『華舞鬼町おばけ写真館 路面電車ともちもち塩大福』
蒼月海里/2017年/208ページ
大学生の那由多は、祖父の形見のカメラに導かれるように、人外が跋扈する別世界『華舞鬼町』に迷い込み、狭間堂と名乗る青年と出会う。祖父のカメラには不思議な力があったのだ。ある日、西新井大師の風鈴祭りに出かけた那由多は、友人と共に異界に迷い込んでしまう…。他に「渋谷駅で出会った不思議な老人」「桜の名所飛鳥山公園の季節外れの花見の謎」等。早くも大人気、東京の名所で起こる妖しくレトロな謎とき物語。
(「BOOK」データベースより)
第一話「那由多と旧き車両」では、渋谷駅で出会った老紳士のアヤカシ…サブタイトルでだいたい分かってしまうがそれはともかく、その正体を探るため、那由多はハナやポン助と共に玉川電気鉄道の痕跡を探し出す。第二話「那由多と桜の森」では季節問わず咲き乱れる桜が王子の飛鳥山公園にある…という話を円から聞き、現地へ向かう那由多だがだいたいの予想通りアヤカシの仕業であった。前巻では江戸川乱歩「押絵と旅する男」の話が出てきたが、この話は坂口安吾「桜の森の満開の下」を下敷きにしている。ホラー文庫なんだし東京名所ばかりではなく、怪奇幻想文学の名作も紹介していくお約束ができたのだろうか。第三話「那由多と風鈴の街」は西新井大師の風鈴祭りが舞台。相変わらず小学生男子みたいなメンタルの那由多に、似たような男子大学生の友人ができてヨカッタネという話。前シリーズでも思ったのだが、この作者の小説に出てくる男子大学生は幼すぎやしないか。
一つ一つのエピソードに込められている名所ネタというかローカルネタは普通に楽しく、話の構成も良い。教育テレビで放映されていても違和感の無いような話である。
★★★(3.0)