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寝たきり、腐臭、隠された素顔…。介護させられているのはいったい何? 急転直下の伝奇ホラー -『屍介護』

『屍介護』

三浦晴海/2022年/320ページ

この人はもう、死んでいるのでは――? 新人介護士が経験する恐怖の介護。

看護師から介護業界に転職した栗谷茜は、山奥の屋敷で、寝たきりの婦人をヘルパーとして住み込みで介護することになった。しかし、妃倭子というその婦人は、なぜか頭に黒い袋を被せられ、肌は不気味に変色し、言葉を発することも動くこともなかった。新人がゆえ、全力で職務に向き合おうとするも、茜の胸にはじわじわ疑念が広がる――これは、もう死んでいるのでは? 先が読めない、ひたすら怖いとネットを戦慄させた、禁断の介護ホラーが登場!

(Amazon解説文より)

 

 スマホも使えない山奥の御屋敷で、介護として住み込みで働くことになった主人公・茜。だが介護相手の婦人・妃倭子(きわこ)は寝たきりでピクリとも動かず、肌は青緑色に変色しているうえ腐臭を発し、顔には黒い袋が被せられていた。先輩のヘルパーからは「妃倭子の前では絶対にマスクと手袋を取らない事」「妃倭子に日光を当てない事」「妃倭子の頭の袋を絶対に取らない事」という3つのルールを教えられる。この婦人はいったいどんな難病にかかっているのか? というか、これは本当に病気なのか…?

 クセのある先輩ヘルパーたち、生肉を口から流し込んで体を洗ったら後は終わりというムチャクチャな介護、いかにも怪しげな屋敷の構造、屋敷を訪れる闖入者と、読み進めているうちに主人公がかなりヤバい事態に巻き込まれていることがわかる。リーダビリティはかなりのもので、先が気になる構成の仕方が非常に巧い。
 途中まではミステリともとれる内容だが、怪異の正体はホラー成分100%のもの。伏線もしっかり張られているのだが、とある登場人物が最終章でいきなりすべての真相を長台詞で解説してくれるという明かされかたなので、少々唐突感が漂う。とは言え最後の最後まで緊張感が持続する、サービス精神に満ちた一冊。読み終えてから表紙を見ると、さりげなく「あの生き物」が描かれているのに気づく。

★★★☆(3.5)

 

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