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民間伝承メインゆえほのぼのさすら漂うが、後半につれ恐怖度がヒートアップ-『怪談狩り あの子はだあれ?』

『怪談狩り あの子はだあれ?』

中山市郎/2019年/272ページ

生駒山の池で家族が遭遇した怪異が、時を超えて繰り返される「拉致された?」、高層マンションの窓に張り付き、ニタッと笑っては落ちていく男が不気味な「二十二階の男」、祖父母の家で少女が出会った赤い着物姿の子ども、祖父が見せた光景に震撼する「蔵の中」、その家に住んだ人は必ず亡くなるという物件の秘密をつづる「不動産」など76話。伝承の断絶のせいか、狐狸妖怪の仕業か?土地や家にまつわる心底怖い怪談実話集。

(Bookデータベースより) 

 

 他の「怪談狩り」シリーズと比べると民間伝承、妖怪にまつわる話が多めなのだが、キツネに化かされて温泉の代わりに肥溜めに浸かっていただの、ぽんぽこ山に行ったらタヌキに化かされただの、どうもほのぼのとしてしまってまったく怖くない。前半収録の話はその傾向が強いが後半は恐怖度がアップ、怪談和尚・三木大雲が語る「友人への供養」はゾっとさせられる。表題作「あの子はだあれ?」も子供が見る夢のような不条理さが印象深い。「牛の首」は同名の有名な怪談とはまったく違う話だが、シュールなビジュアルイメージがなんとも不気味だ。

★★★(3.0)

 

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