『ホーンテッド・キャンパス 夏と花火と百物語』
櫛木理宇/2018年/320ページ
夏休み。草食系大学生の森司は、オカルト研究会の皆と、セレブなマンションのラウンジで花火大会を見ることに。片想いのこよみの隣に座り、リア充すぎる状況だけど、真の目的は百物語。誰もいない筈の場所にカメラの顔認識表示が出るA子、「親父の臭い」に縛られる一家…。背筋も凍る話が続く中、参加者に異変が…!!ほか、呪いの能面など、怖すぎる話が満載!森司とこよみの恋模様も堪能できる、青春オカルトミステリ第14弾!
(「BOOK」データベースより)
こよみとのツーショット写真が「今月のベストカップル」として雑誌に掲載され、完全に舞い上がってしまった森司。そんな彼に冷や水をぶっかけるのは、雪越大学に新たに就任してきたかつての恩師(?)、鴻巣コーチ。中学の陸上部時代に森司を目の敵にしていた鴻巣は、陸上を辞めたうえ浮わつきまくっている森司にチクリと厭味な言葉を投げかけるのだった。
「夏と花火と百物語」-オカルト研究会の6人のほか、小山内に璃子と結花、古賀正軌と透哉の兄弟、非常勤講師の矢田先生や新1年生といったメンバーがマンションの1室に集まり、花火大会のかたわら怪談会――百物語を繰り広げる。入居者が消えてしまうアパートにかかってきた電話。写真を撮ると周囲に無数の顔認識が出てしまう女性。見ると性格が変わってしまい、あげくに死んでしまう“怖い窓”。新人ホストが見る痩せこけた白髪の老婆の幻覚。死後も家族に寄り添う愛犬。猫に呪われた旗本の昔話。「彼女にDVされ続けている彼氏」の真実の姿。父親の“臭い”から逃れられない一家。誰もいないはずの電話ボックスの中に見える影。そして大詰め、最後に語られる怪談により、この百物語が開かれた理由が明らかになる…。新入生のひとり・内藤彗の視点から描かれる珍しい話。実話怪談さながらのエピソードが盛りだくさんな豪華回。
「ウィッチハント」-カルチャースクールのミニチュア工作サークルが作った、魔女狩り時代の城を再現したドールハウス。そのドールハウスの拷問器具にサークルメンバーの既婚男性・星島の人形が置かれるという嫌がらせが起きる。しかも星島はガラスで首を切られそうになったり、金庫に閉じ込められたり、風呂で溺れかけたりといった事故に遭っているという。あたかも断頭台、鉄の処女、水責め台と、人形が置かれた拷問のように…。相談を受けたオカ研は星島と会い、彼の背後に金髪の少年の霊が憑いているのを見る。少年は星島の過去のクラスメイト・赤石で、彼は何かから星島を守っているかのようだった。特に親しくもなかった赤石が星島を守る理由とは…? オカルトでサイコなサスペンス編だが、自らの邪悪を自覚しない人間が起こしたという意味で魔女狩りに通ずるものがある。
「金泥の瞳」-両親を早くに亡くし、力を合わせて生きてきた植戸一道、蓮次、三澄の仲良し三兄弟。身寄りのない伯父が住んでいた一軒家を相続した彼らは、3人で引っ越すことにする。だが家に遺されていた、白目部分が金色に塗られた不気味な能面が一道と蓮次を夜な夜な苛む。兄たちを心配した三澄は、オカ研に相談を持ち込むが…。「捨てても捨てても帰って来る不気味な能面」に込められた怨念の正体を解き明かすという、正統派オカルトミステリ。
金泥の瞳事件で、人の「怒り」について理解を深めた森司は、鴻巣コーチともういちど向き合うことを決めるのだった。それはそれとしてこよみちゃんとの中はすでに公認に近いものになり、周囲のメンバーも外掘りを埋めていくのであった。よかったね。というかもうほぼゴールである。
★★★★(4.0)

