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石垣島の残酷なる神“ニイルピト”の目的とは? リゾート地で繰り広げられる風水バトル!-『二色人の夜』

『二色人(ニイルピト)の夜 シム・フースイVersion2.0』

荒俣宏/1993年/383ページ

この世でもっとも呪わしいもの―、魂が心安らぐべき場所を脅かす悪魔。広告代理店に勤める鉅賀くみ子は都会の喧騒を離れ、南海の楽園・石垣島に来ていた。ところが、青空のもと、白砂のビーチに異臭を放つサンゴの塊がとつじょ出現する。サンゴの上には苦しそうにうめく三本足の鶏―。楽園は不気味な気配につつまれる。が、この不吉な光景は恐るべき神々の怒りの予兆にすぎなかった。風水ホラー第二弾。

(「BOOK」データベースより)

 

 風水に守られた島・石垣島で、腐ったサンゴの塊がビーチに次々と揚がる異常事態が発生。リゾートホテルの建設により、風水のバリアが破られてしまったのだ。しかもリゾートホテルの持ち主はベンチャービジネス社長の汚い金持ち・河合で、三本脚のニワトリを作って「脚が一本多く取れるからお得」とのたまったり、バーチャル・リアリティ・システムに霊能者の脳波をコピーして超常体験シミュレーションソフトを作ろうとしたりするトンデモない男だった。本業はいったいなんなんだ。前作からの主人公コンビである黒田とミヅチに加え、島の神アカムタ・クロムタこと二色人(ニイルピト)に魅入られた少女・小夜、東京から来たド根性OL・くみ子の即席チームが、石垣島を守るため、そして小夜を荒ぶる神から守るため、新たな風水の結界を貼るべく奮闘する。

 時事ネタの入れ方や妙にまったりしたラストの展開、神という存在への独自の視点など、『ゲゲゲの鬼太郎』を読んでいるかのような雰囲気。数々のうんちくは前作よりも減っている…というか、自然な形で文章に落とし込まれているのでとってつけた感は無い。ラストの盛り上がりに欠けるとは言え三方丸く収まるハッピーエンドで、一作目とはかなり作風が異なる印象。しかしまあ、本筋にはあまり関係の無い三本脚のニワトリのインパクトが強すぎる。わざわざ石垣島で育てなくてもいいでしょそんなの。

★★★(3.0)

 

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