『こわい本11 猫』
楳図かずお/2022年/480ページ
猫嫌いの城主の長男・秀信が残虐な仕打ちを繰り返す「猫面」。加賀の領主は娘の雪姫を毒殺。姫が最期に彫った猫の置物が、現代の加賀家末裔の庭から掘り起こされると異変が……「ねこ目の少女」。城主・柴田勝之進は医師の竹庵に腹を立て、一家全員を殺害。竹庵の飼い猫のクロは柴田家への報復を誓う。時を越え、クロの復讐劇が始まる「黒いねこ面」。書籍収録初の「黒ネコクロベエのゆいごん」の計4作を収録したスペシャル編集版。
時を超え、猫たちの復讐が始まる――
「こわい本」シリーズ初登場、“猫”の巻!
(Amazon解説文より)
「猫面」-貝森城の主・正信は大変な猫嫌いで、猫を見かけてはいたぶって殺すという残忍さであった。彼に殺された猫のたたりか、跡継ぎであるたったひとりの息子・秀信は醜い猫のような容貌で生まれてきた。秀信は正信とは違い、常に周りに猫をはべらせていたが、猫を粗雑に扱う者がいれば自ら熾烈な拷問を行うという残忍さは父親譲りであった。美しい娘・梓を見初めた秀信は、その恋人である文吾を拷問し、顔を引き裂いて猫面に変えてしまう…。残酷さ、痛々しさは『こわい本』収録作の中でもトップクラスで、鬼気迫る絵のタッチがまた凄い。必読である。
「ねこ目の少女」-猫が嫌いな加賀家の殿様のもとに、双子の女の子が産まれる。ふたりは花姫・雪姫と名付けられたが、雪姫の顔は猫にそっくりだったため、父である殿様に疎まれていた。殿様の命で毒を盛られた雪姫は、作りかけの猫の像を抱いて死んでしまった。そして現代、加賀家の血を引く双子の姉妹・ひとみと木の実は仲良く暮らしていたが、猫の像を拾ったことをきっかけに、ひとみは猫のような姿になっていき…。「猫面」と似たような冒頭だが、少女漫画ゆえあちらのような残酷さはない。むしろ猫目の少女が可愛らしかったりする。
「黒いねこ面」-安政四年。横暴な殿様・柴田勝之進は、間違えて毒を調合してしまった医者の竹庵を手打ちにし、その飼い猫のクロも惨殺する。化け猫となったクロは勝之進の母親に化けるが、仇を取ることなく討ち取られてしまう。時は流れ現代、柴田医師のもとに産まれた赤ん坊は猫そのものの姿をしていた。驚いた柴田医師は猫をこっそり他の赤ん坊と取り換え、自分の娘・えみ子として育てる。えみ子は美しく育ったが、ある日、柴田医院に猫そっくりの少女がやって来て、普通の顔に整形手術してほしいと頼み込む。当然この少女の正体は柴田医師の本当の娘であり、錯乱した柴田は槍でえみ子を突ついたりして大変なことになるのであった。
「黒ネコクロベエのゆいごん」-作者の飼い猫、クロベエが死の間際にテレパシーで驚くべき事実を伝えてくる…という絵物語。単行本初収録のレアトラック。
角川ホラー文庫版『こわい本』のオリジナル巻。「黒いねこ面」は『赤んぼう少女 楳図かずお作品集』に収録済みだったりする。巻末企画は綾辻行人による特別寄稿。
★★★☆(3.5)

