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『妖怪ウォッチ』制作会社による幻の未発売作品がなぜか小説化-『うしろ ふきげんな死神。』

『うしろ ふきげんな死神。』

後藤リウ/2014年/224ページ

「おまえの命と引き換えに、願いをひとつ叶えてやろう」高校生の西崎七名子が校舎の屋上で出会ったのは、ふつうの人には見えないはずの「死神」だった。うしろ―宇城霊一郎と名乗るその死神は、不思議な道具と能力で、死にゆく魂を捕獲するというのだが…。冷徹で不機嫌な死神うしろと、誰も死なせたくない七名子。どこまでも相容れないふたりの、奇妙な主従関係が始まった。感動の新世代死神ストーリー、開幕!!

(「BOOK」データベースより)

 

 人の魂を求める死神・宇城霊一郎と、霊感体質で味オンチの女子高生・七名子。ひょんなことから宇城の眷属にされてしまった七名子は、不本意ながら宇城の手伝いをさせられることになるが、その一方で魂狩りを阻止しようと行動するのだった。カードからひみつ道具チックなアイテムを取り出したり、魔物に憑依されて特殊能力(フォーム)を得た悪人たちとバトルしたりと、小道具や設定はまさにゲームのソレとなっている。「ぺんぺん草追想」では“影の手”を操ってクラスメイトや教師を死に追いやった不良生徒、「ひとりよがりの闇」では分身能力でアリバイを成立させる悪質ストーカー、「コトダマ迷宮」では変身能力で同僚に横領の罪をなすりつける会社員、「天使失格」では自殺幇助サイトを運営しつつ自殺志願者を殺害する快楽殺人鬼たちとバトルするぞ! 基本的に犯人たちに更正の余地はなく全員死亡し、宇城がもともとのターゲットではなく彼らの魂を入手して一件落着、というのがお決まりのパターン。サクッと読めはするのだが、1話1話が短めなせいか展開に深みが無く物足りない気がする。この辺は巻が進めば解消されるのだろうか。

 

 原案は『妖怪ウォッチ』『イナズマイレブン』等で知られるゲーム会社のレベルファイブ。倉阪鬼一郎の同タイトルの小説とは関係ない。『うしろ』は2008年にPSPでの発売が予定されていたものの続報が途絶えてしまい、6年後になっていきなり角川ホラー文庫で本書が発売。コミックNewtype、月刊ヒーローズでの漫画連載もスタートしたので、当時はちょっと驚いた記憶がある。とうとうゲームが完成したのか!? と思ったが全然そんなことはなく、それからまた9年の歳月が経ってしまった。ゲーム自体が発売中止になったわけではないようで、今現在でも週刊ファミ通のゲームソフト発売スケジュールには掲載されているし(機種はNintendo Switchになっている)、同誌の「期待の新作ランキング」でもいまだに票が入っている。半ばネタ交じりの投票だろうが。

 

★★☆(2.5)

 

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