『ホーンテッド・キャンパス 恋する終末論者』
櫛木理宇/2014年/346ページ
大学祭間近の雪越大学。霊感系大学生の森司は、美少女こよみに焦れったい片想い中。しかしある日、飲み会で、高校の同級生、果那と再会する。ストーカーを撃退したいという彼女の頼みで、森司は彼氏役を引き受けることに。そのせいで、所属するオカルト研究会内で二股疑惑をかけられ、森司は大ピンチ!しかも果那が、吸血衝動を持つという相談者と共にオカ研を訪れて…。森司にモテ期到来!?青春オカルトミステリ第5弾!!
(「BOOK」データベースより)
シリーズの中でも屈指の傑作巻。主人公・八神森司の高校時代の同級生、板垣果那が登場し、別の大学にも関わらずちょくちょく顔を見せる。森司のすさまじいニブさ、いかにも恋愛モノの主人公と言うかなんと言うか。
「告げ口心臓」では果那の紹介で、吸血願望にかられて悩む男子学生が登場。黒沼部長による過去への誘導催眠で彼の秘められた過去が明らかになり、血への渇望も消えてお悩み解決! となったはずだったのだが…。「啼く女」は、卒業旅行に来たとあるサークルからの以来。彼らが宿泊したロッジの周囲では、まるでバンシーのような、女の悲鳴のような不気味な音が鳴り響いていた。旅行中に撮影した写真を確認すると、どれも不気味な女の姿が。それはサークルクラッシャーとしてやっかまれた末に退学した女生徒に間違いなく、森司は彼女がすでに生きていないことを悟る。
「まよい道 まどい道」は秋の大学祭が舞台。過去のゲストキャラがぞくぞく登場する展開、いいよね。「ピエロの姿をした悪霊」というなんともベタな怪異が登場するが、元ネタの『IT』よろしく、巻き込まれた生徒が過去のトラウマと対峙し、克服する様がなんとも気持ちいい展開。「姥捨山奇譚」では農業体験合宿で田舎を訪れた生徒たちが、「小さな老人の悪霊」を背負ってきてしまう。全国に広がる姥捨山伝説のバリエーションと真相に加え、いかにも現代的な病理についても語られる好編。
果那が主役となるプロローグ・エピローグも含め、全編どれも印象深い。いずれも形は違えど「愛」にまつわる怪奇であり、“恋する終末論者”たる彼女を引き立てているとも言える。繰り返しになるが、シリーズの中でも屈指の完成度を誇る傑作巻である。
★★★★☆(4.5)