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贖罪のため善行を積む黒づくめ医師&元人間の鬼コンビの余話がイイ感じ-『幽落町おばけ駄菓子屋 晴天に舞う鯉のぼり』

『幽落町おばけ駄菓子屋 晴天に舞う鯉のぼり』

蒼月海里/2016年/202ページ

御城彼方は、大学2年生になった。生身の人間ながら、人ならざるものが住む常世の町「幽落町」に下宿して、2年目の春。のんびりキャンパスを歩いていたら、突然ハーレーに乗った都築によって、江東区の古い病院へ連れ去られてしまう。彼方を人質にして「幽落町」から水脈さんを呼び出した都築は、桐箱に入った、「枕」を見せるのだった…。レトロな町並みで展開される、ほっこり懐かしい、謎とき物語。大人気シリーズ!

(「BOOK」データベースより)

 

 「第一話 せめてひとめだけ」では、白づくめの変態医師から黒づくめのツンデレ厨二病医師へとメガシンカを遂げた都築が再登場。病院の枕に取り憑いた霊の憂いを晴らすため、門前仲町の和船でお花見クルーズへ行き、いつものメンバーでイチャイチャするのであった。「第二話 ぼくのふるさと」では、彼方と水脈が千葉県へ里帰り、途中で忍に会い、自分の正体がわからないモノノケのじいさんの記憶を取り戻すため、成田山付近を観光する。このじいさんは何の化身なのか、を探るのが話の主題なのだが、登場時にしっかりヒントというか、そのものズバリが描写されているのでズッコケた。「第三話 そらをおよぐ」では、幽落町に迷い込んで来た鯉のぼりの持ち主を探しつつ要所要所でイチャイチャする話。

 前巻で話が一段落したのでしょうがないのだが、すっかり日常モノと化してしまった。成人男性同士でイチャイチャし過ぎである。これまでのシリーズでは巻末に短い余話があったのだが、本書の「余話 せおったもの」は、都築と忍のコンビがインチキ霊媒師を退治するバディもので、ボリュームもやや多め。意外なコンビかつ意外な面白さがあり、ある意味でいちばん角川ホラー文庫らしい内容かもしれない。

 それにしても本作、『妖怪ウォッチ』ネタがちょくちょく出てくるのだが、シリーズ人気はとうに落ち着いていたころだった気がする。もうジバニャンも妖怪の一種として浸透しきっていたとも言えるのだろうか。

★★☆(2.5)

 

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