『ホーンテッド・キャンパス 墓守は笑わない』
櫛木理宇/2018年/304ページ
「宝探しに行こう!」黒沼部長の号令で、キャンピングカーを借り山間の集落へ旅にでた、オカルト研究会一同。草食系大学生の森司は、片想いのこよみと狭い車内でドキドキの連続。しかし着いた先は因襲に縛られた閉鎖的な村。宝は村の偉人の墓所にあるという。そして宝を捜索中に変死した男の足取りを追う一同が見つけたものとは…?ほか、保育園を襲う怪、湖畔の女霊など、恐怖も謎解きも大増量、青春オカルトミステリ第13弾!!
(「BOOK」データベースより)
「こどものあそび」-保育園でのお昼寝時間中、子供たちの首に絞められたような痣が付くというトラブルが相次いで発生。監視カメラに残された映像には、黒い靄に包まれた幼児が「とんとんとん、何の音?」と童謡の一節を歌いつつ、「泥棒」「鬼が来た」とうめいて他の子の首を絞める…という光景が映っていた。ひとりの子の仕業ではなく、黒い靄はいろいろな子に乗り移りながら悪さを働いているらしい。保育園に勤める保母から相談を持ち込まれた雪越大学オカルト研究会の面々は、黒い靄に憑かれた子供たちの共通点を調べ始めるが…。
「湖畔のラミア」-白央大学‟UMAオカルト同好会”の会長にしてOBの播磨が、オカ研に相談を持ち掛けてきた。とある温泉地で「大蛇探索」を掲げて行われたサークル旅行で、ギリシャ神話の怪物・ラミアを見たのだという。しかもメンバーのひとりがラミアに取り憑かれたという、UMA×神話×霊障のトリプル案件。にわかには信じがたい超常オカルト現象を調査し始めるオカ研だが、事件の裏には白央大UMA研メンバー間の確執があり…。
「墓守は笑わない」-ラミア事件で知り合った白央大UMA研の瀬田大河から、「村の秘宝を探索中に滑落死した叔父の本当の死因を知りたい」という相談が持ち込まれた。大河の叔父・三郎は夢見がちな放蕩人で、瀬田家の先祖・萬吉が自らの遺体とともに隠したという埋蔵金伝説を信じて宝探しを続けていた。そして「ついに見つけた!」というメールを大河に送った後、崖から落ちて死亡したのだという…。三郎は本当に事故死だったのか? 萬吉の墓所に入った者は呪い殺されるという言い伝えは本当なのか? そして何より、瀬田家の埋蔵金は実在するのか…? 相談を受けた黒沼部長はキャンピングカーを借り、オカ研メンバーと大河を連れて瀬田本家のある村へと宝さがし旅行を敢行する。調査の末に明らかになる奇妙な違和感。村に伝わる「マルさま」の秘密。三郎叔父が遺した「EM5:1 20:1 21:19-20」という謎の暗号。三郎と懇意にしていたという、虚ろな笑みを浮かべる謎の老人・小美濃教授。森司たちの前に姿を現す、恐怖と歓喜の両方を張り付かせた表情を浮かべる「顔」。すべての謎がひとつの答えを示したとき、オカ研は村に伝わる秘宝の恐るべき正体を暴き出す…!!
「曰くあり気な村に伝わる秘宝」というオカルトミステリのお約束ネタ、夏のお楽しみサークル旅行と並行して描かれる表題作が実に楽しい。えげつない人間の業を描く事件ばかりではあるが、全体を通して「謎の美女(正体は男)と付き合ってると誤解されてギクシャクする森司とこよみ」というこれまたベタ過ぎるラブコメ展開があり、これらの要素がお互いを邪魔しあっていないのという奇跡のバランス。毎巻同じことを言っているような気がするが、これでマンネリ感を感じさせないのも作者の手腕である。
★★★★(4.0)