『幽落町おばけ駄菓子屋 異話 夢四夜』
蒼月海里/2017年/208ページ
優しかった飼い主が亡くなり、保健所に連れて行かれそうになって家から逃げだした、一匹の黒猫。街をさまよい大怪我を負った猫の命を救ったのは“水脈”と名乗る美しい人だった。「幽落町」シリーズの人気キャラクター猫目ジローの、水脈との出会いや新しい家族になっていくまでを描く。他に都築と忍のふたり旅で遭遇した恐怖の一日、水脈がジローや真夜と共に“ある人”を訪ね「華舞鬼町」にやってきた話など、待望の短編集。
(「BOOK」データベースより)
主人公・御城彼方が不在の時間軸を描くスピンオフ短編集。「第一夜であいのはなし」「第二夜 だれかのために」では、本作のBL成分の6割を担っていたやばい奴・猫目ジローが幽落町へやって来たきっかけと、ケガレとの最初の戦いを描く。「第三夜 あつまったもの」は、白づくめツンデレ医師・都築と人を辞めてアヤカシとなった法相氏・忍のコンビによる世直し旅の1エピソード。山奥の廃村で若い男女4人と出会った都築と忍。彼らはサバゲー仲間だったが、1年前に事故死したメンバー・飯塚からのメールを受け取ってそれぞれこの場所にやって来たのだという。彼らを呼び寄せたのは飯塚の霊なのか。それとも…というミステリ短編。やっぱこの2人が主役のほうがホラーっぽい話を展開させやすい気がする。ただならぬ霊感の持ち主である忍と並外れた推理力を持つ都築の相性もいい。「第四夜 かぶきちょうへ」では水脈・ジロー・真夜の3人がじゃ兼ねて彼方と真夜が新シリーズ『華舞鬼町おばけ写真館』の舞台・華舞鬼町を訪れる。『華舞鬼町~』屈指の曲者キャラ・円とジローとの邂逅のほか、この巻では姿を現さない彼方の現状について触れている箇所もあり、コラボ回としては上々の出来。シリーズファンを新シリーズに誘導する役目をしっかり果たしている1冊。
★★★(3.0)