『赤んぼう少女 楳図かずお作品集』
楳図かずお/1994年/452ページ
屋根裏部屋に幽閉された悪魔の子タマミの、養父への激しい復讐心と、その娘葉子に対する嫉妬心への恐怖を描く表題作。呪われた家系に生まれたネコ少女の数奇な運命を描いた「黒ねこ面」他、傑作選。
(Amazon紹介文より)
角川ホラー文庫には同作者の『こわい本』シリーズ11巻が出ているが、被っている収録作は「黒いねこ面」のみ。楳図かずお入門編としては無難な1冊。
醜い少女・タマミが妹にさんざん嫌がらせをする「赤んぼう少女」。不気味なビジュアルのタマミは子供にとってはトラウマものだろうが、大人になって読み返すとその孤独な生涯がひたすら哀しい。あと異様なまでの行動力がスゴい。余談だが他の作品集だと「赤んぼ少女」で収録されていることが多い。
先祖の祟りでネコにされかけたりネコに殺されかけたりするかわいそうな少女を描く「黒いねこ面」は、ただもうひたすらな理不尽さがこわい。巻末の楳図かずおと大槻ケンヂの身もフタもない対談によると、楳図先生自身は理不尽な祟りとかはまったく気にしてないし怖くもない、とのこと。「怪談」は雪山で遭難した一行が、眠気を覚ますために怪談を語り合うというオムニバスで、ぶっちゃけ「雪女」のアレンジものである。楳図先生は短編集『恐怖』でもたっぷりページを割いて雪女の話を描いていたし、そうとうこのモチーフがお好きらしい。
★★★(3.0)