れたのだ。献身的に看病する妹だったが、姉の奇怪な行動に不審を抱き、姉の正体は蛇で、自分を殺そうとしているのではと怯えはじめる――違和感がぬるりと忍び寄る「うろこの顔」ほか、映画化された「蛇娘と白髪魔」や「口が耳までさける時」の、蛇の恐怖譚3篇を収録。語り下ろし著者インタビューなど豪華巻末企画も必読!

(裏表紙解説文より)

 

 朝日ソノラマで出ていた『こわい本』シリーズを再編集した新装版。デジタル修正が行われているほか、巻末企画として楳図かずおの新規インタビュー、過去のインタビューや解説等をまとめた「楳図かずおのこわ~い部屋」が各巻に収められている。

 

 第1巻のテーマは「蛇」、それも楳図かずおの漫画では手を変え品を変えといった感じで頻出するヘビ女の漫画である。
 「うろこの顔」-作者・楳図かずおの仕事場に沼田陽子という少女の手紙が届いた。手紙には優しかった陽子の姉・久留実の手足がある日突然動かなくなり、はいつくばって移動するようになったり、いきなり陽子の首を絞めたりといった奇行を繰り返すようになる経緯と書かれていた。さらには、久留実の身体から剥がれたといううろこまで同梱されており…。手紙を読んだ楳図かずおの妹・楳図魔子(美人)は、手紙に書かれたいた住所へと向かい、そこで何者かに襲われていた陽子と出会う。陽子は魔子を沼田家の屋敷へと招待するが、そこには想像を絶する恐怖が待ち受けていたのだった。

 美しく優しかった姉が変貌していく恐怖、自分の周りのあらゆるものがヘビに見えてしまう恐怖、そして自分自身がヘビになってしまうという恐怖。話としてはところどころ破綻してはいるのだが、陽子を襲う終わりの無い不幸の連続がとにかくすさまじい。背景・効果・書き文字のすべてが読者をビビらせる方向で完璧に仕上げられているのも素晴らしい。
 「蛇娘と白髪魔」-「うろこの顔」「赤んぼ少女」「紅グモ」の3作品をミックスした映画『蛇娘と白髪魔』のコミカライズ。当然ながら以前見たようなシチュエーションが続出する。「口が耳までさける時」-貧しい家で過ごしていたさくらは、お金持ちの夫人に引き取られることに。だが夫人の正体はヘビ女であり、冬眠に備えてさくらを丸呑みにしようとしていたのだ! 貸本時代に発表され好評を博し、以降の様々なヘビ女テーマの作品に繋がっていったとのこと。
 巻末企画「楳図かずおのこわ~い部屋」では映画版『蛇娘と白髪魔』の解説、作者の実体験を語る「楳図かずおのこわい話」、録りおろし作者インタビュー「あとがきみたいなあとがたり」を収録している。

★★★(3.0)

 

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