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各地の山に遍在する「白い服の女」の存在自体が怖い-『怪談狩り 山の足音』

『怪談狩り 山の足音』

中山市朗/2022年/256ページ

実家の改築工事の最中、次々に発覚する家の奇妙な造りと、2つ目の仏壇の謎が恐ろしい「家の整理」。TV番組のため、都内の心霊スポットを訪れた撮影スタッフが遭遇した怪異と後日談に戦慄する「心霊動画」など日常に潜む恐怖に加え、怪異収集家である著者が厳選した山の怪談を収録。遭難した男性が出会った顔の印象のない男、夜の山道で何度も追い抜く同じ女性の後ろ姿――山という“異界”を堪能できる本当に怖い実話怪談集。

(Amazon解説文より)

 

 サブタイトル通りの「山」に関する話は後半の4分の1程度だが、ラストの4話「吉野の古家」から始まる山奥の民家についての一連の怪談は本書の白眉。ダム建設現場の食堂の仕事を紹介されたFさんは、古い木造平屋建てに住むことに。ボロとは言え住めないことはない状態だったが、窓の一部が木造だったのでアルミサッシに替えてもらうことにした。が、作業を頼んだ業者や表具店が次々と急病や事故に見舞われ…。この話のほか「屋根の女」「山女」「山の神」といった怪談にそれぞれ“白い服を着た女”が登場するのだが、山ではポピュラーな現象なのだろうか。
 山の怪談以外ではささやかな怪異について語られたものが多いが、亡くなったはずの祖父が祖母を看取りに…という典型的なジェントル・ゴースト・ストーリーかと思いきや、ラストの一文で一気にわからなくなる「おじいちゃん」、死者のダイレクトな悪意が凄い「助けてくれた男」、めちゃくちゃ怖いのに正体を知るとほっこりしてしまう「真夜中の漁港で」辺りは印象深い。

★★★(3.0)

 

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