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嘘つきエピソード大解放! 虚飾と欺瞞にまみれた不実な人々のオンパレード-『現代百物語 不実』

『現代百物語 不実』

岩井志麻子/2017年/224ページ

「自殺した彼女の人生を代わりに生きています」――滔々と壮絶な体験を語る作家志望の女。傷害事件にまで発展した気まぐれの作り話。芸人が体験した3つの謎と符合する実際の陰惨な話。息を吐くように嘘をつき、偽りに偽りを重ねた不実な人々は、やがて虚妄で邪悪な世界に巻き取られていく……。人の語る「真実」とは、その真贋の証明がどれほど難しいか。真実と虚偽のあわいに生じた怪異譚を99話収録した現代怪談第9弾!

(「BOOK」データベースより)

 

 不実な人々――要は平気で噓をつく人たちにスポットを当てた、安定と信頼の第9巻。というか、このシリーズはどの巻も嘘つきがワンサカ出てくるので、他の巻と比べてそういう話が多いのかどうかは自信がないが、印象に残るのは確かに嘘つきたちのエピソードである。
 「第十五話 嘘つき風俗嬢」のような現実逃避の嘘、「第十三話 終わらないアリバイ工作」の話し手のような意図しない嘘、「第七十六話 帰ってこない弟」のような(自衛のためとは言え)悪意の嘘。いろいろな嘘のオンパレード。嘘話の典型的パターンかと思いきや不気味で後味の悪い結末を迎える「第八十二話 本当の話」、誰のどの話が嘘なのか読者をも混乱させる「第二十三話 母子の嘘実」のような変わり種もアクセントになっている。不実、と言うならば、3つの怪談が現実に即した厭なエピソードへと転化する「第五十二・五十三話 三つの謎①②」の語り手がその極北のような気もする。

★★★(3.0)

 

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