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別れと出会いの春に新メンバー加入、そしてホワイトデーで苦悩。もはや何も言うまい-『ホーンテッド・キャンパス 春でおぼろで桜月』

『ホーンテッド・キャンパス 春でおぼろで桜月』

櫛木理宇/2016年/320ページ

そして新しい春。――新学期にぴったりの青春オカルトミステリ、第9弾!

雪まだ深い春休み。大学生の森司は、来たるホワイトデイのことで気もそぞろ。
とはいえ通常とは逆で、片想いのこよみからの、バレンタインのお返しについて。
そんな森司に関係なく、オカ研には依頼が。
SNSのオフ会に現れる、心中を強要する霊。
恐怖の市松人形、
はたまた友人の事故物件巡りと、
恐怖の波状攻撃に戦き、成人式を迎えたこよみの晴れ着姿にときめき……。
新たな仲間も登場で加速する、青春オカルトミステリ第9弾!

(Amazon解説文より)

 

 春休み。森司とこよみは来年度から3年生に、副部長の藍は社会人となり、そろそろ新入生を入れなければ…という時期のお話。あとホワイトデーのお返し。

 「意気地なしの死神」-「自殺しようとしている相手の未来が分かる」という今井沙也香は、オフ会で見かけた男が友人の早川双葉らしき女と心中している姿を見てしまう。当のホテルでは、行きずりの相手と睡眠薬で共に心中を図ろうとする男の霊がたびたび目撃されていた。かつてホテルで自殺した男が、新たな死者を増やそうとしているのか。だが、男の真の目的は意外なところにあり…。

 「金の帯 銀の帯」-オカ研にも4人の新入生がやってきた。正直パッとしない彼らは、オカ研に持ち込まれた「捨ててもいつの間にか帰って来る、母の形見の市松人形」事件の調査に同行するうち、あまりの不気味さと恐ろしさに次々とリタイアしていくのであった。

 「月のもとにて」-悪友の景山と共に事故物件めぐりをすることになってしまった森司。同じ大学の新入生・鈴木瑠依も同行することになるが、瑠依は「明らかにヤバい、無数の霊が集まる物件」を契約してしまう。森司と同じく「視える側」らしき瑠依が、あえて心霊物件に住むのにはある理由があった。

 「籠の中の鳥は」-新メンバーの瑠依を迎えて花見に興ずるオカ研一同は、「かごめかごめ」を唄う女の悪夢を見るという農学部・北詰の相談に乗ることに。事情を知るらしい北詰の親や関係者に話を聞くうちに、夢の女は「獄中死した北詰の曽祖父に殺された女性」らしきことがわかる。だが、北詰の曽祖父には冤罪の疑いがあったという。夢の女が真に伝えたいこととは何なのか…。

 

 新メンバーの加入、こよみをデートに誘おうとまるまる一巻に渡ってウダウダする森司といったメインイベントに加え、各話のエピソードも「予想できるオチ」から一捻り半くらいの展開を見せてくるものばかり。安定の面白さではあるが、エピソードではこれまでにないくらいのヒキを見せてくれる。恋愛関係はどこまでも王道かつハズさないシリーズだな。もはや何も言うことはない。

★★★★(4.0)

 

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