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福の神になりたい貧乏神を相棒に、人助けで徳を積む新展開-『華舞鬼町おばけ写真館 消えた臨港線と缶入りドロップ』

『華舞鬼町おばけ写真館 消えた臨港線と缶入りドロップ』

蒼月海里/2019年/208ページ

異能を持つ祖父の形見のカメラは、過去の風景を写し那由多を華舞鬼町へと連れていってくれた。カメラが壊れてからは移動できずにいたが、姉のアドバイスで道祖神を祀る庚申塚から境界を越えることができ、那由多は少しだけ自信を取り戻す。久しぶりに訪ねた、華舞鬼町にある狭間堂の写真館。そこで再会した玉電の化身・玉さんから、那由多は臨港線という廃線の写真を頼まれるのだが。ついにシリーズは、クライマックスへ!

(「BOOK」データベースより)

 

 第一話「那由多と貧乏神」。前巻で一段落した雰囲気だったのでどう続けるのかと思っていたら、新たな那由多の相棒枠・貧乏神のクロ助が登場。見た目はまんま「まっくろくろすけ」を彷彿とさせる。触れるものすべてを朽ちさせてしまうクロ助は、福の神として生まれ変わるべく那由多と共に人助けをして徳を積んでいくことに。第二話「那由多と臨港線」では、玉電の化身の玉さんからかつて港湾地区に存在していたという臨港線の写真を頼まれた那由多。過去の風景を映し出す祖父のカメラはすでに失っていた那由多だが、“今現在”の臨港線の痕跡を写すことで過去を想い偲ぶ写真を撮ることができたのだった。第三話「那由多と海の記憶」では、東京タワー近辺に現れる巨大な影の怪談を聞いた那由多が現地を調査。影の正体は海の亡者たちがクジラの姿になったものだと判明、海へと還すため狭間堂と協力するのだが…。

 正直「貧乏神としての能力」をそのまま活かすことは難しかったようで、クロ助が別のアヤカシでも成り立つような展開が多かったが、第三話のラストで急成長してしまうので驚いた。それもあざとい方向に。次号最終巻。

★★★(3.0)

 

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