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実話怪談が散りばめられたホラーミステリ連作。表紙にたがわぬ怖さだが、主人公コンビに時にはほっこり-『首ざぶとん』

『首ざぶとん』

朱雀門出/2010年/277ページ

華道教室に通うまりかの先生・嵯峨御流正教授である龍彦の趣味は、なんと怪談蒐集。最初は引き気味のまりかだったが、龍彦の優しげな雰囲気に惹かれ、怪談蒐集の手伝いをすることとなる。ある日まりかは、「おざぶ…おざぶ…」という声が聞こえる穴の噂を聞く。早速龍彦に報告しその穴を調べに行くが、そこで2人は、奇妙で恐るべき怪異に巻き込まれてしまう―。新たな怪談の旗手が描く、日常に潜む怪異の世界。連作短編集。

(「BOOK」データベースより)

 

 表紙が怖すぎるが、内容はまりか&龍彦のコンビが京都の街角で起きる怪事件を解決したりしなかったりするという連作モノで、けっこうライトな雰囲気だったりする。時おり実話怪談風のエピソードが挟まれるのは作者らしいが、ストーリーの本筋にまったく関係ないものがほとんど。ただエピソード自体が面白いので、話の腰を折るようなマイナス点にはなっていない。
 表題作「首ざぶとん」は首なし死体にまつわる呪いの地の話。「トモダチ」は携帯電話を通じて悪意をばらまく存在の話。「ひじり」は脈絡があるんだかないんだかわからないが猛烈に怖い“放火”と“工場作業員”の話。「羊を何度も掘り出す話」は神として祀られている“何か”に関する話。登場する怪異はその目的や行動はなんとなく掴めるものの、正体や来歴については不明のままに終わってしまう。これも実話怪談的というか、怪異に理屈や理由を付けず「そういう存在」として描くという姿勢が徹底されている。ユニークな作風で主人公コンビも魅力的、かつしっかり怖いという珠玉の1冊。

★★★★(4.0)

 

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