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コロナ禍で再注目されたあの妖怪が疫病神と激突!-『モノノケ杜の百鬼夜行 疫病退散の噺』

『モノノケ杜の百鬼夜行 疫病退散の噺』

蒼月海里/2020年/208ページ

強い霊感を持つ少年・潤と、御神木に嫁入りした巫女の末裔、一華。二人はクラスメートの芳沢に、怪我をした猫を助けてから妙なことが起きるとの相談を受ける。原因を探るべく、潤たちは「猫の集会」に行くことに。数日後、宿敵の千影に御神木を汚され、一華が倒れてしまう。一華を助けることができず焦る潤の前に現れた、まさかの救世主とは!?少年とモノノケたちの友情に心打たれる、今こそ読みたいほっこりホラーミステリ!

(「BOOK」データベースより)

 

 「一華と潤と、芳沢の猫」-一華たちのクラスメイト・芳沢が野良猫・トラを拾って以降、彼女の家で妙な出来事が起きるようになる。芳沢に相談を受けた一華と潤はトラのことを調べるため、ネコ耳を付けて猫の集会に出席。そこには(読者にとっては)懐かしい顔もあり…。

 「一華と潤と、御森の送り狼」-御森にはいなかったはずの物の怪・送り狼と出会う潤。その白狼の姿は、以前出会った少女が見せてくれた「事故死した飼い犬」の写真とよく似ていた…。

 「一華の覚悟と、潤の絆」-千影こと疫病神・虎狼狸(ころうり)が一華たちが暮らす杜の結界内に侵入。一華は病に倒れてしまう。潤はクラスメイトとともに潤を助け出す方法を探す。そして彼らがとった手段は、人々の‟疫病退散の願い”から再注目され、新たな力を得た妖怪「アマビエ」の絵を描くことだった…。

 

 全2巻とコンパクトながらも物語はしっかり完結。どうにも味気なかった前巻と比べると、作者の持ち味であるハートフルな雰囲気が全面に出ている。物の怪・妖怪という存在が人々の心の持ち方、時代の流れと共に大きく移り変わる概念であることはたびたび触れられているのだが、この最終話などはまさに2020年当時ならではの展開と言えるだろう。ちなみに虎狼狸は「コレラ」の訛りという説もあるようだが、「コロナ」と音的に近いのが面白い。余話「移り変わる街にて」は今シリーズでは少なめだった東京散策ネタ。

★★★(3.0)

 

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