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遺産相続のため一族が集まった豪邸で殺人が! テンプレ展開に終始して盛り上がりイマイチ-『闇の影』

『闇の影』

竹河聖/1995年/274ページ

小曾根圭子は祖母の兄である柳沢泰造の遺産相続のため、他の親族と共に孤島に呼び集められた。圭子は島に向かう船の中で、得体の知れない黒いものを、目撃する。島に渡ってからも、それは続いた…。そして遺産をあてにする親族は、一人、また一人とその人格を変え、屋敷は血塗られていく…。巫女的な気質をもつものに相続する権利があるという遺産とは何か。モダン・ホラーの女王が放つ傑作長編。

(「BOOK」データベースより)

 

 舞台は大富豪が遺した孤島のホテル。遺産分配のため集められた、パッと見は上流階級ながら胸に一物ありそうな親族たち。一族の長である柳沢夫人と、姿を見せない孫娘。ホテル内で起きる殺人事件。おりしもその日は大型台風が近づいており脱出不可能…という、この手のミステリのテンプレが詰まりまくった一作。

 メインとなる登場人物は強めの霊感を発揮している主人公の恵子、社交家だがどこかうさんくさい再従兄弟の加寿久、時おり「何か」が見えているそぶりを見せるその妹の貴沙といった面々。前半は雰囲気たっぷりで進み、ホテル地下に広がる謎のトンネル、誰も姿を見たことがない柳沢夫人の孫・歌也子の正体、謎めいた行動を見せる加寿久…といった中盤以降の展開もツボは抑えている。なのに、どうもイマイチ盛り上がらないまま物語は結末を迎えてしまう。幸運をもたらすという「柳沢家の遺産」の説得力の無さ、まったく役に立っていない恵子と貴沙の霊感、モブ死するだけの個性の薄い親族たち、あっさりし過ぎている黒幕の最期など、後半はどうにも読みごたえが無くスッキリしない。ゴシックな前半の雰囲気が良かっただけに物足りなさが際立つ。

★★(2.0)

 

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