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B級、そしてエロチック。荒唐無稽なパルプホラーが集う驚異の部屋-『デス・ルーム』

『デス・ルーム』

行川渉(著)、デニス・バルトーク(原案)/2009年/184ページ

封印され、行方知れずとなった伝説の恐怖映画『ヒステリア』…。撮影された、通称「DEAD HOUSE」と呼ばれるセットは、まだウルトラ・スタジオのどこかに実在しているという…。その「DEAD HOUSE」に集う7人のツアー客。たった1時間で終わるはずの見学ツアーだったが、奇怪なる地獄巡りが始まった。果たして人間が体験し得る最悪の恐怖とは?全米大ヒットのホラーがついに日本解禁!完全ノベライズ。

(「BOOK」データベースより)

 

 ジョー・ダンテ、ケン・ラッセル、ショーン・S・カニンガムといったそうそうたる監督陣によるホラーオムニバスのノベライズ。ハリウッドでのツアー中、ホラー映画「ヒステリア」のセットに迷い込み、閉じ込められてしまった客とツアーガイド。彼らは映画のシーンをなぞるかのように、各々の恐怖体験を語り合う。新人女優のフィービーは豊胸手術の結果、乳首が血を吸う”吸血おっぱい”になってしまった話を(「豊胸死術の女」)。ヘンリーとジュリアの夫婦は、日本へ旅行中に遭遇した首吊り死体の霊に、仏教の地獄へと連れていかれた話を(「日本の縛霊」)。脚本家のレオは、親友だった映画監督・スタンリーとその恋人にまつわる恐ろしい秘密を(「キューブリックの恋人」)。ナタリーは、母親が自分を妊娠しているあいだ、常にいっしょに成長してきた寄生虫との奇妙な絆を(「私の双子害虫」)。4つの話が語り終えられたとき、ツアーガイドの老人は彼らの話していない‟結末”を突き付けるのだった。

 

 1つ1つのエピソードはいい意味でB級、パルプ感あふれるものでバラエティにも富んでいる。冒頭の吸血おっぱいの話からしてバカ過ぎて良い。一人称の語りのおかげで読みやすいものの、短すぎて物足りない印象を受ける。複雑な内面描写があるような話ではなく、そもそもが映像向きの作品なのだろう(当然だが)。映画に興味を持たせるという意味ではまっとうなノベライズと言える。ちなみにタイトルロゴの「OO」のデザイン、読み終えてようやく意図がわかりました。

★★☆(2.5)

 

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