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さりげない日常に恐怖をもたらす女たち。やや玉石混淆な短編集-『ルージュ 恐怖を運ぶ六人の女』

『ルージュ 恐怖を運ぶ六人の女』

鎌田敏夫/1993年/247ページ

季節はずれの別荘で、ひとり男を待つ女。何者かが彼女に忍び寄る。孤独、不安、男への疑い、人生への後悔。彼女を追いつめ、つき動かしたものは何か?拭い去る事のできない凌辱の記憶。抑えきれない欲望。殺意へかわるほどの怒り。すべての女の心に潜んでいるもの…。恐れと狂気の狭間の闇を鋭くえぐる六つの物語。連作小説集。

(「BOOK」データベースより)

 

 副題通りの「恐怖をもたらす女」がテーマの短編集。「別荘の夜」-山奥の別荘へイチャつきに来た男女だが、近くの町まで車で買い物に出かけた男がいつまで経っても帰ってこない。電話も通じず周囲に人気も無い孤独な場所で、しだいに女の中に疑惑と恐怖が大きく膨れ上がっていく。「レイプ」-レイプ被害に遭った女が、バイオレンス小説を書いている作家が犯人だと作家の妻に告白する。それは事実無根の完全なでっちあげだったが、女は執拗な工作で作家の妻の疑惑を募らせていき…という厭な話。「海から来た女」-海上保安官の高平が嵐の海で助け出したのは、かつて海に身を投げて心中したはずの女だった。女は高平の娘を自分の子供だと思い込んで海へと連れ出し…。本書では唯一のストレートな心霊ホラー。「ベッド」-女子大生の千鶴の部屋のベッドで眠るとエッチな夢を見る、というエッチな噂が広まる。千鶴の友人は夢のあまりのエッチさにエッチの虜になってしまい…。エッチエッチと連呼されることを差し引いても、“恐怖を運ぶ女”とは言い難い内容ではある。「殺人鬼」-ごく普通の主婦として日々を過ごす殺人鬼の日常を淡々と描く好編。「ルージュ」-結婚を控えつつも部長と社内不倫をしていた由紀は、ラブホテルで偶然出会った秘書課の美奈子のことをうっかり同僚に喋ってしまう。噂は広まり、美奈子は退社に追い込まれてしまった。そして由紀の結婚式の日、呼んでいないはずの美奈子がなぜか式にやって来て…。ホラーじゃなくてコントだね、これは。
 暇つぶしにはちょうどいい程度の小品揃いで、悪くない作品もあるのだがイマイチなものはイマイチ。ホラー要素も薄く、サクサク読めてしまう一方で少々物足りないと言うのが正直な感想。

★★☆(2.5)

 

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