『ホーンテッド・キャンパス 死者の花嫁』
櫛木理宇/2013年/352ページ
大学生が一番ときめく季節、夏。雪越大学オカルト研究会では、夏合宿をすることに!幽霊が視える草食男子大学生・森司も、片想いの美少女こよみとのお泊まりを夢見て、試験勉強に励む日々。しかし「黒ミサっぽい儀式で、学生が殺されるのを見た」と言う男子学生に出会って…。背筋も凍る怪異譚に加え、気になるあの子と肝だめし(?)など、青春イベントてんこもり。ホラーで胸キュンってだめですか?青春オカルトミステリ第4弾!!
(「BOOK」データベースより)
学生の一大イベント・夏合宿のエピソードを中心に描かれる巻。 「さいなむ記憶」では、友人が黒ミサの儀式で殺害された…と訴える男子学生・中溝が登場。しかも、殺された学生・無量小路のことを周囲の人間は誰も覚えていないという。無量小路は存在ごと消されてしまったのか…? 「追想へつづく川のほとり」では、ようやくオカ研部長・黒沼麟太郎と、彼を「本家」と呼ぶ黒沼泉水の過去が明かされる。名家の本家と分家という間柄でありながら、親しく友達付き合いしていた小学生時代の2人。後の彼らがオカルトの道へ進むことになったのは、黒沼家の闇とも大いに関わる、とある夏の日の出来事だった。「ファイアワークス」は、これまたオカルト界隈ではおなじみの「人体発火現象」にまつわる話。人付き合いがよく、周りからも慕われているイベントサークルの幹部・石黒だが、イベントの挨拶のたびにいきなり発火現象に襲われるようになる。いったい何故? やはりイベサーの主催みたいなチャラ男は皆から怨まれているのか? 「うつろな来訪者」ではオカ研メンバーとその周囲の友人たちで、部長の別荘で夏合宿へ行くことに。女性陣の浴衣姿に浮かれ気分もつかの間、肝試しの最中に「自分の墓を探している」とのたまう妙な男・磯崎と出会ってしまう森司。磯崎の背中には顔の無い赤ん坊の手が憑いていて…。「死者の花嫁」では、ひょんなことからこよみの実家へ行くことになった森司。こよみの母親からはわりと好感触を得られたようだが、仏壇に置かれている遺影がこよみにソックリなことに気づいてしまう。その女性・絹代はつかさの大叔母にあたる人物だったが、「ムカサリ絵馬」に描かれたこともあり、5度の結婚の末に亡くなったのだという。ムカサリ絵馬の風習について部長から教えてもらった森司は、こよみと瓜二つの女性が辿った運命に心を痛める。そしてその夜、絹代が森司の前に現れた…。
楽しい夏合宿のついでにヒロインのご両親ともお近づきになれるという大進展の巻だが、同時に、望まぬ結婚・望まぬ恋人づきあいで虐げられた人々のエピソードが多めの巻でもある。この「脈はあるが前途多難」な雰囲気、実に良いですね。
★★★★(4.0)