『華舞鬼町おばけ写真館 灯り無し蕎麦とさくさく最中』
蒼月海里/2018年/208ページ
「地下鉄の終電で降りた駅の、改札を抜けた先にある蕎麦屋は江戸の怪談『本所七不思議』の“灯り無し蕎麦”だった」不気味な動画を偶然見てしまった那由多は狭間堂に報告する。ポン助も浮世に怪談が増えている噂を聞きつけていて、一同は真相を確かめることに。終電で降りた駅の改札を進むが、そこにあったはずの蕎麦屋は無く!唖然とする彼らの前に現れたのは学生帽と黒マント姿の青年だった。シリーズ最強の禍が登場。
(「BOOK」データベースより)
“シリーズ最強の禍”こと虚路(ウツロ)が登場。すべてのエピソードが「怪談」にまつわる珍しい巻である。本所七不思議も続々登場、これはコンプリートされるのだろうか? これまでとはやや異なるパターンだが、今まで通りの名所・銘菓うんちくなどはもちろん出てくるので安心。
第一話「那由多と妖しい語り部」では、那由多の前に現れた虚路によって本所七不思議「灯り無し蕎麦」が実体化。噂を聞きつけたYouTuberが配信中に立ち喰い蕎麦屋で行方不明になる様子を見ていた那由多は、狭間堂たちと共に北斎通りへ向かう。第二話「那由多と姥ヶ池の怪談」では隅田川沿いの姥ヶ池跡で「浅茅ヶ原の鬼婆」の怪談が蘇る。虚路によって古い怪談が現代風にアレンジされ、新たに伝聞されていることが明らかになるのであった。
第三話「那由多と亡者の記憶」は珍しく東京名所へのお出かけは無し。紙芝居屋・蘇芳の手によって過去の狭間堂=御城彼方と出会った那由多は、彼方が華舞鬼町の元締めになるに至るまでの想いを知る。余話「百代円記者の怪奇事件簿」は円が主人公のスピンオフで、本所七不思議「津軽の太鼓」にまつわるエピソードとなっている。
★★★☆(3.5)