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建設中の新都庁に朝鮮の鬼神襲来! 風水談義が相変わらず面白い-『新宿チャンスン シム・フースイ version3.0』

『新宿チャンスン シム・フースイ version3.0』

荒俣宏/1995年/318ページ

現代建築の枠を結集した双頭の摩天楼・新都庁舎。凍てついた夜、この工事現場で魔除け柱が掘り返させた。その瞬間、封印されていた怨念が息を吹き返す―。工事中に続発する事故。地下水の噴流。怪火。そして、遂には作業員までもが消息不明に。都庁職員の要請で、風水師黒田龍人とミヅチは、庁舎に巣喰う“魔”の正体を暴こうとするが…。異才・荒俣宏が、新宿風水の謎をここに解き明かす。

(「BOOK」データベースより)

 

 チャンスンとは朝鮮に伝わる魔除けのことでで、細長い棒に顔が刻まれた道祖神のようなもの。新宿新都庁の建設予定地で工事のアルバイトをしていた亀澤は、土の中からチャンスンを発掘した。周囲には誰かが埋葬したと思しき人骨も埋まっていた。なじみの焼肉屋でチャンスンのことを聞いた亀澤は、韓国人の父と日本人の母との間に生まれた少女・崔桃花と出会う。桃花の両親は行方をくらませており、彼女は祖母とふたりで暮らしていた。祖母は神に選ばれた霊能者・巫女(ムーダン)の血筋で、桃花の父も優秀な霊能力の持ち主だったという…。
 その頃、風水師・黒田龍人と助手の有吉ミヅチは、新都庁建設現場でたびたび起きる事故について相談を受けていた。彼らは韓国の鬼神トッカピが、建設途中の新都庁を根城にしていることに気づく。ひとり都庁へと乗り込むミヅチだったが、あまりに強大なトッカピの力に敗北を喫する。都心を揺るがすこの事件には、桃花と亀澤の邂逅が大きく関わっていたのだった…。

 

 風水の本場・韓国の鬼神との対決がメインである。相変わらず途中に挟まれる風水談義が面白く、新宿と渋谷、新都庁の立地について風水的に解説するパートは40ページ近くもあるのだが、これがなかなか読みごたえがある。「陰陽」ってそういうことだったのね。初めて知ったが目からウロコである。

 霊能力を「忌まわしき呪い」として描く姿勢も一貫している。黒田の性格破綻者ぶりも、ミヅチとのあまりに常軌を逸した関係性も改めて強調されており、このふたりの行く末も気になる展開。珍しくゲストも救いのある結末であった。

★★★☆(3.5)

 

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